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「名刺から、偽の記者の顔は見えた?」
「ああ、今、似顔絵を描くから、
ちょっと待ってくれ。」
ほどなく、似顔絵が完成して、姫花に見せた。
「アジアン・テイストな顔だけど、日本人じゃなさそうね。」
「ああ、最近はハーフっぽい顔立ちの日本人芸能人とかも居るから、
日本人ですと言われたら、そうなのかと思うかもな。」
「そっか~、で、どこに居るか分かった?」
「いや、検索魔法にはヒットしないな、
俺の魔法は、国単位でしか使えないから、
この女性は、今、日本に居ないみたいだ。」
社長の知り合いである、
県警本部の最上警視正から連絡がはいったのは、
大学院を訪れてから5日目のことだった。
城ヶ崎博士の助手を務める、
六花堂さんから、連絡を受けた最上さんは、
大学院に設置されている防犯カメラの画像を入手して、
調べた結果、驚くべき事実が判明したとのことだった。
身分を偽って、博士の元を訪れた女性の正体は、
国籍・本名 不明
コードネーム ジャネット・フジサキ
そのアジア系を思わせる外見から、
主に中央アジアを中心として、
フリーランスでスパイ活動を請け負う人物だったのだ。
日本の刑事機構でも、
入国を確認していなかったので、
入国経路を巡って大騒ぎになっているとのことだ。
「へ~、意外な大物が出てきたな。」
「そうね、このジャネットって人は、
アメリカやヨーロッパ各国の仕事を請け負うことが多いらしいんだけど、
今回、アメリカでの研究発表を終えた直後という、
失踪のタイミングから考えて、
依頼したのはアメリカって可能性が高いわね。」
「そうだな、一度アメリカに行ってみなきゃダメかな?
ところで、アメリカまで調査に行った場合、必要経費って貰えるのか?」
「無理ね、確かな証拠もなしに、海外調査は出来ないわよ。」
「そっか~、じゃあ俺の転移魔法で行くか?」
「その魔法は、外国にも行けるの?」
「ああ、俺が一度行ったことがある場所なら、
距離を関係なしに跳べるんだ。」
「田中くん、アメリカに行ったことあるの?」
「いや、自慢じゃないが、本州から出たのは、
中学校の修学旅行で行った、佐渡島だけだな。」
「高校の時の北海道は、行方不明になって居たしね。」
「ううっ、北海道行きたかった・・・」
「それは置いといて、
じゃあ、どうやってアメリカまで行くの?」
「ああ、ステルス魔法を自分に掛けて、
飛行魔法で飛んでいくんだ、
2時間も飛べば、着くからな。」
「アメリカまで2時間だけで・・・」
「向こうに着いたら、社長を迎えに来るからさ。」
「なんで?
そのまま、田中くんが調査したほうが、無駄が無いんじゃないの?」
「自慢じゃないが、英語がしゃべれん!!」
「ホント、自慢じゃないわね・・・」




