ケース5 ストーカー事件
K&T探偵事務所の出勤は、朝9時だ。
「おはよう、社長!」
「おはよう、田中くん。」
「そろそろ、新たな事件の匂いがするんだけど・・・」
「いい勘してるわね、新しい事件の依頼が入ってきたわ。」
今回の事件の依頼者は、吉雪 幸子さんという女性で、
一人娘である、19歳で大学生の京子さんが、
最近、何者かに、後を附けまわされていて、
ストレスからか、夜も碌に眠れないようで、
体調も優れず、
日に日に痩せ衰えているとのことだ。
資料として預かった、京子さんの写真を見せてもらうと、
ハッとするような美人で、
確かにストーカーが居ても、おかしくないと感じた。
(くそぉ、こんな美人を苦しめるストーカーめ、
おれが天誅を下してやるから覚悟しやがれ!)
「何か、いつも以上にヤル気を出してない?」
「いえ、気のせいです。」
妙に勘の鋭い社長から、
京子さんの数日分の予定表を受け取って、
早速、調査を開始した。
京子さんが、大学での勉強を終える時間に合わせて、
学校の出口から、少し離れた場所で気配を魔法で消して待つと、
暫くして、写真より少し痩せた京子さんが現われた。
京子さんは、この後、バイトをしている書店へと向かうはずだ、
京子さんが歩き始めて、少しすると、
確かに、一人の男が、京子さんを追うように歩き始めた。
(いやに気配を殺すのが上手いヤツだな・・・
素人じゃないのか?)
そいつは、それほど京子さんから、
離れて歩いているわけでは無いにも関わらず、
時折、後ろを気にして振り返る京子さんに、
気付かれずにいる。
一応、間違えがないように、
その後も、男を観察し続け、
男が、バイトを終えて帰宅した京子さんを、
家まで附けて行ったのを確認してから、声を掛けた。
「そこの、ストーカー君。」
男が驚いたように振り向いた。
男は、細身の180を超えるであろう長身で、
容姿は、少し陰のある感じがする二枚目で、
普通のTシャツにジーンズ姿なのに、モデルのように着こなしている。
(ちくしょう!何だか、とっても、ちくしょうだ!!)
「驚いたな、僕が見えるんですか・・・」
「ああ、普通のやつは、気付けないだろうが、
あいにく、おれは普通じゃないんでね。」
「それで、今のストーカーっていうのは、
僕のことですか?」
「ああ、特定の女性を附けまわすのは、
立派なストーカー行為だと思うんだが・・・」
「彼女の後を附けているのには、理由があるのですが、
それを話して、あなたに信じてもらえるとは思えませんので、
僕は、これで失礼させてもらいます。」
「待て!」
話している内に、男の姿は段々(だんだん)と薄れてきて、
ついには、完全に消え去ってしまった。
一応、魔法で探してみたが、反応は無かった。
(いったい、何者なんだ・・・?)




