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「こんにちは~、田中ですけど、
京子さんの、お見舞いに伺いました。」
インターホンで、要件を告げると、母親の幸子さんが出迎えてくれた。
「田中さん、いらっしゃい、
あら、そちらは?」
「ええ、京子さんの大学の同級生で、御門くんです。」
「こんにちは、御門 響矢です。
こちらを、京子さんへ・・・」
御門くんは、お見舞いに持ってきた花束を、
幸子さんに手渡した。
「あら、きれいな、お花ね、京子も喜ぶと思いますわ、
ありがとうございます。
本人は、今日も大学に行くと言ったんだけど、
あまりにも顔色が悪いから、休ませたのです。」
幸子さんの案内で、京子さんの部屋を訪れた。
コン!コン!
「京子、田中さんたちが、お見舞いに来てくださったわよ。」
幸子さんが、ドアをノックして、京子さんに声を掛けた。
「はい、どうぞ。」
ガチャ、ドアを開けて部屋に入ると、
確かに顔色の悪い京子さんが、ベットで横になっていた。
「みっ、御門くん!?」
お見舞いに来たのが、俺と社長だと思っていたのか、
御門くんが入ってくると、驚いたように、起き上がろうとした。
「あっ、吉雪さん、そのまま寝ていてください。」
御門くんが声をかけると、一瞬の逡巡の後、
素直に横になった。
幸子さんが、お茶を入れて来ると、席を外した隙を見計らって、
京子さんに、今回の事件の、あらましを語った。
「そうだったんですか。」
「御門くんが言っている事を信じるんですか?」
「ええ、御門くんが冗談や、嘘を吐くとは思えないので。」
京子さんは、少し頬を赤らめて言った。
これが、俺だけで来て、同じ話をしたら、
胡散臭そうに見られて、
調査も中止されていただろう・・・チクショウ・・・・。
「でも、私が何かに憑かれているって・・・」
俺は、自分の目に、白魔法をかけた。
「これは・・・犬?・・・いや、狼か?」
「田中さんも霊視えるんですか!?」
御門くんが驚いて声を上げた。
「ああ、御門くんみたいに、
常時、霊視えているわけではないんだけど、
ある方法で霊視る事ができるんだ。」
俺は続けて、浄化の魔法を使って、狼の霊を浄化した。
ついでに、京子さんに回復の魔法も、忘れずに掛けておく。
「驚きました!霊を祓うこともできるんですか!」
「何か、ずっと感じていた倦怠感が無くなりました!」
目に見えて、顔色が良くなった京子さんが、嬉しそうに言った。
「それは、良かったです。
でも、今、祓ったのは影のような物で、
本体は別の場所に居ると思うんだが・・・」
「ええ、僕も、そう思います。
本体の方を、如何にかしないと、
また、やってくると思われます。」
「京子さん、何か霊的なスポットとかに行った覚えがないかな?」
京子さんは、少し考えて、
「いえ、そういった物には、
特別、興味がありませんので、思い当たりません。」
「吉雪さん、最近、山に登ったことは、ないですか?」
「何で、山なんだ?」
「ええ、先ほど田中さんが祓ったモノは、
悪霊というよりも、祟り神のように感じました。
狼は大神と呼ばれて、
山の神として崇められる事が多いんですよ。」
「山登りですか?
確かに私は、大学で、山登りの同好会に入っているので、
たまに、友達とハイキング感覚程度の山に、
登ったりしますけど・・・あっ!そう言えば・・・」
京子さんは、何か思い当たったようだ。




