表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

魔王と側近の朝

はいけー。


かんそうとかおまちしてます。



そーそー。

旧時代……魔王と勇者がしのぎを削り、争っていた時代。結果は圧倒的な武力と、膨大な兵力を持った魔王の勝利に終わった。それより数千年ものあいだ、人類は過酷な隷属を強いられる。


中世時代……旧時代よりはるかな時を経て、復興を遂げた勇者一行が魔王に反旗を翻し、再び抵抗を開始した時代。しかし結果はあっさりとついてしまい、またしても勇者は敗北を喫し、人類は二度の隷属に甘んじる事になった。



そして数千年が過ぎ去り……現世代。現在の時代。化学文明が発達し、魔法や技法は旧文明の遺産とされ、その存在すら忘れ去られてしまう。その影響を顕著に受けてしまった魔王軍は、隆盛を極めていたころと一転、徐々に衰退の一途を辿る。頼みの綱の魔法も科学の前には児戯にも等しく、魔の眷属の力も通用することはなかった。


ついに魔王は征服者の座から引きずり落とされ、数々あった魔王軍は事実上崩壊した。人類の一万年にも及ぶ、下克上である。


されど、現代の人々にとって前時代の同胞など所詮はどうでもよく、魔王軍を追放したのも単に目障りであったから。今では街のビルにはアイドルが映り、交差点では自動車が走行している。若者は学業に青春にはげみ、大人たちは仕事に勤しみ、同僚たちと酒を飲み、笑顔をこぼす。




こうして、古き時代は革新されたのであった。



「くだらん記事だ、いかにも三流雑誌の四流記者が書きそうな、五流文章だな、吐き気がする」

「『週刊ボーイミーツガール』は若者に大流行中の、超人気情報誌なんだそうですぜ」


「記事と雑誌名がミスマッチ過ぎる!!」


軽く雄叫びを上げながら、手元の雑誌を目の前の部下に投げつける。


「週刊雑誌なんてそんなもんでさぁ、大衆に受ければそれでいいんでしょう」


投げつけられた雑誌を受け止め、部下が冷めた言葉を返してきた。


「ふん、いかにも下劣で品格の欠片も存在しない、人間どもの考えだな」

「そんな人間どもに、あっしらは生かされてるんですがね」

「違う、俺がお前を生かして、俺が人間どもを生かしているんだ」


「……若、いい加減現実を見ましょうぜ?


二年前に若が追放され、魔王城は政府の根城、東都とうとと姿を変えられた。数多率いていた魔王軍も全滅、生き残ったのは見逃された魔王である若と、側近のあっしだけ。


弱者を挫き、贅の限りを尽くしたあっしらも、現在じゃあ明日食う米にも困る始末。今の若はただの人間とかわりま」

「やめろ正論は聞きたくない!!」


「この社会不適合者は……」


いやいやと耳をふさぐ俺に、元部下であり、現在は俺の保護者でもある『ダイダロス・アルバ』は、飽きれるように息をついた。


「俺は魔王様なんだ……さいきょうなんだ」

「はいはい、わかりましたよ」

「魔法だってつかえんだからな!!」

「政府の魔法無力装置まほうむりょくそうちで無効化されるでしょうに」

「俺の爪は一個大隊すら撫で払う!!」

「随分伸びていたんで、おととい寝ている間に切ってときましたぜ」

「やけつく息!!」

「昨日、歯磨きましたかい?」


「うっせアルのアホー!!」


冷静に、的確な相槌を打つダイダロスに、俺は暴言を吐き捨てつつ駆け出す。


「若―、この喫茶店、夕方には閉まっちまうんで、今日のねぐらはマッ○で良いですかいー?」

「うるせぇアホぉぉぉぉ!!」


ダイダロスの外聞を気にしない呼びかけに、店内の視線が俺に集まる。会計を済ませる人間を押しのけ、俺は情けなさと羞恥にまみれ、外へと脱出したのであった。



「さて、あっしは仕事探しに行きますかね」


ダイダロスもまた席を立ち、会計を済ませようとレジへ向かう。


「コーヒーとオレンジジュースで六百四十円になりますぅ☆」

レジの女店員の歯が浮くような声に、やや身震いしつつ、ダイダロスはポケットの小銭を差し出す。


「足りますかね?」

「あーっとぉ、はいっ、ギリギリです☆」

「お釣りは?」

「二円だけですよぉ☆」

「ください」

「はいっ、またどうぞぉ☆」


こうして無一文……いやいや、二円持ちになったダイダロスも、喫茶店をあとにしたのであった。


熱いですね、私もアツい小説を書きたいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ