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9 - 3

「こんにちは~。」

一郎と響矢は神無村へと到着したが、

目的の民宿の場所が分からなかったので、

村の人に声を掛けた。


「はい、こんにちは、

お前さんたち見掛けないけど観光かね?

こんな何も無い村に来るなんて、物好きだね。」

人が良さそうな小父さんだ。


「いえ、観光では無くて、

昔の神隠し事件の取材で東京から来ました。」


「おや、珍しいね、

昔は良く取材の記者さんが大勢来ていたけど、

最近は、とんと見掛けなくなったからね。」


「ええ、最近の若者は知らない人が多いですが、

僕らの年代では、日本を代表する怪事件の一つですからね。」


「そんなもんかね~、

それで、その記者さんがワシに何か用かね?」


「はい、この村に初めて取材に来たものですから、

どこか宿泊できる所があるか、おうかがいしようかと思いまして。」


「ああ、泊まるとこかい、

それこそ、記者さんが大勢来ていた頃は、

旅館や民宿が結構な数あったんだが、

今じゃ民宿が一件あるだけさ、

あそこに見えてるポストの所を右に曲がって、

3件目がそうだよ。」


「ありがとうございます。わかりました。」



2人は民宿に行ってみる。

「すいませ~ん!」

入り口の引き戸を開けて声を掛けてみた。


「は~い。」

奥の方から返事があって、

小母さんが出て来た。


「すいません、東京から取材で来たんですけど、

部屋はいてますか?」

一郎と響矢は名刺を出しながらたずねた。


「おや、雑誌の記者さんかい、珍しいね。

部屋なら空いてるから大丈夫だよ。」


「じゃあ、3日程お願いします。」


「はいはい、いらっしゃいね。」


「それで、ちょっとお尋ねしたいのですが、

昔の神隠し事件に詳しいお年寄りの方や、

この辺の風土が分かる資料館とかをご存じですか?」


「ああ、知ってるよ、

あの神隠しの事ならオヨネ婆ちゃんが詳しいね、

婆ちゃんは当時の駐在さんの奥さんだったから、

一番近くで見聞きしていたからね、

それと、郷土史なら廃校になった分校の建物が資料館になってるから、

そこで自由に見られるよ。」


「ありがとうございます。訪ねてみます。」


「今日、行くのかい?」


「いえ、じきに日が暮れてしまいますので、

取材は明日からにします。」


「その方が良いね、オヨネ婆ちゃんは早く寝ちゃうから、

夕方にはご飯を食べているからね、

資料館も電気が入っていないから、すぐに暗くなるからね。」


「そうなんですか。」


2人は部屋に通されて宿帳の記載などをしたが、

その際に、響矢の友人たちの名前を確認する事が出来た。


「食事の準備が出来るまで少し掛かるから、

村の共同浴場に行って来たらどうだい?

ここの風呂にも入れるけど、

共同浴場は温泉だよ。」


「へ~温泉ですか良いですね、何に効く温泉なんですか?」


「疲労や筋肉痛、腰痛なんかに良いらしいよ。」


「そうですか、今日は長い事電車に乗っていたから、

ちょうど良いですね、さっそく行ってみます。」


「そうしな、そうしな。」


権俵ごんだわらくんはどうする?」

一郎は響矢の名刺に記載されている偽名で問いかけた。


「ご一緒します後醍醐ごだいごさん。」

同じく響矢も一郎の偽名で返した。




「ふぅ~、良い温泉だな。」

まだ時間的に少し早い所為か、共同浴場は一郎たちの貸切状態だった。


「そうですね、体がほぐれる感じがします。

田中さん、民宿の女将さんを見て何か感じましたか?」


「いや、ごく普通の人に見えたな、

御門くんは何か感じたかい?」


「いえ、感じませんでした。

ただ、電話で問い合わせた時に相手をしたのが、

たぶん女将さんの声だったと思うんですが、

今日、実際に会って話した様な朗らかな感じでは無くて、

抑揚が無くて陰気な感じの話し方だったんで、

印象が違い過ぎて吃驚びっくりしました。」


「印象の相違そういか・・・

この村には何か秘密があるのかな?」


「ええ、余りにも普通過ぎる感じがしますね、

何か、村全体で普通の村の演技をしている感じと言いますか・・・」


「ああ、御門くんが言いたい事が良く分かるな、

村に来て最初に会った小父さんが居ただろ。」


「ええ、民宿を教えてくれた人ですよね。」


「ああ、あの人は何らかの武道の達人だぜ。」


「ええ!?普通の小父さんに見えましたが。」


「普通に見える様にはしていたが、

周囲への気の配り方や、身のこなしが一般人じゃ無かったんだ。」


「へ~、こんな田舎の村に、

そんな人が居るなんて気になりますね。」


「ああ、この村は見かけ通りの村じゃ無い事は確かだな。」

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