ケース4 麻薬密輸事件
K&T探偵事務所は朝9時出勤だ。
「おはよう!社長。」
「おはよう、田中君。
ちょっと、こっちに座ってくれる。」
「おう・・・」
来客用のソファーに促されたので、
社長の正面に腰掛けた。
「じつは、気になることがあって・・・」
「何だ?」
「うちの事務所で扱う事件が、
いやに早く解決しすぎるような気がするのよ。
それも、私が知らないうちに終わってるのよね・・・」
(ついに来たか・・・)
内心では、そう思いつつも、「たまたま、じゃないか?」
と、返してみた。
「田中くん、私に何か隠していること無い?」
「いや、別にないぜ。」
「田中くんが、何でもプロ級にできるのも、
気になるのよね・・・」
「そっ、そこは、ほら、俺って器用なタイプだからさ。」
「そう?私の印象だと、
高校時代の田中くんて、得意な分野はソツ無く熟すけど、
苦手な分野はカナリ不器用だったと思うんだけど。」
「それは、その・・・海外での経験で成長したとか?」
「何で、疑問形なのよ。
その、海外ってのもね・・・何処行ってたんだっけ?」
「え~と、ドバイとか、パリとか、ニューヨークあたり?」
「その、一般人が行きたい観光地ランキングみたいなのも、
いかにも怪しいのよね・・・」
「それは・・・ほら・・・」
プルルルル・・・
俺のギクシャクした答弁は、
電話の着信音に掻き消された。
「はい、K&T探偵事務所です。
はい・・・はい・・・・
そうですか・・・わかりました。
それでは、これから伺います。」
俺は、ホッとしつつ、社長に問いかけた、
「新しい、依頼か?」
「そう、これから、お会いするから、一緒に来てくれる?」
「おう、分かった。」
「それから、さっきの話は、帰ってからジックリと、
聞かせてもらうからね。」
「は・・・はい。」何か、うまい言い訳を考えねば・・・
依頼人は長宗我部沙織さんという女性で、
依頼内容は、沙織さんの旦那で、海外の雑貨を現地で買い付けて、
日本に輸入販売する商売をしている、孝則氏が、
アメリカに行っていた時に、自称芸術家の日系アメリカ人を名乗る男(見た目は、まんま日本人だったそうだ。)に、
自分が制作した作品を日本に運んで欲しいと頼まれたとの事で、
運びたいという作品を見せてもらうと、
小さな部品を大量に組み合わせたようなオブジェが大量にあって、
作品の良し悪しは分からないけど、
これだけの量なら、良い商売になると考えて、引き受けたそうだ、
オブジェをコンテナに運び込むのを確認して、
半金を前払いで受け取って、
残りは日本に付いてから受け取る約束だったそうだが、
日本に着いた段階で、
麻薬密輸の情報が入ったという警察の調べが入った時に、
何故かコンテナの中身が石膏像に変っていて、
像の中から麻薬が見つかったそうだ、
もちろん、自称芸術家は見つからずに、
旦那さんは、未だに勾留されて、
取り調べを受けているそうだ。
沙織さんは、旦那さんの無実を証明するために、
真犯人を見つけて欲しいと語った。
「何か、真犯人の手掛かりになりそうな物は、ありますか?」
「いえ、契約書に拇印が押してあったんですが、
警察で調べたけど、前科は無いとのことでした。」
「荷物の受け取りは来ましたか?」
「いえ、受け取りも、連絡も来ませんでした。」
「麻薬を運ばせて、取に来ないってのも、変な話ですね。」
「ええ、それで警察も主人を疑っているようです。」
「輸入するのに使ったコンテナって、見れますか?」
「ええ、うちの専用コンテナなんですけど、
警察の調査は終わっているので、大丈夫です。」
俺と社長はコンテナを見せてもらう事にした。




