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「今から、400年以上前になるが、
地球に生息する生物を観察する為に、
月に降り立つ予定だった我々の船、
お前たちが言うところの宇宙船だな、
が運悪く流星群に遭遇してしまって、
あの星降山に落ちたのだ。」
「我々?」
「そうだ、私たちは年を取らない・・・と言うか、
私たちの本体は精神体なので、
古い体を捨てて、新しい体へと乗り換えていくと言った方が正しいかな。」
「それは、地球人の体を乗っ取っているって事か?」
「いいや、この体は我々が造った物だ。」
「それなら良いや。」
「当初、我々は船を修理して帰ろうとしたのだが、
地球の金属では修理することが叶わなかったのだ、
あの船には動力機関が積まれていなくて、
地球で言うところの念動力の様な物で、
我々が飛ばしていたのだ、
地球の金属は我々の力を通してくれなくてな、
以来、当ての無い救助を夢見て、この村に住み続けている訳だ。」
「元々、この村に住んで居た人たちは、どうしたんだ?」
「船が落ちた時に、大量の岩石と土砂が村に降り注いで、
大半の村人は亡くなってしまったのだ、
僅かに残っていた村人たちも、
我々が持ち込んでしまった病原菌によって皆死んでしまいおった。」
「じゃあ、今、この村に住んでるのは、
あんたの仲間だけって事か。」
「そう言う事だな。」
「大善寺徳郎は、どうしたんだ?」
「あの、ハグレ者は、
ここでの長きに渡る生活に耐えられなくなって、
村から出て行ったのだ、
我々が持っている高い知能と直感力を使って商売をしていたようだが、
長期に渡って船から離れていると、
この作り物の体が維持できなくなるのだ、
あやつも思うように体が機能しなくなって帰ってきたと言う訳だ。」
「じゃあ、やっぱり、この村に居るのか?」
「今、船で新しい体を造っておるよ。」
「今でも、自分たちの星に帰りたいと思っているか?」
「ああ、我々には死という概念が無いから、
この400年からの思いは変わる事無く持ち続けているさ。」
「これを、見てくれ。」
俺はアイテムボックスからミスリルのインゴットを取り出した。
「その金属は?」
「この地球上の金属じゃないんだが、
あの山に埋まっている船の素材と似たような金属だぜ。」
「何じゃと!?少し見せて貰っても良いか?」
「ああ、良いぜ。」
俺は村長にインゴットを手渡した。
「おおっ!思うように力が通るぞ、これなら修理が可能かも知れんぞ。」
「「「「おお~っ!」」」」
村人たちも歓声を上げている。
「その金属を譲る代わりに、一つお願いがあるんだけど・・・」
それから、数か月後、一つの村の住人全員が忽然と消え去ると言う、
ミステリアスなニュースが世間を騒がせたが、
新しい物好きな現代人は、すぐに他の話題を見つけると、
忘れ去っていった。
「ねえ、田中くん、最上さんに引き渡した大善寺の抜け殻だけど、
あれで良かったのかしら?」
「社長が言いたい事は分かるけど、
何しろ相手は宇宙人だぜ、地球の法律じゃ裁けないさ、
被害者たちの怒りを和らげる為にも必要だったんだ、
被害者の人たちも、
精神に異常をきたしたように見える大善寺を、
これ以上、責めようとは思わないと思うぜ。」
「それも、そうね・・・」
そう、村長からは大善寺の抜け殻を貰ったのだ、
警察としても、精神を病んではいるものの、
犯人を検挙できたという結果を残せば、
訴え出た人たちへの説明は付くのである。
「あの、村の人たち、ちゃんと自分たちの星に帰れたかしらね?」
「さあな、その星が、どうなっているかも分からないしな。」
「まあ、今回は最上さんに恩返しが出来て良かったわ。」
「まあな、俺も村長さんから、
あの村に残っていた変わった物を貰ったしな。」
「何それ?私、聞いて無いんだけど・・・」
「永久に水を出す壺とか、一粒で腹一杯になる豆とか色々あったんだ。」
「面白そうね、今度見せてくれる?」
「ああ、良いぜ、欲しい物があったら社長にもあげるよ。」
「ホント!?それは楽しみね。」
村長には、本当は、もう一つお願いしてあって、
船が直ったら乗せて欲しいと頼んでおり、
先日、乗せて貰ったのだが、数分で土星まで飛んだのには驚いた。
構造は大体分かったので、その内小型のやつを作ってみるかな。
これが、今回の事件の顛末だ。
まあ、スッキリとは行かなかったが、
何とか解決と相成った。
それでは、新たな事件があったら、
またお会いする機会もあると思うが、今日はこの辺で・・・




