ケース8 『R shop』強盗事件
K&T探偵事務所の朝は9時出勤だ。
「おはよう、社長!」
「おはよう、田中君。」
「今日は何か依頼入ってるか?」
「いいえ、今日は別に無いわよ。」
「じゃあ、ゆっくり出来そうだな。」
すると、見澄ました様にサスケの携帯電話が鳴り出した。
ポケットから携帯を取り出す一郎を見て、
姫花が声を掛ける。
「田中君、まだ携帯なの?
スマホの方が色々機能が多くて便利よ。」
「電話でしか使わないから、
今の所、これで十分さ。」
「そう?」
「はい、田中です。」
『一郎?私だけど。』
「ミコ姉ぇ?」
『そうよ、最近、連絡して無かったけど、
ちゃんとやってるの?』
「ああ、高校の時の同級生と探偵事務所を始めたんだけど、
まあまあ儲かってるかな。」
『あんたが探偵事務所?
素人が行き成り始められるものなの?』
「ああ、一緒に始めたヤツが、他の探偵社に勤めていたから、
営業面はお任せしてるんだよ。」
『まあ、それなら大丈夫か・・・
そうそう、本題なんだけど、
あんた今日、時間取れる?』
「ああ、今日は暇だから大丈夫だぜ。」
『じゃあ、ウチの本社まで来てくれる?
義之さんが、あんたに聞きたい事があるんだって。』
「義之さんが、俺に聞きたい事?
何かな?」
『あの人が聞きたい事って言ったら、
古物の事に決まってるでしょ、
あんたが、この前、持ってきた貴金属の中に、
気になる物でもあったんじゃない?』
「ああ、アレか・・・
分かったよ、10時半頃に伺うよ。」
『了解、待ってるわね。』
電話を終えた一郎に、姫花が話掛ける。
「知り合いからだったの?」
「ああ、ミコ姉ぇって言って、
ウチのお袋の妹、つまり俺の叔母なんだけど、
『R shop』って店をやってるんだよ、知ってるか?」
「ええ!?『R shop』って、あの『R shop』よね、
もちろん知ってるわよ、本社がS市にあって全国展開してる、
大手リサイクルショップチェーンだもの、
ウチの県だけじゃなくて、全国でも上位にくる優良企業でしょ。」
「ああ、その『R shop』だ、
正しくは旦那の義之さんが社長なんだけど、
義之さんは根っからの古物品バカで、
経営には余り興味が無いから、
店を、ここまで大きくしたのは副社長のミコ姉ぇなんだ。」
「へ~、商才があるのね、肖りたいものだわ。」
「そうだな。
それで、ミコ姉ぇの店に、
異世界で手に入れたお宝を買い取って貰ったんだけど、
その中に、義之さんが気になる物が入ってたらしくて、
俺に何か聞きたいらしいんだ。」
「異世界のお宝って高く売れたの?」
「ああ、貴金属が殆どだから、半分売ったんだけど55億で売れた。」
「えっ?幾らって言った?」
「55億。」
「55万?」
「55億円だ。」
「え~っ!?55億円!?
田中君、大金持ちじゃないの!
どおりで、事務所を開設する時にポンと5千万円も出せる訳だわ。
しかも、もう半分あるなんて、
ミコさんに頼んで、何か資産運用した方が良いんじゃないの?」
「まあ、行く行くは、そういうのも考えるけど、
量が量だから捌けるのに時間が掛かるらしいんだよ、
高価な物ばかりだから買える人も限られて来るだろうからな。」
「それもそうね、55億で買うって事は売値は、
もっとするでしょうし。」
「ミコ姉ぇは100億は堅いって言ってたな。」
「は~、100億円か~、想像も付かない金額ね、
それなら、一個一個の値段もかなりのものね。」
「そうなるだろうな、
そうだ!お宝が、まだ半分あるから、
社長に何かプレゼントしようか?」
「え~、そんな高価な物を頂けないわよ、
貰っても付けて行く場所も無い事だし。」
「仕事で、パーティーとかに潜入する事があるかも知れないだろ、
安物を付けていたらバレる危険とかも考えられるし、
持ってて損は無いと思うぜ。」
「田中君が、そう言ってくれるなら、
ありがたく頂こうかしら。」
「おう、今、出すよ。」
一郎は、アイテムボックスから宝箱を取り出して、
蓋を開いて姫花に見せた。
「は~っ、凄いわね、これが全部本物なんて・・・」
「ティアラとネックレス、イヤリング、指輪、ブレスレットなんかを、
一式選んで良いぜ。」
「指輪はサイズが合わないんじゃない?」
「俺が魔法で調整してやるよ。」
「そう、ありがとう。」
姫花は、あ~じゃない、こ~じゃないと色々選んでいたが、
結局、シンプルで余り悪目立ちしない無難な物を選んだ様だ。
「そんじゃ、俺はミコ姉ぇの店に行って来るよ。」
「ええ、分かったわ、本当にありがとうね。」
「おお、気にするな!」
一郎は、『R shop』へと向かった。




