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027 私の決断

コメディーじゃなくなっているかも!?

 私の名前は茨木桜。今年で十八歳になります。

 私は女の子ですが、色々な諸事情があって男の子の姿で生まれました。そして男の子として十八年を過ごしました。

 そして、十八歳の誕生日に女の子に元の女の子に戻りました。


 まるでゲームやアニメや小説の世界でしかありえないような現実。

 もしかして私は夢を見ているのかって思ったけ時期もあったけど、でも違いました。

 そう、私はすべてを思い出したのです。


「最低だ……ってか、最低だよこれ!」

「うん、お母さんは最低の母親ね……」

「マジで最低だよ! 男の格好でその口調って気持ち悪いからやめてよ!」

「でも仕方ないでしょ? 容姿を変化させる魔法の連続使用は禁止されてるらしいから、お母さんが元のお母さんに戻るにはあと三時間ほど待つ必要があるの」

「なんなの、そのとって付けたようなルール! それに口調とは関係ないよね?」

「桜さん落ち着いてください。あなたの母親は立派な変態なんですから」


 笑顔でフォローするリリアさん。だけど、フォローになってないよ!


「でも、後悔してない? 記憶を戻した事を」


 そして母さんもスルーなんですか? ってまぁいいけど。


「そんなの今更でしょ? 私の記憶が戻った後でそんな事を言っても仕方ないでしょ? それにちゃんと覚悟はして戻してもらってるよ」


 先にも説明したけど、私は記憶を戻してもらった。

 全世界の記憶を戻すのは無理だったようだけど、今の私の記憶は完全に戻っている。


「そうよね~桜が何も考えないなんてないわよね~」

「だから、その口調は気持ち悪いからっ! そしてその服もっ! あのね、せめてその服装はやめてくれない?」

「ん? じゃあお母さんが男性の格好で男言葉で話しても許すの?」

「い、いいって言わないけど、でも仕方ないでしょ? その姿があまりに気持ち悪いんだもん。本当に女装が似合う男子だったらいいけど、マジリアルで普通に男じゃん! 中年じゃん!」


 お母さんは完璧な中年男子になっていた。

 だけどまぁ見た目が悪い訳じゃない。引き締まった体がちょっとだけ格好いいなんて思う。

 目も前にして思うのもおかしいけど、でもお母さんが男だったなんて今でも信じたくないのが本音だ。


「大丈夫だ! 桜を生んだ時にはちゃんと女だった!」

「そういう問題じゃなくって!」


 ここで金髪の、そう、シャルテが母さんのボディーに一撃を加えた。


「この変態っ! 本当にその格好は変態だから早く着替えろ!」

「シャ、シャルテ……言葉を先にしろ。手を出してから言うな」


 腹をかかえて母さんは両膝をついた。


「し、仕方ないから魔法で着替えさせてやるよ……」


 すると、次の瞬間、母さんが男になった。いや、オカマが男らしい格好になっただけでした。しかし、革ジャンとはワイルドだね。


「あらあら、それはシャルテの趣味ですか?」


 リリアの笑顔の突っ込みに真っ赤になるシャルテ。いや、うん、マジであんたは母さんが好きなんだね?


 あ、そうそう、私の口調が女してるけど、これはわざとです。

 実は俺様言葉だって思い出しているし、俺とか言える。

 だけど、俺はそれでも女で生きてゆくって決めたから。

 だから俺は、いや私は女らしくしようって思ったんです。


「桜さん?」


 ふと気がつけば横にリリアさんがいた。

 光る天使の輪に白いワンピースに綺麗な翼。本気で美しい天使だ。そして今日の下着は白だ。


「あなたに対する世界の人々が記憶が改竄されてしまっているのはとてもつらい事だと思います。ですが……」

「それは大丈夫です!」


 心配してくれる天使のリリアさん。私はリリアさんが話しを終える前に元気に言い切った。

 少し驚いた表情のリリアさん。そしてニコリと微笑んでくれる。


「そうですね、あなたならば大丈夫だと思います」


 次にリリアさんが視線を母さんに向けた。


「だって貴女は……」


 私も視線を母さんに向ける。


「行幸さんは過去に普通では考えられない辛い選択肢を選びました。そして今があります。桜さんのいる未来があったのです」

「……はい」

「貴女のお母さんは本当に不思議な人ですよね。普通であれば絶対に選ぶ事のないBADエンドを選んだのですから」

「BADエンド……ですか?」

「あ、すみません……別に変な意味ではありませんよ?」


 でも普通に考えればお母さんの選んだ選択肢はBADENDなのかもしれない。

 男が女にされて、最終的に女として生きる人生。普通なら選ばない。

 だって、私と違ってお母さんは最初から女じゃなかったんだから。


「行幸さんに好意を向けるヒロインはたくさんいました。幸桜こはるさん、すみれさん、シャルテ、そして……たくさんいるヒロインから一人を選ばずに、最終的にはMOBキャラである店長さんを選んだ」


 お、親父! あんたMOBキャラだったのっ!


「だけど、今の行幸さんは本当に幸せそうです」


 リリアさんの笑顔が輝いていた。まるで天使みたいな笑顔で私を見た。って天使だった。


「だって、こんなに素敵なお嬢さんが、あなたが生まれてきたのですから」


 カーッと頭に血が上る。はずかしい。すっごくはずかしい。


「ここで桜さんに言っておきますね」

「は、はい?」

「貴女にも女性としての恋愛選択肢はやってきます」

「わ、私が恋愛?」


 私に彼氏ができるなんて想像すらしていなかった。


「そう、桜さんも恋愛をするのです。私は恋愛の天使ですのでわかります」

「リ、リリアさんって恋愛の天使だったんですか?」

「そうですよ? そして、あなたにもいくつかの選択肢が現れます。そこできちんとした選択をすれば、きっとあなたも女性としての幸せを掴めます。あ、男に戻るとかそういう展開はないですよ?」

「私が女性として幸せ……って、ここで男に戻るとかあったら私の覚悟はどうなるんですか」

「ですよね? でも安心してください。貴女は女性でずっと女性もまま生活をするのです」


 そっか、うん。私は女性として生きてゆく覚悟をしてたけど、こうハッキリ言われると覚悟がもっとしっかりできる。

 女性にとっての幸せはまだ想像できないけど、でも、私もいつか真剣に恋に向き合う時がくるんだ。……だけど。


「あ、あの……質問があるのですが」

「なんでしょうか? ああ、なぜわざわざ全世界の記憶を改竄かいざんしたのかですか?」

「えっ?」


 まだ何も言ってないのになんでわかるの?


「あら、何で考えている内容がわかるの? ですか?」


 私は汗をかきまくっていた。考えていたまんまだったからだ。

 私の考えている内容がリリアさんには筒抜けってどういう事。


「だって、私は天使ですよ♪」

「そ、それって?」

「教えていませんでしたが、私は人が考えている事がわかるのです」


 人の考えがわかる!?

 な、なんていうチート能力だ!


「あらら、桜さんはお母さんと一緒の事を考えるのですね」

「えっ!?」


 私はイケメンとは言えないが、そこそこ見栄えのある革ジャンの格好をした母さん(現在は男)を見た。


「私は行幸さんによくお前の能力はチート性能だとか言われました」

「ま、まあ現実に私もそう思います」

「ですが仕方ないのです。人はなかなか本音を話してくれません。それどころか、私たち天使は人前に出てはいけないので質問をできません」


 いや、今ここに出てるじゃん。


「はい、特別です。ですが内緒ですよ? 私たち天使の存在を暴露したら貴女を天使にしちゃいますよ?」

「どっかのアトラクションの脅しみたいですね」


 天使のリリアさん。綺麗な顔をしているけど人の心を読める天使。

 すごいと言うよりも正直怖かった。だって心までは隠せないから。


「そんなに怯えなくても大丈夫ですよ?」

「す、すみません」


 また心を読まれた。

 でも、そんな天使と母さんはずっと一緒だったんだよね?


「もしかして私は桜さんに怖がられているのでしょうか?」

「い、いえ……」

「そうですよね、貴女は行幸さんじゃないですし、普通であれば心を読むなんて本当に怖い能力ですよね」

「すみません……」

「謝らなくても大丈夫ですよ?」

「はい……」


 ここで脇の方から声が聞こえた。

 見ればシャルテが赤い顔で母さんに詰め寄っている。


「お、男に戻るまで少し時間があるみたいだし、あれだぞ? 特別に僕と一緒にお買い物に出てもいいんだぞ?」

「いや、遠慮しておこうかな」

「な、何で? どうせ時間があるんだろ? そこを有効に使おうとか思わないのかよ!」

「なんでシャルテとデートするのが有効な時間の使い方なんだ?」

「デ、デートなんて言ってないじゃないか!」


 視線を戻せばリリアさんが苦笑していた。


「まったく……シャルテは本当に行幸さんが好きなんだから」

「そうですね……でもいいんですか? シャルテさんも天使なんでしょ?」

「あはは……そうなんですが、人間に恋をしてしまって今は堕天しているんですよね」


 ああ、だから天使の羽根とかないんだ。


「ではシャルテが行幸さんを強引にデートに連れ出す前に説明を終わらせてしまいましょう」

「ですね……」

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