000 プロローグ
(これからは作者の戯言)
性転換から始まる修羅場。
そう、世の中は修羅場が一番面白いと思うんです。
と言う事で……一人の男子高校生を主人公にした性転換ラブコメディーがここにスタートです!
……これって前書きに書く内容なのかな!?
おい……
朝起きてみたら女になっていたなんてあり得る事なのか?
いくら男と女の体の仕組みが基本同じようなものだとしても、急に男から女になるなんてありえるのか?
いやいや、小説や漫画じゃないんだぞ?
アニメやSF作品でもないんだぞ?
MMOでもブラウザゲームでも無いんだぞ?
要するに今俺たちが暮らす世界の話なんだぞ?
……しかし、どう見ても昨日の俺じゃない……
も、もしかして、寝ている間に改造されたのか?
いや、そんな事をされたら普通の奴なら絶対に気がつくよな?
それに、ここは俺の部屋だぞ?
そうだ、そんな事は絶対にありえない!
仮面○イダーじゃあるまいし、何が改造だ。
……とは言ったものの……
パジャマ越しに膨らんだ異物を揉んでみるが、どう揉んでも本物だった。
いた、俺は別に誰かの胸部の脂肪を揉んだ事はないぞ?
こう見えてもまだチェリーボーイだ!
……威張れないけど。ってそんな話はどうでも良かったな。
……やっぱわかんねぇ!
なんの理屈で俺が女になってる!?
☆★☆★☆★☆★
やばい程に火照る体(性的意味じゃなく)
やばい程に流れる汗(主に油系)
やばい程に激しく鼓動する心臓(興奮じゃなくって動揺してだぞ)
「あ、あ~」
声まで女だ。
声まで女だ。
大事じゃないけど二度言った。
……よく考えろ。
どうしてこうなったのかを。
昨日やった事を思い出せ。
昨日……ゲームして、漫画呼んで、彼女とメールして……風呂入って寝た。
……なんも変なとこねぇし!
も、もしかして、元から俺は女だったとか?
某漫画みたく、女だったのに昨日までは男の記憶を植え付けられていたとか?
なんてありえねぇ……そうだったとしても、ここまで体型が変わるなんてない。
それに、胸は一日にしてならず!
いきなり膨らむとか風船かよって事だ。
じゃあ……何故だ!?
や、やっぱりこれは夢なのか?
いやいや、こんなに鮮明な夢なんてあるはずない。
「マジ……どうしてこうなった!?」
いま俺はベッドから起き上がれないでいる。
そう、昨日まで男だった俺が18歳の誕生日の朝に女になっていたのだ。
☆★☆★☆★☆★
少し時間は遡り昨日。
「明日は7月7日、桜の誕生日だね。桜ももう18歳だなんてお母さん感動だわ」
とても可愛らしい声が俺の耳に入ってきた。
振り返れば、まるでアイドルのような可愛くって愛くるしい笑顔の母さんが立っている。
「何が感動なんだよ。歳をとったらどうやったって18になるだろ」
「そりゃそうだけど」
先ほども説明したが、俺の母さんはすごく可愛い。
肌もすべすべだし、出るとこ出てて引っ込んでるとこは引っ込んでる。
そして、可愛いけれど美人ではない所が味噌だ。
なんていうか、なでなでしたくなるような小動物系の可愛らしさを持っているのが母さんなんだ。
そんな母さんは29歳で俺を生んだらしい。
と言う事は、今の年齢は47歳のはずだ。
だけど、どう見ても30台前半にしか見えない。
えっと、実の息子の俺ですら、風呂上がりの母さんの裸を間違って見てしまった時にはドキッとする程スタイルもいい。
あ、ちなみに間違って見たのであって故意じゃないからな?
「どうしたの?」
「あ、いや、なんでもない」
しっかし、マジでまるでアニメキャラみたいなつぶらな瞳だよな。
こんな母さんは、友達からも羨ましがられる存在であり、俺の自慢だった。
「桜ももう18か、じゃあ誕生日祝いはゲームだな」
ドアが開く音と同時に重低音と言っても過言じゃない声が聞こえた。
そう、この声の持ち主は親父だ。
昔はアメフトをやっていたらしく体格はすさまじく良すぎる。
ロープレで母さんが魔法使いや僧侶なら、親父は格闘家だ。
そんな親父に俺は喧嘩で絶対に勝てない。
もう、なんていうか、要するに筋肉馬鹿だから。
「ゲームって何だよ?」
「ん? そんなのうちの店の扱ってるものに決まってるだろ」
店、そう、俺の親父はパーツショップだが、半分はエロゲショップだったりする。そしてそこの店のオーナーだったりする。
しかし、なんでその体型でエロゲなんだよ。親父がエロゲしてるの想像したくねぇし!
もう、何度それで突っ込んだかは憶えていない。
「そっか、もうR指定もプレイ出来るもんね♪」
「母さん、なんで楽しそうなんだよ」
そして、この可愛いけどちょっとずれた母さんがこんな親父と結婚したんだろう? と疑問が沸きまくる。
俺の七不思議の一つだ。
しかし、まだ七つなんて不思議はないんだけどな。
よって現在不思議募集中だ。
「親父、エロゲなんていらないからな?」
「じゃあ春アニメのブルーレイボックスセットがいいのか? しかし、ブルーレイのセットだと下手をすれば10万だしな。やっぱり駄目だ」
「誰もアニメがいいとか言ってねぇだろ!」
「ん? じゃあ何がいい?」
「もう18歳なんだぞ? 18歳っぽいのをくれよ」
「18禁っぽいもの? じゃあエロ本?」
「違う! 18歳っぽいもの! エロ本も却下!」
「ふむ……まったく……贅沢言いやがって」
俺は一つでも贅沢を言っただろうか?
まったくもってそんな記憶はないのだが……
そして、親父は眉間にシワを寄せて考えた末にリビングから出ていった。
「なぁ母さん、なんであんなのと結婚したんだよ?」
「えっ? なんでパパと結婚したのかって?」
「そうだよ。母さんはあれだ、結構可愛いしさ、親父以外にも好きになってくれた奴もいたんじゃないのか?」
「そうね、うん、確かにいたわね」
「だろ?」
なのにあれを選ぶとは趣味が悪い。
「そうね、私に好意を抱いていたのは……菫に幸桜にシャルテに……あとは……」
指折りどう聞いても女の名前を羅列し始めた母さん。だけどちょっとまて!
「いや、母さん、それって全員が女だよな? 菫ってあの菫さんだよな? 幸桜って母さんの妹の幸桜おばさんか? あ、シャルテって誰だよ? 外人か?」
まさか、母さんって百合属性だったのか?
でも親父と結婚してるし……。
「母さん、GL好きか?」
「好きじゃないわよ?」
うん、なんだかな。
「あれよ、私も色々あったのよ」
「色々って……何だよ」
「とりあえず、男性で好きになったのはパパだけだからさ」
「含みを持ってるぞ、その台詞。じゃあやっぱり女が好きだったんじゃないのか?」
「そうね、嫌いじゃなかったかな」
なぜこれでGL嫌いなんだ?
もしや見るのは嫌いだけど百合百合するのは好きとか!?
「桜」
「な、なんだよ」
「そんなに母さんの秘密が知りたいの?」
何か納得いかないが、これ以上追求すると駄目な気がしたので止めた。
「桜、待たせたな」
そこへ親父が戻ってきた。
手に持っているのはどう見てもエロゲだろ。
「18歳といえばR18指定だよな」
「どうしてそうなる!」
「どうしてって……どうしてもそうなるだろ?」
そのガタイで、どうしてそういう言葉を放つんだよ!
実の息子にエロゲを与えようとするのもおかしい!
「そうね、これからはR18指定が正々堂々と買えるわね」
母さんまで何を言ってるんだよ!
「待った、俺はそれはいらないからな!」
「何でだ? これは1000本しか生産していない限定仕様なんだぞ」
「そういう問題じゃない!」
すると、母さんがいきなりそのR18指定ソフトを親父から取り上げた。
「やっぱり駄目です」
「行幸? なんでだよ」
「ほらみろ、母さんだって俺にそんなもんあげるなって言ってるだろ」
「だって、まだ17歳です。18歳になるのはあと2時間後です」
そっちかー!
「18歳になったらあげましょう」
そうか、母さんもちょっとオカシイ考えの人だったんだ。
母さんは可愛いのになんか女っぽくないというか、たまに男らしい考えをすると言うか……。
生まれもっての性格なんだと思うけど。
「いやいや、俺はいらない。そういうのいらないからな?」
そして俺は何事もなく部屋に戻りベッドで眠ったはずなんだ。
なのに……どうしてこうなるんだ!!
女? 何で女? 俺が女? いやいや……。
でもどうする?
やばいやばいやばいやばいだろ?
こんなの母さんに見られたら? 父さんに見られたら? 何て言い訳すればいいんだよ?
さっき全身を確認した時は間違いなく女になってよな。
あれもないし、胸あるし、つまんだら……。
「うあぁぁぁ!」
いかん、いかんぞ。卑猥な事を考えてる暇はない。
そうだ、鏡だ……顔はどうなんだ?
部屋の隅に見えている姿見の前に俺は移動する。
そして全身を写したら思わず驚いてしまった。
鏡を見たら結構かわいかった。
いやいや、なんでこんなに可愛くなるんだよ!
前の面影があったまま女性化とか考えたけど、まったく別人じゃん!
『ドンドン』
ドアのノック音が部屋に響いた。
やばい、母さんだ!
「桜? 朝よ? 起きてる?」
「か……!」
そうだ! 今の俺は女なんだ。返事もできねぇ!
「桜? 入るわよ?」
やばい! ドアを押さえないと! と思ったら、もう遅かった……。
ドアは凄まじいスピードで開き、エプロン姿の母さんが入ってきた。
俺はただ顔を引きつらせて母さんの顔を見るしかなかった。
終わったな……。
なんかわかんねぇけど終わったよ!
俺はそのままUターンしてベッドへ飛び込んだ。
「さ、桜?」
マジでもう終わった。
いきなり女になって、容姿まで別人になった。
今の俺を見ても母さんは息子の桜だって信じるはずがない。
息子の部屋にいる知らない女扱いになるはずだ。
このまま警察に付き出されて、俺は一生を刑務所で過ごすんだ。
そんな事を考えていたらバサッと布団を取られた。
「桜? じゃない……誰?」
「母さん、信じられないと思うけどさ、桜だよ……起きたら女になってたんだ……」
もう言っても無駄なのに。でも言わずにはいられない。
母さんに黙ってるなんて出来ない。信じてくれないのは解ってる。
「あはは、男が女になるなんてありえないよな? そんなの信じられないよな? でも嘘じゃないんだよ……」
すると、ベッドがもこりと動いた。
母さんが俺の傍に座った。
俺はそっと顔を上げると、そこにはいつもの優しい母さんがいた。
俺を見て疑う事もなく、ニコリと微笑んでいる。
「母さん? まさか信じてくれるのか?」
「桜なのよね?」
「うん」
「じゃあ、信じる前にちょっと質問していい?」
「うん……」
「桜はネットゲームでネカマしたの?」
「えっ? なにそれ?」
「あ、うん、気にしないでいいわ」
「えっと……」
「じゃあ、何もしていないのに女の子になったのね?」
「うん、朝起きたら女になってたんだ」
「そっか……」
その瞬間、母さんの表情が鬼の形相に変化した。
そして、立ちあがったかと思うと天井に向かって怒鳴り始めた。
「おい! リリア! シャルテ! どっちでもいい! 降りて来い!」
いつもの優しい口調の母さんじゃない。
たまに親父と喧嘩をするけど、その時の男口調の母さんだ。
「おい! リリア! シャルテ! 聞こえてるんだろ!? 無視か! 無視かよ! ふざけるなよ? 俺の桜を女にしたのはお前らだろ! 降りてこい!」
天井から人が降りてくるなんてありえない。
なのに母さんは天井に向かってリリアとシャルテという奴を呼んでいる。
俺が女になったショックで狂ったのか!?
「母さん、何してんだよ? 天井に向かって叫んでも仕方ないだろ?」
「大丈夫よ? 桜はそこに座っていなさい」
ニコリと微笑む母さん。でも笑ってないってわかる。
「リリアぁぁぁ! 出てこいっ!」
母さんの顔が真っ赤だ。
「だから母さん、どこに向かって叫んでるんだよ?」
「えっ? うん、ちょっと天界に向かってね」
「天界ってなんだよ!?」
「ええと、天使がいるとこ」
やばい、母さんが狂った。そう思った瞬間だった。
天井の方がやたらと光、そして次には天井から足先が現れた。
「あ、足が!?」
「やっと来たか」
足先はゆっくりと天井から下がってくる。
次に足首、太股、腰、胸、全身が現れた。
俺はその現れた人型のものを見て声を失った。
「行幸さん、こんな朝から何でしょうか? 18年ぶりに呼ばれたと思ったら、いきなり怒鳴るなんて酷いではないですよ」
頭上に光輝く輪っかを乗せ、背中には真っ白は翼を生やし、白いローブを身に纏った女性は、まるで母さんを知り合いかのように声をかけている。
いや、この感じは……知り合いなのか?
「リリア、久しぶりだな」
「行幸さんこそ、お元気でした?」
「まぁ、元気だ」
「で、何の用事でしょうか?」
母さんが俺を指差した。
「この子は桜っていうんだ」
「あら? ああ、18年前に生まれたあの子ですね♪」
「そう、18年前に生まれた子供だよ」
「そうですか♪ 大きくなりましたね」
まるで天使のような女性が俺を見て微笑んでいる。
「立派な娘さんに育ったみたいですね」
母さんの顔が歪んだ。
「こいつは俺の息子なんだけど?」
「えっ!? 息子さんですか?」
リリアと呼ばれた天使みたいな女性は口を右手で押さえながら驚いている。
「ちょっと変わった趣味に走ったのですか? 確かに似合ってますが……」
「違う! そうじゃない! 女装と勘違いすんな! こいつは男から女になったんだよ!」
「えっ!?」
「なんだ? お前が桜を女にしたんじゃないのか?」
「はい。私は何もしていませんが」
「じゃあ、誰だよ? シャルテか?」
俺の目の前で母さんが天使っぽい奴と普通に話しをする光景。
珍なんとかに投稿できるレベルじゃないのかこれ?
「いえ、あの子がこんな事をするはずはありません。あの子は堕天して地上におりますし、もししたのなら私が気が付くはずです」
「じゃあ、天使長かよ? 確か俺の時もそうだよな。天使長が女にしたんだもんな?」
「それはあの時だけです。天使長は恋愛を司る天使なのです。無意味に誰かを女性にするなど絶対にありえませんし、だいたい私たち天使はもう誰かの性別を変えたりなんてしませんし」
「……じゃあ、何で女になったんだ?」
「私にもさっぱりです」
なんかよくわからない会話が繰り広げられているな。
でも、キニナル言葉がいっぱいあった。
だけど、こいつってやっぱり天使なのか?
見た目は天使だけど、本物の天使なのか?
天使ってこんなに簡単に見られるもんなのか?
あと、母さん、聞き間違えじゃなかったらだけど、母さんの時ってどういう意味だ? 母さんももしかして、元が男とか?
あはは、ないよな?
俺の背中を冷たいものが流れ落ちた。
心臓がやたらと煩く鼓動をする。
母さんが元は男? 男……俺って母さんの子供?
男から……生まれた?
いやいやいやいや、ないない!
男が俺を生めるはずない!
「俺の時は天罰とかで女にされただろ? でも桜はゲームでネカマなんてしてないし、彼女だっているし、意味がわかんねぇんだよなぁ」
「行幸さん」
「ん?」
「行幸さんが、元々男性だったと……桜さんはご存じなのでしょうか?」
天使? の表情が引きつってる。俺ももちろん聞き逃してない。
うん、もう信じたくねぇ! けどはっきり聞こえたぁぁぁ!
「……さ、桜? 今のは聞かなかった事にしような?」
「無理だ……」
俺は両手で顔を覆った。
そしてその後。
信じられない事実が判明した。
そう、俺の母さんは元は男だったという事実だ。
母さんはとある事情で男から女にされたらしい。
そして、男に【もどらず】。ここ重要ね。
男に【もどらず】。大事だから2回書いたんだぞ?
そのまま親父と恋仲になったらしい。
おいおい……おい! 百合じゃなくってBLじゃないか!
どうしてそうなった!って突っ込みたいけど、レベルが高すぎて俺には無理。
でもやべぇ、俺が女になった以上にショックだよ。
じゃああれか? 俺は元男から生まれた子供だったのか!?
「ああ、最悪な誕生日だ……」
天使と元男の母さんと俺。
部屋の中で全員の顔が引きつったのだった。
つづく