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おまけ 突発イベントのフラグって知らない間に立っている事もあるんですね

行幸とシャルテのいちゃらぶラブコメ? そういう事になるのかな?

 桜がリリアの説明を聞き始め、安堵の表情を浮かべる行幸。

 これで一安心と思っていると、横からシャルテが服をくいっと引っ張った。


「どうしたんだよシャルテ」


 妙にしおらしいシャルテ。


『お前さ、僕やリリア姉ぇがどんだけ苦労してお前を男にしたのか理解してるのか?』

「なんだよそれ?」


 首を傾げる行幸。行幸は男に戻る魔法はそれほど大変な事だとは思っていなかった。

 しかし、現実は違った。

 女として生きてゆく事を決めた行幸は、この世界では完全なる女だ。男じゃない。


 十数年前に起こった天界大事件【男が女になっていきてゆく選択をした事件】

 その大事件で前の天使長はぶっちゃけクビになっていたりした。

 だから小説にもでないんです。

 で、今回の事件。

 【TSしたまま生きてゆく事を決めた人間から生まれた子供がTSしたまま生まれてしまっていた事件】

 これは行幸が女を選んで生きてゆく事を決めたことよりももっと大事件だった。

 親子で大事件をおこすとかどんだけだよ? って突っ込みはありです。


 で、いろいろな事件や問題を経て、桜が女として生きてゆく事を決断させるのに行幸の男性化が必要だという事になり、リリアとシャルテは天界に稟議をあげたのだ。


『一時的とはいえ、行幸を男に戻す魔法を使用する許可を取るのにどんだけ苦労したと思ってるんだ』

「なんだよ? そんなに大変だったのか?」

『当たりまえじゃないか! 女を男にするんだぞ? 今の天界では性転換の魔法は禁止になってるんだからな!』

「なるほど、でも、前は俺を簡単に女にしたよな」


 シャルテが気まずぞうな表情に変化した。


『あ、あれは……反省してる』

「ほほう、具体的にはどの程度の反省なんだ?」

『……げ、原稿用紙1枚?」

「すくなっ! っていうか、なんで原稿用紙!?」

『いや、日本では反省文を原稿用紙に書くって聞いてるから』


 誰にだよ!


「ああ、うん、まぁあるかもだけど……」


 小学校とかならな。


『だ、だよな? じゃあ原稿用紙でいいだろ? 僕はあまりお金も持ってないし』

「天使の癖にお金ないのか?」

『天使は給料ないんだよ!』

「マジカ!」


 とてもどうでも良いやりとりをするシャルテと行幸。

 横では桜が真剣な表情でリリアの話を聞いていた。

 なんだこの温度差。


「で? 苦労したからどうしたんだ? 元に戻れないとかないよな?」

『な、ない! って言うよりも、すぐにでも元に戻さなきゃいけないんだよ』

「ほほう。しかしすぐには戻せないんだよな? 連続使用は禁止されてるんだろ?」

『そうだ。禁止されてる。されてるからあと三時間は元に戻せない。行幸は三時間は男のままなんだ』

「……で?」


 シャルテはキッと行幸を睨んだかと思うと、急に顔を真っ赤にして俯いてしまった。


『く、苦労の代償がほしい』

「代償? 具体的には?」

『……デートをし、し、し、しらないか?』

「知ってるよ? デートはデートだよな?」


 さらに真っ赤になるシャルテ。


『な、なんだその反応は! 「しないか?」の間違いだって気がつけよ!』

「まぁ、そうだと思ったんだけど、でもさ、なんでお礼がシャルテとデートなんだよ?」

『そ、そりゃ……み、行幸が好きだからに決まってるじゃないか……って言わせるなよ!』

「お、お前が勝手に言ってるんだろうが!」


 ストレートな告白に内心は動揺している行幸。顔が赤い。


『あのぉ? お静かに願えますか?』


 で、二人ともリリアに注意されました。

 そして、いつの間にか行幸とシャルテの横に恋次郎の姿。

 恋次郎は眉間にしわを寄せてシャルテと行幸との間に入った。


「おい行幸」

「な、なに?」

「いくら今が男の姿だからって、旦那の前で正々堂々と浮気の話をしないでもらいたいんだが?」

『う、浮気じゃない! 僕は天使だ!』

「うん、大丈夫だよ。私は恋次郎一筋だからさ」


 行幸はにこりと微笑んだ。そして恋次郎は……


「ぅ……なんだか男の顔で言われると気持ちわるい……」


 気持ち悪がっていた。


「ひ、ひどい! 愛する妻が夫一筋だって言ってるのに! その反応ってひどい!」

「すまん、でもやめてくれ。ただの中年のオカマに迫られてるように感じる」


 実の嫁にひどい仕打ちである。だが、今は男だ!


「うぐぐ……なんてひどい夫なの? 浮気してやる!」

「すまん、本気ですまんが、とりあえず女に戻ってからもう一度言ってくれるか? あと、浮気はだめだがデートはしていいから。楽しんで来い」

「待って! それって要するに女に戻るまで戻ってくるな宣言?」

「……み、行幸は可愛いぞ。女だとな」

「そんな事を聞いてないんだけど?」


 ちょっと怒り気味の行幸にまったく視線を合わせられなくなった恋次郎。


「……そうだ! 今日は『あなたの黄金バットでチップイン』の発売日だった! お店に行かないと!」


 結局、いずらくなった恋次郎はあわふたと家を出ていった。

 残されたシャルテと行幸。あとリリアと桜。


「どうやってバットでチップインすんだよ……って聞いた事ねぇよ、そんなゲーム」

『なぁ、行幸、お前の旦那の公認もとれたことし……いいよな?』

「うーん……マジでデートしたいのか?」

『……し、したい』


 もじもじと体を捻るシャルテ。ツインテールが左右に揺れている。

 そして、そんなシャルテが可愛く感じる行幸。

 ちょっと心臓がドキドキして顔も熱くなっていた。

 恋次郎のさっきの酷い反応もあって少し心が揺れたが。


「いや、でもあと二時間ちょっとしかないしさ? デートまではムリじゃないか?」


 だけど思い出す。行幸は男としてシャルテは好きだったはず。

 結局行幸はデートへの踏ん切りがつかない。


 それにもしも、万が一でもシャルテに迫られたら私は……変な妄想が広がる。


 いや、大丈夫だ。今のシャルテはどう見ても15歳くらいだし。

 うん、私にロリ属性はない!


『あ、そうだ……』


 シャルテがぽんっと自分の胸をたたいた。すると……


 ムクムクっと大きくなった(あ、行幸のがじゃないよ?)(耳でもないよ?)


「な、なんだそれ!」

『デートなんだし、やっぱり大人にならなきゃだめだろ? あのままじゃ親子にしか見えない』


 そう、シャルテが大きくなっていた。

 それでも身長は155センチ程度で、Bに届くかどうかのAカップっぽい胸。

 ツインテールは相変わらずだが、顔つきはぐんと大人びている。

 だけど、どう見ても二十代前半。カップルに見えるにはムリがある。


 これは親子でもなくカップルでもなく若い娘との不倫だよな?


 行幸は嫌な汗をいっぱいかいた。


『み、行幸……僕かわいいかな?』


 声質は相変わらずの高いアニメ声。可愛いにも程がある。

 金髪ツインテールが似合う奴なんてそうそういないし。


「かわいいけど……」

『けど?』

「いや、なんでもない」


 お前と歩くと目立ちそうだから嫌だなんて言えなかった。


『とりあえずいこ』

「いや、おい、ちょ、ちょっと待て! 引っ張るな!」

『リリア姉ぇ、いってくるね!』

『あらあら……』

「えっ? お母さん?」


 気がつけば行幸は玄関まで引っ張られていた。


「おい、デートってどこに行くつもりだよ?」

『どこ? どこって……』

「なんだよ! 考えてないのかよ!」

『そ、そういうのは男性が考えるって本に書いてあったし!』

「待てっ! 俺はつい一時間前までは女だっただろうが!」

『そ、そんなの関係ない!』

「ある! ありすぎて困るくらい!」


 で?


 結局はシャルテとデートをする事になった行幸。

 制限時間は女に戻るまでの残り二時間だけ。


『……デートって何すればいいんだ?』

「そこからかよ?」

『いや、お前の旦那からもらったゲームで勉強はしたんだけど……いまいちよくわかんないんだよ』


 ん? 今なんて言った?


「恋次郎からもらった?」

『そう、もらった』

「パソコンゲームを?」

『そうそう、パソコンとかいうゲームだ』

「シャルテ、パソコンはゲームじゃないぞ? って言うか、なんてタイトルのゲームだよ?」

『えっと? 【翼を失った鳥たちのうた】ってゲームかな』


 行幸は思い出していた。シャルテのプレイしたゲームを。

 そう、【翼を失った鳥たちのうた】を。

 それは七年前に出たゲームのタイトルだ。

 一人の天使がメインヒロインでサブヒロインが四人登場するエロゲだ。

 しかし、エロがメインではなく、どちらかと言うとストーリー重視でお涙頂戴系。プレイ時間は50時間程度。

 行幸もプレイした事があるが、メインヒロインである天使のシャルムのストーリーが絶品で続編を望む声が今だにある名作だ。


 いや、待て、でもなんでエロゲでなんだ? それもまったくデートに関係のないゲームで勉強だと?

 あと、なんだかヒロインの名前が似てる気がする……


『人間になったシャルムは一人の男の子と街へと出かけた……』

「えっ?」

『空から見下ろした事しかなかった人間世界はとても新鮮でとても楽しかった。シャルムはいつしか天使に戻りたくないと思いはじめる』


 それってシャルムのストーリーじゃないのか?


『その理由は簡単だった。それは恋をしたから……』


 シャルテが立ち止まった。パチンコ店の前で。うるさいだけで臨場感なんかあったんじゃない。そしてゆっくりと行幸の顔を見上げる。


『初めての恋。初めてのキス。そして初めての……』


 いやいや、それってエロシーン突入の前の!?


『パチンコ』


 それは考えてなかったぁぁぁぁぁ! って、そんなシーンねーよ!


『行幸、チン○したいよ』

「抜けてる! パが抜けてる! パチンコな?」

『あ、そうそれ! ここだよな? 入ろうよ』

「え、えっと? パチンコデートしたいのか?」


 あの会話からまさかパチンコをするはめになるとは……なんだこれ?


『ここに座ろう』


 シャルテが指差したのはペアシートだった。

 最近のパチンコ店はこういうものが設定されている場所もある。

 しかし、なんでパチンコなんだ? まったく意味がわからない。


『どうやってプレイするんだこれ?』

「えっと、そこに現金を入れて玉を買うんだよ」

『現金? 僕はお金は持ってないぞ』

「な、なんだと?」

『だから言ったじゃないか。天使は給料がないんだよ。だから出してくれよ? いいだろ?』


 なんかあざとい……くっそムカツクけど金を出したくなる笑顔だ。


「仕方ないな……」

『みゆきっ、ありがとっ!』

「えっ!? ななななななな」


 シャルテが行幸の腕にぎゅっと抱きついた。

 もにゅんとささやかながら膨らみが存在感を示している。


『で、次はどうするのカナ?』

「どうするって……こうやって玉を買ってだな……」

『スゴーイ! それでここを持つのカナ? ねぇみゆき、これでいいの?』


 あ、あれ? なんだこの違和感。


「そ、そうだよ。それでいい。で、こうやってここを捻ってだな……」

『スゴーイ! いっぱい銀色のが出てるっ! すっごいねーみゆき!』


 そっか、そういう事か!


「おまえ、口調がかわっただろ!」

『どうしたのカナ? 僕は前からこうだよ?』


 なんだこのオカシイ口調は……どっかで聞いた事があるような……あっ!


 行幸は思い出した。この口調のキャラクターを。

 そう、あの有名なゲーム【スモールあくてぃぶ】の小岩井サチの声だ!

 いやいや、あれもエロゲだし、ゲームをかなりプレイしていないとこんな口調を覚えられるはずないよな?

 じゃあ、この金髪ツインテールは【スモールあくてぃぶ】もプレイしてるのか?

 天使の癖してエロゲを二作品もプレイしてんのか?

 もしかするともっとプレイしてるのかもしれない。


『なんかぴかぴかしてるけどこれって当たってるのカナ? ねぇねぇみゆきぃ』


 もにゅもにゅっとわざと行幸の腕に胸を押しあてるシャルテ。

 照れまじりの中にもアピールを頑張るシャルテ。

 これは誰が見てもセックスアピールだ。

 しかし行幸は気がついているのか、鈍化なフリをしているのか、平気そうな顔でパチンコをうっていた。


「それは当たってない」

『じゃあ何でピカピカしてるのカナ?』


 ぐっと顔を寄せるシャルテ。店員がひそひそと指を刺しながら話をしている。


「そ、そういう演出なんだよ」

『へぇ……そうなんだ……でさぁ』

「ん?」

「……何で』

「次はなんの質問だよ?」

『僕のアピールに反応してくれないのカナぁ?』

「えっ?」


 頬を赤く染めてぐいぐいと行幸の顔に寄せるシャルテ。


「ま、待て! ちょっと待って!」

『僕の心臓がこんなにドキドキしてるのに、なんで行幸は平気そうな顔してるのカナ?』


 シャルテはぐっと行幸の手を引っ張ると自分の胸に当てた。

 ドキドキと鼓動が行幸の手に伝わる。


「ば、馬鹿! 私だって……すごいドキドキしてるに決まってるでしょ?」


 いきなり女口調に戻ってしまった行幸。ぶっちゃけきもいがシャルテは気にしない。


「シャルテがおかしな態度を取るから、頑張ってた男口調がうまく話せなくなったし」


 これはシャルテに対する俺は男っぽくないという行幸のアピールだった。

 このアピールでシャルテの気が削げればと考えたのだが……


『いいよ……僕はどんな行幸でも受け入れてあげるカラ』


 シャルテは笑顔で行幸にアピール継続。


 笑顔が眩しい。やばい、シャルテが可愛い……


『ねぇ、パチンコはもういいから行こうよ……』

「い、行こうってどこに?」

『いいからさっ、私についてきて』

「ちょ、ちょっと」


 シャルテに手を引かれるまま、大当り確立70%のスーパーリーチを横目にパチンコ店を飛び出す。

 そしてぐいぐいと引かれてそのまま商店街を抜けた。


『もうすぐだよ』


 そして、たどり着いたのは娘の桜と未來とがもめたホテルの前だった。


「シャ、シャルテ!? な、な、な、えっ? いやいや!」


 躊躇もなく入口をくぐろうとしたシャルテ。

 しかし、ぐっと足に力を込めて行幸はブレーキ。その反動でシャルテが仰け反った。


『なんだよ! いいじゃないか! 僕だってすごく我慢したんだ!』


 シャルテの口調がやっと戻った。しかし、そんなの今は関係ない。


「我慢って言われても、私のせいじゃないでしょ!」


 シャルテは両手を握り締めると大声で言い放った。


『そうだよ! 行幸のせいじゃない! 僕が勝手に行幸を好きになったから悪いんだよ! わかってるよそんなの!』


 気がつけば周囲が人だかりになっている。

 まさか親子で同じ場所で喧嘩するとは作者もびっくり。


「ちょ、ちょっとこっちに来なさいよ!」


 ぐいっとシャルテの手を引っ張ったが、すぐに引き戻された。


『話なら中で聞こうかっ!』


 お前は刑事か、そして中って!?

 しかし、そしてそのままINしてしまった。


「な、なんで入るのよ!」

『お前は僕を馬鹿にしているだろ』

「してないでしょ?」

『いや、してる!』

「どこが?」


 ホテルのロビーで痴話喧嘩をしているオカマとパツキン。に見える二人。


『行幸はいつまでも僕が無知の馬鹿天使だと思ってるだろ』

「思ってないわよ」

『思ってるだろ! だから僕があんなにアピールしたのに気がつかないフリをしたんだ!』

「違うって!」

『だったらもっと真剣になれよ! 僕はもう人間世界に何年もいるんだぞ? もう僕は恋愛に対しても初心じゃない! キスだってセックスだって知っているんだ!』


 シャルテからは想像のできない、まさかの言葉に顔を真っ赤にした行幸。


『お願いだから、お願いだから僕を女にしてくれよ。行幸が結婚してしまった今となっては、僕はそのために堕天しているようなもんなんだ。だから、お願いだからさ……何が起こっても後で僕は何も言わないからさ……』


 ゆっくりとゆっくりとシャルテはホテルの中へと行幸を引っ張ってゆく。


「ダ、ダメだ! う、浮気はダメだからっ!」

『これは浮気じゃない! だって僕は天使だから!』


 その理屈がわからない!


「天使だってシャルテは女の子でしょ! そういう行為をするって事は浮気になるのよ! わかんないの?」

『……行幸、僕が魔法を使えるって知っているか?』

「えっ?」


 行幸は思い出した。堕天使は魔法を使えない。だけど、確かにシャルテは行幸の服装を男ものにした。要するに魔法を使ったのだ。


「そ、それってどういう意味なの?」

『だから、僕は天使なんだよ』

「えっ? えっと?」

『こういう意味だよ!』


 ばっと広がった白い翼。

 頭の上に浮かんだ金色の輪。

 そう、それはまさに天使だった。


「な、なんで? 私を好きで堕天したんだよね? で、魔法も使えなくなったんだよね?」

『僕は確かに堕天した。行幸に恋こがれてね。そして僕は人間になった』

「だよね?」

『僕は人間になっていろいろと恋愛の事を学んだ。リリア姉ぇのサポートで色々な恋愛を見てきたり、ゲームをプレイしたりして学んだ』

「いや、ゲームから学ぶのは……」

『そして僕は恋というものがどういうものなのかを理解したんだ。だから……』


 シャルテが優しく行幸の頬に触れる。


『僕は天使に戻れた……』

「シャルテ……だ、だったら余計にこんなことしちゃダメでしょ!」

『ダメじゃない!』

「って、待ってよ! こんな場所でそんな格好でいたら誰かに見られるでしょ」

『ああ、そうだな。そうしたらまた堕天するかもしれないな』

「あ、あほか! せっかく天使に戻れたのに!」

『だったら早く連れていってよ……』


 シャルテは部屋のいっぱい載った写真を指差した。


「いや、えっと……」


【ブルルルン】


 車が一台ホテルに入ってきた。やばい、これはやばい!


『早くしないと見られちゃうよ?』


 シャルテが笑顔。うん、ほんっと笑顔。悪魔の笑顔。


「ま、まったくもう!」


 そして行幸はついに天使シャルテを個室へ連れ込んでしまった。

 いくら女だった時間が長かったといっても昔は男だ。

 可愛い女の子(天使)とこういう部屋に入れば興奮しない訳がない。


「なにもしないからね!」

『ん?』


 すでにシャルテが裸になってる件。


「うぉぉぉぉぉぉぉい!」


 慌てて行幸がシーツをシャルテに被せた。

 ちなみに翼と輪っかはもうなくなっている。


「な、なんて格好になってんの!」

『裸だけど?』


 まんまである。


「だから、なんで裸になるの? シャルテは裸族なの!?」

『なんでって、今から行幸とセックスするからだよな?』


 ストレートである。初心だと思っていたシャルテがストレートである。


「いやいや、私は合意してないから!」

『あ、そっか、先にお風呂に入らないと汚いよな?』

「そういう意味じゃないからっ」


 しかしシャルテはシーツを脱ぐとそのままお風呂へ一直線。

 もちろんお風呂はガラス張りです。

 見ないように見ないようにって思っても、ついつい見てしまうのは人間の性。

 そして、よく見れば出る所はスタイリッシュ(AorB)に出ていて、腰はきちんとくびれているシャルテ。

 可愛いけど、実はこんなにも綺麗だったと行幸は実感した。

 前に天使になった時とはまったく違う。そしてこっちのシャルテの方が行幸にとってもストライク。


「うぅ!?」


 久しぶりに男性機能が復活してしまった。


「な、なんで私がシャルテの裸なんかで……」


 ここから逃げたい。でも逃げてどうするの?


 処女ではないが童貞でオカマな行幸は激しく動揺していた。

 子供まで生んで、ここで動揺するのが行幸クオリティである。


「て、天使がはじめての相手になる? あっ……そうだ、この展開って……【翼を失った鳥たちのうた】と同じ展開だ!」


 そう、今までの一部の流れが【翼を失った鳥たちのうた】のメインストーリー展開と同じだと行幸が気がついた。


 喧嘩の理由は違うけど、シャルムも主人公と関係を持ちたくってホテルの前で喧嘩をした。

 そしてそのままホテルのロビーへ

 そこで翼を広げて『私を連れ込まないと誰かに見られちゃうよ?』なんて脅された主人公。

 その挙句、最終的には個室に連れ込まれて……いきなり裸になって……


 行幸の脳内で【翼を失った鳥たちのうた】のエッチシーンが再現された。

 そう、再現できる程に覚えているシーンだったのだ。

 まぁ、プレイしたのは女だった時なんだけどね。


「関係を持った……」


 行幸はベッドに座って頭を抱えた。


「ま、まさか正夢? ううん、正ゲーム? ……な、なんかホモゲームのタイトルみたいになっちゃった」


【バタン】


 はっと顔を上げた。目の前には綺麗な肌を露出したシャルテの姿があった。

 腕と手で大事な部分は隠している。まさに深夜アニメのためにあるような姿勢だ。

 頬がほんのりと赤みを帯びている。

 行幸は思わず唾を飲んだ。


『……』


 スタスタっとそのまま行幸の前に歩み寄るシャルテ。そして……


『これが私の本当の姿だよ……よく見ておいてね……』


 ゲームのまんまの台詞。

 バッと翼が広がった。天使の輪が再び現れた。


「綺麗だ……」


 本当に綺麗だった。神々しいとはまさにこの事を言うのだろうか?

 天使だけど神々しいはないのか? だったら天々しい? ないないそんな言葉。

 っと、そんなナレーションなんて関係なく、行幸は思わず見とれてしまう。


『あ、ありがとう……』


 そしてシャルテはベッドに座っている行幸の手を引き立たせた。

 あ、変な場所じゃないよ?


「シャルテ……」

『行幸……大好きだよ……』


 もうここまで来たらどうしようもなかった。ここまできて受け入れないなんて考えられなかった。

 だって、行幸はシャルテも、シャルテも、シャルテも、重要なのは『も』ですよ? そう、行幸はシャルテ【も】好きだった。


「私……いや、俺も好きだよ……」


 恋次郎ごめん……


 自然と唇と唇が触れ合う。そしてそのまま抱き合いベッドへ……


『ん?』

「あれ?」


 倒れたら行幸が元の姿に戻った。


『戻った?』

「みたい……」


 焦って立ち上がるシャルテ。


『これって時限式魔法じゃないか!? リリア姉ぇの仕業だっ!』

「なんで女に戻ってるんだ!? えっ? ここで戻るの?」

『うぐぐぐぐ……僕の初めてが……うううううううう……あとちょっとだったのに!』


 いきなり怒りに満ちた表情になるシャルテ。


『リリア姉ぇ! ゆるすまじ!』


 しかし、全裸でそう言われても迫力がない。


「シャルテ、とりあえず服を着ない? もうエッチとかムリだしさ」

『うぐぐ……や、やだっ! そんなのやだっ!』

「えっ?」

『僕は行幸の弱い部分は把握してるからっ! 大丈夫任せて!』

「うおい!」


 そのまま行幸はベッドに仰向けに押し倒された。

 ここで思い出す。以前シャルテに襲われたあの日を。


「いや、待って! ちょっと待って! もういいから!」

『待たない! 脱がす! 魔法で脱がす!』


 頑張って脱がされないように服を抑えていた行幸だが、魔法の前には意味がない。

 あっと言う間にすっぽぽぽぽーーーーん!

 ACのCMが今は懐かしいねっ!

 はい行幸はすっぽんぽんになりました!


「きゃあああああ!」

『ちなみに僕は女の子には興味はないから!』


 と言いながら行幸の裸を凝視するシャルテ。


「説得力がなさすぎる!」

『あらあら……』


 と、ここでもう一人の天使が登場した。


『シャルテ? いったい何をしているのですか?』

『リ、リリア姉ぇ!?』


 バッと行幸から飛び退いて正座したシャルテ。

 そしていつの間にか服を着ているジャマイカ!


「シャルテ! 私だけ裸のままとか酷すぎる!」

『行幸さんなのでOKです』

「リリアまでっ!」


 そんなこんなで休憩の二時間をフルにシャルテのお説教に使いました。

 シャルテは最後には涙目でしぼんでしまった。とは言っても元の幼女っぽいツインテールに戻っただけ。

 そしてまたしても堕天使になってしまった。

 シャルテもせっかく天使に戻ったのに何やってんの!


『では、いきますよ?』

『はい……』

「ふう……」


 休憩時間も終わり、徒歩でホテルから女性が三人も出てくる。

 もちろん、人気がない場所ではないのでいっぱい見られてしまた。


 ああ、周囲の目が痛い。でも、なんでリリアまで徒歩なの!? あと、何で人間に見えてるの!? これって一種のいじめ?


 そんなこんなで自宅まであと少しのところまで戻ってきた三人。


『行幸さん』


 リリアがいきなり立ち止まった。


「はい……なんでしょうか?」


 行幸はぐったりと疲れきって、他人行儀な反応をしてしまう。


『ご相談があるのですが』

「相談?」

『ええと、私もやってみたいんですが』

「な、なにをでしょうか?」


 まさかエッチ? ないよな?


『はい、行幸さんの想像しているような事ではありません』


 ああ、リリアには心を読まれるんだった!


『あれですよ、ええと、そう! チン○がしたいんです!』


【ガンッ】


 そのまま行幸が電柱にダイレクトヘディング。ゴーーール!


『行幸さん、大丈夫ですか?』

「痛たたた……大丈夫じゃない! 色々な意味で!」

『大げさな……そんなの大丈夫だろ? でも……なんでリリア姉ぇまでチン○したいんだよ?』

『ええと、少しばかし興味がありまして……』


 ああ、人の目が痛いよっ! 痛すぎるよ!

 どんだけ卑猥な姉妹なんだよ!って思われるような会話をしないでよ!


『わ、私は卑猥ではありません! ちょっとエッチなだけです!』


 って、だから心の声に反応しないでっ! さっきの言動から繋げるともっと卑猥に聞こえるからっ!


『ぼ、僕も卑猥じゃないからな? 卑猥になるのは行幸にだけだ!』


 ここで変な宣言するなぁ! 顔まで赤らめるなっ! もうやだよ……うわーーーーん!


『行幸さん、もしよかったら今日、チン○しましょう』

『行幸、僕ももう一回だけ行幸とチン○したいな』

「お、お前ら姉妹はもう黙っていいからっ!」


 真っ赤になって両手で顔を覆う行幸。

 そんな行幸を見て笑顔でと見合うシャルテとリリアだった。


(行幸さん、からかっちゃってごめんなさいね。てへ)


 終わり

皆さん、インフルエンザは大丈夫ですか?(今は2月)

私はすこぶる体調不良です!(ダメじゃん)

ええと、『どうしてこうなるんだ!!』も完全に完結となりました。

もしも女として生きたて子供までTSしてたらというIFストーリなんですが、生まれた時からTSだったという脳内妄想を小説化してみたのがこれです。

最後のおまけはシャルテと行幸のいちゃらぶラブコメで桜はほぼ関わらないものです。

本当は『どうしてこうなるんだ!』の読者の方に読んで貰えると嬉しいのですがね。そういう寄りで執筆しましたので。

話は変わりますが、私はシャルテもリリアも好きなんです。

だからというか、どうしてもシャルテと行幸をデートさせたかったんですよね。それもコメディーなのりで。

どうでしょう? ちょっとは笑えましたか? あ、寒かった? ごめんなさい。

そして、今度はリリアと行幸のイチャラブもしてみたいのですが需要ってあるのでしょうか?

そんなこんなで『どうしてこうなるんだ!』シリーズはとりあえず完結です。

本当に短い小説なのに長い間お付き合いを頂きありがとうございました!

また別作品で宜しくお願いします!

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