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一郎は人目の無い、森の中へと分け入って
『ステルス』と『飛翔』の魔法を発動した。
山の上に着くと、魔法を解除して早速調べて見る。
「おいおい、マジかよ・・・」
地中を探知してみると、
確かに巨大な何かが埋まっている反応があった。
「これは・・・
素材的にはオリハルコンに似ている感じだけど、
どちらにしても地球上の物じゃないな、
所々に青銅や錫が使われているのは修理しようとしたのかな・・・?」
「そこで、何をしておるんじゃ!」
一郎は、自分の気配感知に反応が無かったので、
ビックリして声の方を振り返った。
そこには、一人の老人が立っていた。
「初めまして、僕は郷土史の研究をしている田中と言う者ですが、
麓の村で、大昔に、この星降山に流れ星が落ちて、
こんな変わった形になったと聞いて見に来たんです。」
「ワシは、この先にある黒姥根村の村長をしておる、
暮井と言う者じゃ、
この山に登ったなら村を通った筈じゃが、
よそ者が来たとの話は聞いておらんのだがな。」
「ああ、僕は村を通らずに反対側から登ったんですよ。」
「ふふふっ、語るに落ちたな、
村の反対側は幅20メートルはある谷があるから、
登ってはこれんぞ。」
(くそ~、しくじったぜ。)
その時、一郎の頭に『精神操作に対抗しました。』
とのメッセージが流れた。
(成る程な、この爺さんも只者じゃないって事か。)
「いえ、20メートル程度なら問題ありませんよ、
あなたが僕の心を操ろうとしたように、
僕にも特別な能力がありますので・・・」
一郎は老人から遠ざかる様に、
予備動作もなしに後ろ向きで30メートルほど飛んだ。
「何!?お主、何者じゃ!」
「少なくとも、あなたの敵ではありませんと言って置きましょう。
また改めて村の方に、ご挨拶に伺いますので、
今日はこれで失礼させて戴きます。」
一郎は『転移』の魔法で探偵事務所へと跳んだ。
「消えた・・・
一体、何者なんじゃ。」
事務所に戻った一郎は、
事務所に居た姫花に、今日の出来事を語って聞かせた。
「田中くん、私をからかっているんじゃ無いのよね?」
「ああ、全部、本当にあった話だ。」
「地球上の物じゃない金属って事は、
やっぱり地球外生物の乗り物が埋まってるのかしら?」
「ああ、宇宙人の乗り物かは分からないが、
大きさや形からすると何らかの加工を施された物が埋まってたぜ。」
「これは、最上さんたち警察の手には余る案件よね。」
「ああ、俺だから対抗できたが、
普通の人じゃ精神操作を受けて操られると思うぜ。」
「どう対処すれば良いかしら?」
「俺は、取り敢えず村長と話し合ってみようかと思うんだ。」
「田中くん、大丈夫?」
「ああ、逆に言えば、
あの村長と対等に話し合えるのは、俺しか居ないと思うぜ。」
「そうね、田中くん以上の能力を持った地球人が、
それほど居るとは思えないしね。」
「そう言う事。」
「でも、相手は未知の存在なんだから、十分に気を付けてね。」
「おう、俺だけなら、どんな状況からも逃げて来られるから、
そんなに心配しないで待っていてくれよ。」
「分かったわ、どんな土産話が聞けるか楽しみにしてるわね、
あと、最上さんに依頼された大善寺 徳郎の、
事を聞き忘れないでね。」
「そうか、元々そっちを調べていたんだったっけ、
余りにもスケールが大きい話になってきたから、
すっかり忘れていたぜ。」
「もう、本業を忘れないようにね。」
「了解、了解。」




