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地下から博士を担いで地上に上がろうとすると、
エレベーターの前に2人組の男たちが待ち構えている、
警備服を着ていないところを見ると、
男たちは、何らかの能力者なのだろう。
『どうやって侵入したかは分からないが、
ここで投降すれば、命は助けてやるから、博士を下したまえ。』
(やっぱ、会話が出来ないと不便でしょうがないなぁ、
異世界言語理解を弄れば何とかできるかな?
・・・・・・よし!言語理解に変ったから、大丈夫かな?)
『あ~、俺が言ってる事が理解できるか?』
『お前は、何を言ってるんだ?
分かるに決まってるだろう、
変な言動で我々に隙を作るつもりなのか?』
『いや、分かれば良いんだ、
博士は居るべき場所に帰って貰うから、そこを通してくれないか?』
『お前一人で、我々に敵うとでも思ってるのか。』
『もちろん!思ってるから言ってるんだぜ。』
『少々、痛い思いをしなければ、分からないようだな、
自分の言動を後悔するがいい。』
突然、俺に向かって見えない力が叩きつけられてきたが、
大した強さではなく、魔法障壁で軽く止まっている。
『何!私の攻撃が届かないとは、お前も何らかの能力者なのか!?』
『今のは、念動力とか言うやつか?
そうやって、自分だけが特別とか思ってると、
足元を掬われるぜ。』
『だまれ!次は俺だ!』
若い方が、俺に向かって片手を向けている、
すると、魔法障壁の表面で炎が上がった。
『へ~、これは発火能力ってヤツか、
でも、俺が行ってた世界からすると、
どっちも手品程度の能力だな。』
『お前が行っていた世界とは何だ?』
『教えてあげないよ~。』
『まあ良い、我々の仲間には、頭の中を覗ける者が居るから、
お前を捕まえてから、ゆっくり調べさせてもらうさ。』
『頭覗ける能力者って、博士の部屋で血を噴き出して倒れてるヤツか?
残念だけどヤツはもう使い物にならないと思うぜ。』
『我々の同士に手を出したのか!
どうやら、お前は生かして、ここを出す訳にはいかないようだ。』
『こっちは、お前らの思考を読み終わって、
今まで犯した罪を把握したから、
それを償わせてから、帰ろうと思ってるんだがな。』
『何!お前は同士の様な能力が使えるのか?』
『いいや、同士の様な能力も、だ!』
『ぐぁっ!』
『ぎゃ~~~~っ!』
おれは、エアブレットを使って念動力者を吹き飛ばしてから、
ファイアボールで発火能力者を燃やした。
こいつらは、今まで、お偉いさんの命令だけじゃなくて、
面白半分に人を殺してやがった。
やはり、馬鹿に過ぎた力を与えると、
碌な事にはならない良い見本だ。
一応、言っとくが俺の事じゃないぞ。
俺は博士を担いで施設の外にでると、
警備員だけ建物より出してから、メテオを撃ち込んだ、
警告の意味を持たせる為にも、
日本で使った時の様にシールドは張らずに、
誰でも見られる状況だったから、
こちらが、何時でも好きな場所に隕石を落とせる事を、
分かって貰えただろう。
これだけ力の差を見せておけば、余程の馬鹿じゃなければ、
再び仕掛けては来ないだろう。
俺は博士を担いでから、日本に瞬間移動して、
光さんに任せてきた。
帰ってから説明しなくちゃならないけど、何て説明しよう?
そして、またラスベガスのホテルに瞬間移動してから、
社長に連絡を取った。
「社長、こっちは終わったぜ、
今、光さんに博士を届けてきたところだ。」
「そう、お疲れ様、田中くん、
それにしても、今回は派手にやったわね、
ニュースじゃ、謎の飛行物体が政府施設を直撃で大騒ぎよ、
場所が場所だから、宇宙マニアの間では、
宇宙人の攻撃説が有望視されてるらしいわ。」
「なるほど、突然現れる隕石なんて、普通じゃ考えられないもんな。」
「そう言う事ね。」
「とりあえず、敵さんもジャネットの家族なんかに、
構ってる暇が無くなっただろうから、
普通の生活に戻って貰って良いと思うぜ。」
「そうね、お宅まで御送りしてから、ホテルに戻るわ。」
「了解。」
暫くすると、社長とジャネットが帰って来た。
「社長、お疲れ~。」
「ただいま。」
「タナカ、今回は、とても世話になった、ありがとう。
何か、私が役に立つ事があったら言ってくれれば、
何時でも協力することを約束しよう。」
「ああ、プロのスパイに協力して貰えるのは、
とても助かるな、何かあったら、お願いするよ。」
「OK。」
ジャネットは、何回も礼を言ってから、
家族の元へ帰って行った。
「社長、日本に帰ってから、光さんに何て説明すれば良いかな?」
「博士は、自分が誘拐されたことを分かっているんだから、
普通に、誘拐犯から救出したで良いんじゃないかしら。」
「でも、アメリカから、どうやって連れ帰ったか問題にならないか?」
「ジャネットの話だと、
博士は眠らされて、あの施設に運び込まれたって言ってたから、
アメリカに居た事自体を知らないんじゃないかしら。」
「なるほど、それは言えるな、
日本にある、アメリカの秘密施設って設定で行くか。」
「そうしましょう。」
俺たちは、光さんたちへの説明を考えたので、
ホテルをチェックアウトしてから、
日本の事務所へと瞬間移動した。
光さんの元を訪れて、社長と相談した説明をして、
博士にも、光さんに依頼された探偵だったと明かして、
秘密施設は、後から警察と行ったら、
もぬけの空だったので、
アメリカが手を回したのだろうとの結論で落ち着いたようだ。
「この度は、父を捜し出していただいて、
本当に、ありがとうございました。」
「いえ、博士が無事に帰れて良かったです。」
「君には世話になったな。」
「いえ、光さんの博士を助けたい気持ちが通じたんだと思います。」
「そう言えば、あの施設の時計は、
私の腕時計と全然、時間が違っていたが、
本当に日本だったのかな?」
「!?」
「ははは、良い良い、君のお蔭で助かったのだからね。」
さすが、頭が良い人は、なかなか騙されてくれない様だ、
見逃してくれる様なので、今回は良しとしよう。
これが、今回の事件の顛末だ、
それでは、じゃあ、また。




