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「初めまして、K&T探偵事務所の香月と申します。
よろしく、お願いします。」
「同じく、田中です。
よろしく、お願いします。」
「城ヶ崎博士の助手を務めている、六花堂です。
よろしく、お願いします。」
六花堂さんは、40歳ぐらいに見える男性で、
痩せた体格でメガネを掛けていて、
見るからに研究畑の人間っぽい人だった。
「私たちは、城ヶ崎博士の、お嬢さんである、
光さんに依頼されて、
博士の失踪事件を調べてるのですが、
光さんは、今回の事件を誘拐と考えられていらっしゃいます。
六花堂さんは、どう思われますか?」
「じつは、私も、そうではないかと考えているんですよ。」
「それは、何故ですか?」
「ええ、博士と最後の会話を交わしたのが、
私なのですが、博士は、『光さんの誕生パーティーがあるから、
早めに切り上げて、帰らなくては。』って、言われていたんです。
そんな、博士が自分から失踪されるとは、考えられません。」
「そうなんですか。
研究関係で問題とかは、無かったんですか?」
「いえ、そちらも順調で、
先日、アメリカで発表された、
研究の途中経過も大いに反響を呼んで、
研究誌などの取材も、たくさん来ていました。」
「ちなみに、どんな研究をされていたんですか?」
「香月さんたちは、人間の脳は、一部の能力しか使われていないのを、
ご存じですか?」
「ええ、何かの本か、テレビで聞いたことがあります。」
「博士の研究は、簡単にいうと、
脳に電気的な刺激を与えることによって、
使われていない部分も活性化させるというもの、
なんですよ。」
「ええ!そんなことが出来るんですか?」
「はい、実際に、実験ではチンパンジーに、
連立方程式を理解させられました。」
「ええ!?それって、大丈夫なんですか?
サルに世界を乗っ取られるなんて事に、なるんじゃ?」
「ハハハハッ!それは映画の話ですよ、
人間の脳の方がキャパシティー的に、
段違いに大きいから、同じ処理を施せば、
人間が常に上位に居られます。」
「なるほど、新人類が生まれるって事か・・・」
「そう言えば、さきほど、
取材の方が、たくさん観得られたって、仰ってましたが、
その際に、何か変わったことがありませんでしたか?」
(なるほど、誘拐だとしたら、何らかの下見をしてると、
考えられるか・・・社長も、なかなか鋭いな。)
「変わったことですか・・・?
ああ、そう言えば、アメリカの有名な研究誌がありまして、
その雑誌の、
日本での窓口になっている所から取材申し込みがあったので、
博士が受けられたのですが、
後日、参考資料を送ろうとして連絡をとったら、
そちらから、取材に訪れたことは無いとの事だったんですよ、
博士も私も、ただの悪戯かと思っていたんですが・・・」
「その人が、置いていった名刺ってありますか?」
「ええ、少々お待ちください・・・・・・
この、名刺なんですが、
名刺自体は本物で、別人の物だったんですよ。」
俺が魔法で読み取ると、映像が浮かんできた。
「取材に来たのは、女性ですか?」
「ええ、よく、お分かりになりましたね、
名刺に神無月 真とあったので、
気付かなかったのですが、
実際の神無月さんは男性だったんですよ。」
俺は、社長に頷いて、
人物が読み取れたと合図した。
「今の話を、警察にも話した方が良いと思いますよ。」
「何故ですか?」
「もし、誘拐事件だとすると、
前もって下調べをしたと思いますので。」
「なるほど!あの女性が関係しているかも知れないって事ですか。」
「そういう事です。」
俺たちは、六花堂さんに、
県警本部の最上警視正の連絡先を教えて、
大学院を後にした。




