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7 - 3

「私は曾祖母ちゃんから聞いた話なんだけど、

婆ちゃんも自分の祖父ちゃんから聞いたって言っていたから、

相当、昔の話だね、

ちょっと外に出てごらん・・・

あの山があるだろ?」


「あの右側が欠けたみたいな形の山ですか?」


「そうだよ、あの山は星降山ほしふりやまって言うんだけど、

昔、あの山に流れ星が落ちて、あんな形になってって言われているのさ、

そして、あの山の麓が黒姥根くろぼね村なのさ・・・」


「山が、あんな形になるぐらいだから、

村にも大きな被害が出たんでしょうね。」


「ああ、大きな岩や土砂が降り注いで、

たくさんの死者や怪我人が出たそうさ、

この辺の村の連中も救助活動を手伝ったんだけど、

誰もが黒姥根村は、もう無くなると思ったそうだよ。」


「でも、無くならなかったんですね。」


「それが、変な話なんだけど、

怪我をした村人が2~3日で治っちまったって言うのさ。」


「それは、軽傷の方が居たって事ですか?」


「いいや、体の一部が潰された者や、

骨が折れていた者がピンピンして歩いたって言うのさ。」


「それは凄い話ですね、自然に治ったんですかね。」


「いいや、ここらで見かけないヤツらが来て治療したって話だ、

コイツらが曲者でね、

一見は普通の人間らしいんだけど、

良く見ると、自分の心が囁いて来るそうなんだ、

『こいつらは、人に見えるが中身は違う物だ。』ってね・・・」


「小母ちゃん、語り口と、顔が怖いんですけど・・・」


「ハハハッ、婆ちゃんたちが子供を怖がらせるために、

作った話かも知れないけどね。」


「ああ、そう言う昔話も多いですよね、

それで、ソイツらはどうしたんですか?」


「ああ、ソイツらも自分が、どう見られているか気付いたんだろうね、

しばらくすると居なくなったって話さ。」


「それから、村を復興したんですか?」


「ああ、黒姥根村の連中は、やたらとちからが強い者や、

天気を何日先まで当てる者とか居たから、

あっと言う間に元の村に戻ったらしいよ。」


「そんな便利な力があったら、

周りの村の人たちも頼ったんじゃないですか?」


「ああ、最初は野菜やら米なんかを持って、

失せ物探しや、天気を占って貰ってたらしいよ。」


「『最初は』って言うと?」


「占いなんてもんは、

当たるも八卦、当たらぬも八卦だから良いんさね、

必ず当たるなんてのは占いじゃ無くて予言さ、

みんな恐ろしくなって、黒姥根村には近づかなくなったのさ。」


「黒姥根村の人たちも、村から出なくなったんですよね。」


「ああ、そうさ、

この辺は、大した産業も無く、

稼ぎと言えば農作物を作って売るぐらいだからね、

畑仕事が出来ない冬場なんかは、

男衆は大きな街まで出稼ぎに行くのが普通なんだよ、

ところが黒姥根村の連中は、

流れ星が降ってから、村から出なくなっちまったんだよ、

変だと思った、他の村の者が見に行ったら、

森が大きく切り開かれて、畑が出来ていて、

周りは雪に覆われているのに、

畑では野菜や稲穂が青々と繁っていたって話だ。」


「何かお伽話とぎばなしみたいな話ですね。」


「ああ、見に行った者も、

キツネかタヌキにでも馬鹿されたかと思って、

急いで山を下りたって話だよ。」


「でも、大善寺だいぜんじは村から出たんですよね。」


「大善寺・・・?

ああ、大善寺病院の鬼子おにごか。」


「鬼子ですか?」


「ああ、あの子は、大雨が降った時に、

村で川に落ちて、下流の街で救助されたんだよ、

担ぎ込まれたのが大善寺病院だったのさ、

最初は執拗に『村に帰らなきゃ。』って繰り返していたのに、

容体が良くなるまで無理だって留められて居る内に、

憑き物が落ちたように『帰りたい。』と言わなくなったそうだよ、

中学生ぐらいの年なのに身寄りが無くて、

村では一人暮らししていたらしいよ、

それで、あの子の優秀さに目を付けた、

大善寺病院の院長先生が引き取ったのさ。」


「彼は、そんなに優秀だったんですか?」


「ああ、中学生ぐらいなのに、

院長先生の娘さんが持っていた、

有名大学の問題集をスラスラ解いていたそうだよ。」


「成る程、優秀な跡継ぎにでも考えていたんですかね。」


「そうだろうね、結果は、ああなっちゃったけどね・・・」


「本当ですね・・・

ああ、長々とお邪魔して済みませんでした。

大変、参考になりました。」


「いいえ、どうせ暇だったからね、良い話相手だったよ、

いいかい、黒姥根村には近づくんじゃ無いよ。」


「ええ、分かりました。

ありがとう御座いました。」


俺は、小母ちゃんと別れてから、

バス停に向かう振りをして、星降山を調べて見る事にした。

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