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「ジャネットさん、
そのAHO団とか言う団体の本拠地と、
黒幕って言う、大物政治家の名前と顔写真を頂けますか?」
「本来であれば、
データの流出は重大な服務規程違反行為なんだけれど、
他ならぬイチローの頼みですものね、
そっちのパソコンに暗号化したデータを送るから、
前に教えたキーワードで解除してね。」
「ありがとう御座います。
助かります。」
一郎は、ジャネットに礼を言ってから、
スマホを切った。
「ねぇねぇ、CIAのデータベースってマジなの?」
「ああ、彼女は前に、
凄腕の諜報員をフリーでやってたんだけど、
日本で起こった、ある事件で知り合ったんだ。
CIAは、その事件後に就職したみたいだから、
偶々(たまたま)のラッキーだったな。」
「何か、凄腕のスナイパーとか、
CIAのエージェントが出て来るなんて、
アメリカのドラマとか映画みたいね。」
「ドラマや映画じゃ、本当に死ぬ事は無いけど、
君は撃たれたら死ぬんだぞ。」
「でも、田中さんが護ってくれるんでしょ?」
「う~ん、ちょっと違うかな?
俺は、護るのよりも攻める方が得意なんだよ。」
「どう言う事?」
「君が狙われる原因の、
元を絶ってくるって事さ。」
「元って、アメリカの?」
その時、事務所のパソコンがポン!と音を発てて、
メールが届いた事を知らせた。
「おっ来た来た。」
一郎は、メールを開くと、
ジャネットに前に教えられたパスワードを入力した。
「何々、黒幕の政治家はジェイソン・ポーカー82歳か、
82にもなって、未だに人種差別してるなんて、
人間が出来て無いな~、
本拠地はワシントンD.C.に程近い、
バージニア州のリーズバーグってとこか、
よっしゃ、まずはジェイソン議員に会って、
一応、説得を試みて見るかな。」
「これから、アメリカまで行くって言うの?」
「ああ、奥の手を使えばアッと言う間に行けるからな。」
「その間、私はどうしていれば良いのよ?」
「どうせ、俺の力は見られちゃってんだから、
一緒に連れて行ってやるよ、
でも、その前に・・・」
一郎は、ポケットからスマホを取り出すと、
姫花に連絡を取った。
「もしもし、社長?」
『ええ、そうよ、
それで、何か分かったの?』
「ああ、ジャネットさんに黒幕と本拠地を調べて貰ったから、
今から、ちょっと行って『H・A・N・A・S・H・I・A・I』を、
してくるよ。」
『あらそう、じゃあ、
またアメリカに行って来るのね。』
「ああ、そう言う事だ。」
『アメリカに行くなら、
前にロスで買ったアロマオイルが無くなりそうだから、
また買って来て貰っても良いかしら?』
「アロマオイルって、
ジャネットさんに紹介して貰った店のヤツ?」
『そうそう、カモミールとアプリコットのを、
お願いするわ。』
「了解了解。」
一郎は返事をしてから、スマホを切った。
「何か、まるで、
その辺に、買い物に出掛けるみたいな気安さなのね・・・」
「まあ、ウチの社長は、
俺の力の事を、良く知ってるからね、
君も、今回、俺と一緒に行動すれば分かると思うぜ。」
「そうなの、分かったわ、
あと、私の事は『君』じゃ無くて、
『華音』って呼んでくれるかしら。」
「オッケ~、華音ちゃんね。」




