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10 - 9

翌日の晩となり、

一郎と華音かのんは、AHO団の本部施設を訪れた。


施設内のホールには、

ジェイソン議員の呼びかけで集まった大勢の者たちが、

ひしめき合っていた。


ホールの壇上だんじょうにジョンソン議員が現われると、

ホール内はシーンと静まり返る。

「親愛なるAHO団の諸君、

本日は私の声掛けに対して、

沢山たくさんのご参加を頂き感謝する、

本日、諸君に集まってもらったのは他でもない、

ここで、皆にご紹介したい人物が居るからだ。

では、ミスタータナカこちらへ、どうぞ。」


一郎は、舞台のそでに華音を残して、

一人で檀上へと進み出た。


一郎の姿を見た者たちがザワッと、どよめきを見せる、

それも、そのはずで、

AHO団はジョンソン議員が主催しゅさいする白人至上主義団体である、

その本部ホールの檀上に、黄色人種の一郎が姿を見せたのだから、

団員たちの驚くのも無理は無いであろう。


「いや~、どうもどうも、

ただ今、ご紹介にあずりました

曲がった事が大嫌い~♪

タ~ナ~カイチロウです!」


団員たちは、一郎の自己紹介を聞いて、

皆、ポカ~ンとした顔を見せている。


「あれ?ウケなかった?

おかしいな~、日本じゃ大ウケのはずなんだけどな~。」


舞台袖では「私も知らないんだけど~。」と、

華音がツッコミを入れていた。


「本日、ジョンソン議員にお願いをして、

皆さんに、お集まり頂きましたのは、

これから、ちょっとした旅行へと、ご招待する為です。

この旅行の中で、皆さんの信念がためされる事となりますが、

信念にしたがって命を落とすも良し、

信念を曲げて、少しでも助かる可能性に掛けるも良し、

ご判断は皆さん本人で決めて下さい。

では~『大転移だいてんい!』」

一郎が唱えると、

本部施設を、大きな振動が襲った。


「うわっ!地震かっ!」

「大きいぞ!」

「この建物は大丈夫なのか?」

団員たちは、大きな揺れに立ち上がれずに、

皆、床へと、しゃがみ込んで騒いでいる。


「現地に到着とうちゃくしました。

では、良い旅を~!」

一郎が舞台の袖に消えながら告げると、

建物の揺れがピタッと収まった。


「地震は収まったのか?」

「今の内に、建物から出た方が良くないか?」

「そうだ!ここから出よう!」



「こっ、これは!」

何故なぜだっ!?」

建物から、表に出た団員たちは、

一様に驚愕きょうがくの表情を見せて、

固まって居る。



「田中さん、ここってどこなの?」

隠密おんみつ』を掛けて、

本部施設の上空を飛んでいる一郎と華音の眼下には、

見渡す限りの密林が広がっている。


「アマゾンの奥地の、どこかだな。」


「ここに、全員、置いて行くの?」


「ああ、これだけの奥地でも、

原住民の人達が暮らしているから、

連中が協力をあおぐ事が出来たら、

何人かは文明圏まで帰れるかもな。」


「現地の方に、ご迷惑を掛けるんじゃ無いかしら?」


「ここに暮らす人たちは、

毎日、自然を相手にして暮らして居るんだぜ、

アメリカ育ちの連中じゃ、

ライオンの群れにいどむ、ネコみたいなもんさ。」


「そう言われてみれば、そうか・・・」


「さっ、これで、問題も解決した事だし、

日本に帰るとしようぜ。

『転移』っと!」



「なっ、何だここは!?

何故、私は、この様な所に居るのだ!?」

一郎たちが消え去った密林では、

魔法が解けたジェイソン議員が驚愕の声を上げている。


議員が周囲の森を見渡して見ると、

現地の人間と見られる者たちが、

あちら、こちらから覗いているのが見て取れた。


「何だ、貴様らは!

ワシは、お前らなぞ少しも怖くは無いぞ!」

ジェイソン議員は、懐から拳銃を取り出すと、

銃口を上に向けて、

威嚇いかくの為の銃弾をズダ~ン!と発射した。


こちらを覗いていた原住民たちは、

その大きな音に驚いて、

皆、一斉いっせいに顔を引っ込めた。


「グワッハッハッハッ!

文明の利器りきかれば、

時代遅れの原住民など、こんなものよ!・・・痛っ!」

突然の痛みに、議員が首に手をやると、

先に針が付いた

小さな、吹き矢の矢が刺さっていた。

「ふん、こんな小さな矢で・・・うおっ!」

突然、議員の視界が大きく揺らいだ。


確かに、吹き矢の矢そのものは、

とても小さな物であったが、

矢の先に付いている針には、

獰猛どうもうなジャガーでさえも、

一撃で殺せる毒が塗布されていたのだ、

文明圏で育ったジェイソン議員には、

この地に威嚇射撃などは存在しなく、

敵対すれば、

そく、攻撃を受けるなどと理解出来なかったのであった。

「何で、こんな事に・・・」

薄れ行く意識の中で、

ジェイソン議員は、自分が、

どこで道を誤ったのだろうかと考えていた。



無事に、日本への帰還を果たした一郎と華音は、

姫花の出迎えを受けていた。

「「ただいま~。」」


「2人とも、お帰りなさい。

あっちは上手く行ったみたいね、

日本のニュースでも、アメリカの有力議員の失踪しっそうと、

白人至上主義団体の本部が、謎の消失をげた事件は、

大きく報道されているわよ。」


「どうせ、今の内だけだろ、

団体員の誰かが、奇跡の生還でもしなきゃ、

そのうち、みんな忘れちまうさ。」


「そんな、もんかもね。」


香月こうずきさん、本当にお世話になりました。

請求書はパパてに送って下さいね、

色々と聞きたい事は、山程やまほどありますけど、

早くパパを安心させたいから、

今日は、これで帰ります。

じゃあ、田中さん、またね。」


「お、おう、

じゃあな・・・また?」



年が明けて3月、

地元アメリカのニュースでも、

AHO団に関する話題が上がらなくなった頃、

K&T探偵事務所を一人の人物が訪れた。

「ごめん下さ~い!」


「あら、獅子頭ししがしらさんじゃない、

お久し振りね。」

「おう、華音ちゃんか、元気にしてたのか?」


「はい、香月さんご無沙汰してました。

田中さん、私は元気でしたよ、

この春、高校も無事に卒業しましたし。」


「へ~、そりゃおめでとう。

そんで、今日は何の用で来たんだ?」


「高校を卒業したので、

ここに就職させて貰おうと思いまして来ました。」


「「ここに、就職!?」」


「はい、そのつもりです。」


「大学とか進学しないのか?」


「ええ、別に大学で、

学びたい事も無いし。」


「お父様は、反対されなかったの?」


「はい、やりたい事をやれば良いって、

言ってくれました。」


「ふ~ん、そうなんだ、

社長どうする?」


「彼女は、現役の総理大臣の娘さんだし、

何か、調査に役に立つかも知れないわね、

身の安全に関しても、

ウチ以上に安全な所なんて無いしね、

私は、良いと思うわよ、

だから、あとは田中君次第ね。」


「そうか・・・

彼女のバイタリティは探偵に向いてるかもな、

って事で、4月からよろしくな後輩!」

一郎は、アイテムボックスから『護りの指輪』を取り出すと、

華音へと差し出しながら告げた。

僕にとって、この作品は初めての投稿でしたが、

来年から、新しいものを書いてみたくなりましたので、

取り敢えず、ここで完結と致します。

ご愛読ありがとう御座いました。  シュウ

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