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『ロックバレット!』
「うわっ!」
「ぎゃっ!」
シルバー仮面が唱えると、
空中に小さな岩が現われて、高速で飛んで行き、
犯人たちを吹き飛ばした。
「一応、生かしたまま警察に引き渡すか、
『ハイヒール』っと。」
シルバー仮面が、床に落ちた犯人の手首を、
傷口に押し付けながら唱えると、
たちまち元通りに、くっ付いた。
シルバー仮面は、アイテムボックスからロープを取り出して、
犯人たちを縛り上げてから、
武者小路夫妻を解放した。
「ちょっと一郎、今の攻撃は何なの?
それに、どこから現れたのよ?」
「一郎とは誰かな?私はシルバー仮面と言う者です。」
シルバー仮面は、依然として不自然な裏声で話している。
「そう、あなたが一郎じゃ無いなら、関係無いと思うけど、
ウチの店のホームページに、
『一郎の過去にあった恥ずかしいエピソード』コーナーを開設しようかしら。」
「私は一郎です。
申し訳ございません、ミコ姉ぇ様。」
「初めから、そう言えば良いのよ、
それで、その格好とか力は何なのよ?」
「それに付きましては後日説明に伺いますので、
警官隊が突入してくる前に、
解放された旨を外に知らせた方が良いのでは無いでしょうか?ミコ姉ぇ様。」
「それも、そうね・・・
床の血痕は、どう説明すれば良いかしら。」
「あっ、それに付きましては御心配無く、
『クリア!』ほら、ご覧の通りに綺麗になりました。」
「ホントね・・・
ちょっと、後でホントに説明に来なさいよ、
それと、その話し方は気持ち悪いから、普通に話しなさいよ。」
「分かったよミコ姉ぇ、あと騒がれたく無いから、
犯人たちはミコ姉ぇが撃退した事にしてくれないかな。」
「分かったわ、店には防犯カメラが設置されているから、
あんたが、どうやって、ここに来たか説明が出来ないからね。」
「そう言う事、そんじゃまたね『転移』」
シルバー仮面改め一郎が消え去ったのを見届けてから、
御子は夫の義之に語りかけた。
「いったい、どんな話が聞けるのやら・・・。」
「そうだね、楽しみだね。」
「ただいま~。」
一郎は、探偵事務所に跳んで帰って来た。
「お帰りなさい田中君、上手く解決したみたいね。」
テレビでは、立てこもり犯逮捕の報道が流れていた。
「それが、それほど上手く無くて、
ミコ姉ぇたちに、俺の正体がばれちゃったから、
後で説明に行かなくちゃならないんだよ。」
「何で、ばれたの?」
「それが、社長の時と同じで、
声色を変えるのを忘れていたんだ。」
「それは、凡ミスだったわね。」
「ああ、だけどミコ姉ぇたちには、
お宝の出所を教えておいた方が、上手く処理してくれるだろうから、
本当の事を話しておいた方が、後々問題にならないかもな。」
「それもそうね、その辺を考慮すれば、
今回の事件は結果オーライだったかな。」
立てこもり事件が解決してから、
マスコミが落ち着いたのを見計らって、
一郎は、再び『R shop』を訪れた。
「こんちゃ~。」
「いらっしゃいませ、田中様、
社長と副社長がお待ちしてますので、社長室までどうぞ。」
社員に話がしてあった様で案内された。
「こんちゃ~。」
「おお、一郎君、先日は助かったよありがとう。」
「いらっしゃい、一郎。」
「いえいえ、ミコ姉ぇと義之さんには、
お世話になってるから、少しでも恩を返せたら良かったですよ。」
「じゃあ、さっそくソファにでも腰を落ち着けて、
あの力の説明をしてくれるかしら。」
「うん、じつは・・・」
一郎は、異世界に行ってからの事と、
地球に帰って来てからの事を細かく夫妻に説明した。
「そんな事って、あるのね・・・。」
「なる程、あの金属は異世界産だった訳か、
通りで解析出来なかった訳だな。」
「ちなみに、ティアラがミスリルで、
短剣はアダマンタイトだよ。」
「ほ~、あれがファンタジーでお馴染みの金属か、
実に興味深いな。」
「でも、あれの所為で今回の事件が起きたんだからね。」
「えっ!?どう言う事?」
「あの犯人たちに依頼したのが、
金属の鑑定を依頼した大学の教授だったのよ。」
「そりゃ、ミコ姉ぇたちに迷惑掛けたな。」
「いや、一郎君の事情を考えれば仕方が無い事だよ。」
「ちゃんと助けに来てくれたしね。」
「そう言って頂けると助かります。」
「じゃあ、一郎は、その力を使って探偵業をしてる訳ね、
ちゃっかりしてるわね~。」
「俺も、この力を利用できる商売を色々考えてみたんだけど、
社会にも幾らか役に立つ仕事って考えると、
探偵が良いかな~って思ったんだ。」
「一郎にしては、なかなか良い考えだったわね、
ウチも仕事柄、何かお願いするかも知れないから、
その時は頼むわね。」
「おう、任せてくれよ。」
「一郎君、変わった金属って他には持ち帰らなかったのかね?」
「ああ、ありますよ。」
一郎は、アイテムボックスからオリハルコンのインゴットを取り出して、
義之に手渡した。
「これは!見た目に反して凄く軽い金属だね。」
「ええ、それが、かの有名なオリハルコンですよ。」
「おおっ!これが!一郎君ものは相談だが、
これを譲って貰う訳にはいかないかね?」
「ええ、良いですよ、インゴットはまだ有るから、
それは、今回の迷惑料って事で義之さんに差し上げますよ。」
「おおっ!良いのかね!
御子、一郎君はこう言ってくれているが、
頂いても良いかな?」
「一郎が良いって言ってるんだから、良いんじゃない。」
「そうだ!義之さん、UFOの破片があるんだけど、要るかな?」
先日の事件で、宇宙船の修理を手伝った際に、
貰った破片を見せる。
「「何それ!!」」
「実は・・・。」
一郎は、先日の宇宙人事件も説明した。
「あんたと居ると退屈しないわね~、
また変わった事があったら教えに来てよ。」
「そうそう、是非お願いするよ。」
「分かりました。また伺います。」
こんな感じで、今回の事件は幕を閉じたんだけど、
また、俺の秘密を知る人物が増えてしまった事から、
今後は、もう少し気を配って行動しなきゃと思わせる事件であった。
では、また次の事件でお会いしましょう。




