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 安藤は眠りの中で和田の声を聞いた。

「改造に失敗したのか? 今までの経験でそんなことはないんだがな。なぜ覚醒しない。もう改造してから一ヶ月が経とうとしているぞ」

 もう一ヶ月も寝ていたのか、と安藤は思った。

 安藤の意識が表面へと浮かんでいく。硬いベッドの感覚を感じたが、一ヶ月硬いベッドに寝ていたにも関わらず背中に痛みがなかった。

 目を開けて体を動かそうとすると、腕が異様なほど重い。それに意識が霞んでいた。

「起きている。それよりも腕が重い」

 和田が安藤を見ると、嬉しそうに笑った。

「起きたか、ノンチョーカ。俺の最高傑作。安心したぞ。イレギュラーのアンドロイドだから失敗したかと思った」

 こいつは話を聞かないのだな、と安藤は心の中で批判する。

 普段のように無意識に動かすことはできなったので、意識して腕に力を入れて動かす。

「そんなことはどうでもいい。腕が重くて、以前のように無意識で動かすことが出来ない」

 安藤はベッドから起き上がり、地面に足を置いた。足には意識してもまだ力が入らないため、ベッドに座った状態から動けなかった。

「当たり前だろう。中に入っている筋肉が戦闘用になっている。日常用のモノとは桁違いのパワーを出せるが、重さが重くなる。でもモノだから軽量化とパワーアップがされているからすぐに慣れるよ。慣れれば今までのように動ける。それに人工眼は軍隊配備用の横流し品だから、相手の動きが手に取るように分かるようになるさ。それと痛覚を切断したから痛みを感じないよ」

 楽しそうに説明する和田に呆れながら、安藤は聞く。だが、はっきりとしない意識の中で思った。これほど動きが鈍くなるのに大丈夫なのだろうかと。

「ノンチョーカには自己防衛機能が付いている。それは直感で分かるだろ?」

 安藤はニヒに襲われたときのことを思い出す。普段とは違う動きを機械的に動かす機能のことか。

「無意識で体が動くあの機能か」

 和田はご明察といわんばかりに、安藤に指を指す。

「その通り、あれは身近に死が迫ったときに自己を守るための機能さ。君は大事な存在だったからね。あれはノンチョーカの体を生き延びるために最善の動きをさせる。だから痛覚による身体負担感知をなくし、強い筋力を発揮できるようにしてやれば、自己防衛機能を最大限に使えるというわけだ」

 自分の意識下で戦わせる気は無いというわけか、と安藤は悲しんだ。全ては無意識の内に起きてしまうのか。

「この体に慣れれば以前のように動けると言ったが、どこで何をして慣れれば良い?」

 和田は思い出したよう頷き、説明を始める。

「運動は一階でしてくれ、この建物は丈夫に作られているが、上の階で運動されては音が響いてうるさい。それに一階ならば、俺が来る前に不良たちが溜まっていたから壁は落書きだらけのボロボロさ。ニヒとの対決には振動ナイフを使ってもらう。戦闘方法のプログラムはメシアから配布されたからバックアップサーバーに入れておいた。生き残るためだ。さっさと体に慣れるんだな。慣れたら、実践で使うナイフを渡してやる。」

 安藤は必死に体を動かすと、転びながら一階へと向かった。

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