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ニューヨーク見物で時間を潰した一郎と華音は、
今回の事件の黒幕であるジョンソン議員が自宅に帰るのを、
尾行して行く事とした。
「相手は車だと思うんだけど、
どうやって着いて行くの?」
「空を飛んで。」
「えっ?」
「姿を消して、空を飛んで着いて行くんだよ。」
「田中さんて、空も飛べるの?」
「ああ、華音ちゃんが思い付く様な事なら、
大体の事は出来るぜ。」
「私、最初は田中さんて、
凄い超能力者なのかな?って思ってたんだけど、
どうやら違うみたいね。」
「ああ、俺は超能力者じゃなくて、
魔法使いだぜ。」
「それって、ハタチまで童て「違~う!まったく、お嬢様なのに、
何で、そんな事知ってんだよ。」そうなんだ。」
「ああ、異世界に勇者として召喚されて、
魔王を倒して、元の世界へ帰して貰ったんだけど、
無くなる筈の力が、そのままだったんだよ。」
「おお~!田中さんて勇者だったんだ。」
「今の話を信じるのか?」
「だって、今まで見せてくれた力は、
魔法だとでも考えないと、ありえない力だもん。」
「まっ、そう言う事なんで、
他言無用で頼むな。」
「こんな事、話しても、
誰も信じないわよ。
私だって、自分の目で見たから信じてるんだもん。」
「そりゃそうだな。
おっ!車が出て来たぞ、
『隠密』『障壁』『飛翔』っと。」
「うわっ!ホントに飛んだわ!って、
あ、大声出すと不味いかしら。」
「いや、魔法で障壁を張ってるから、
中の音は外に漏れないぞ。」
「へ~、そりゃ便利ね。」
「第一、障壁を張らなきゃ、
空の上なんて、寒くていられないぜ。」
「それもそうね。」
一郎と華音が、空を飛んで車に着いて行くと、
さすがは有力議員の邸宅だけあって、
広々とした敷地を持つ豪邸へと辿り着いた。
「さすがは、一流のスナイパーを雇えるだけの事はあるな。」
「それは、良いんだけど、
あんな豪邸じゃ、警備も凄いんじゃないの?」
「ああ、建物の周りの警備は凄いんだけど、
姿を消して、空を飛んで来るのは想定して無いだろうから、
多分、大丈夫だと思うぞ。」
「私たちの姿って、今、消えてるの?」
「ああ、『隠密』って魔法を使えば、
監視カメラやセンサーにも感知されないんだよ。」
「そんな能力があれば、
忍び込めない場所なんて、無いんじゃない?」
「ああ、俺一人なら、どこにでも入れるだろうな。」
「他の人と一緒だと、無理なの?」
「世の中には、どんな能力を持ったヤツが居るか分からないからな、
とんでもない能力を持つヤツが現われた場合なんかだと、
俺だけなら対応出来ると思うが、同行者の安全は分からんからな。」
「ちょっと、不安になる様な事を言わないでよ。」
「いや、こんな屋敷に忍び込むぐらいなら、
誰が一緒でも大丈夫さ、
俺が言ってるのは、国の重要機関とか、
特殊な能力を持った連中のアジトとかの話さ。」
「そんな、映画みたいな所ってホントにあるの?」
「ああ、この前行ったアメリカのエリア51って所には、
あったな。」
「エリア51に、宇宙船や宇宙人が居るってホントだったの!?」
「いや、確認出来たのは超能力者だったぜ、
まあ、それ程の能力でも無かったんだがな。」
「超能力者と戦ったの?」
「戦ったと言うか、
あいつら殺人とかの犯罪を犯してたから、
一方的に壊したって言うのが正解かな。」
「へ~、そんな事があったんだ。」
「あと、宇宙人なら、
態々(わざわざ)、アメリカまで行かなくても、
日本に住んで居たぞ。」
「マジで!?」
「ああ、ニュースで見た事が無かったか?
山形県の、山奥にある村の住人たちが消えたってやつ。」
「あっ、見た見た、あれってそうだったの?」
「ああ、俺が壊れた宇宙船の修理を手伝ってやって、
宇宙へ帰してやったんだよ。」
「何か、田中さんと話していると、
常識が崩壊して行く気がするわ。」
「よし、ジョンソン議員が自分の部屋に入ったみたいだから、
ベランダから、お邪魔する事としようぜ。」
一郎と華音は『隠密』の魔法を掛けたまま、
議員の部屋のベランダへと舞い降りた。




