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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

~ねえ、神様~

作者: 赤い天使

読んでもらえるだけで嬉しいです^^

ねえ、神様


ごめんなさい ごめんなさい


貴方は覚えているのかな


方翼を失い、倒れていた僕を


黒い空から降ってくる、透明な水にうたれていた僕を


貴方はゆっくり近づいて、そっと僕の髪に触れたんだ


その手はとても、とても優しかった


貴方は僕に言ってくれた


ここはとても寒いから、私の家においでって


君のような美しいモノが、こんな所にいるのは似合わないって


僕はその手をとって、手の甲にキスをした


貴方はそれに応えるように、僕の額にキスをしてくれた






ねえ、神様


僕は、3という数字が好きだった


時計の短い針が、3、を指すと、貴方はいつも僕を呼んだ


白い薔薇が沢山さいた、小さな庭に


庭の中央には円形の机と、二つの椅子が置いてあって、


机の上にはいつも、小さな3角形のケーキが二人分置いてあった


僕のは、白くて、真ん中に赤いいちごがのっていた


貴方のにはのっていなかった


僕達は何の言葉を交わすわけでもなく、向かい合ってそれを食べた


時折、 僕が上目づかいで貴方を見ると、貴方は僕の髪を撫でてくれた


僕はそれが嬉しくて、毎日、毎日貴方を見たんだ






ねえ、神様


ある日僕は、薔薇園に一輪だけあった赤い薔薇を見ていた


貴方は僕に、赤が好きなのかときいた


僕はよく分からない、気になったから、と答えた


貴方は、赤い薔薇をまっすぐ見つめて言った


私は嫌いです 


赤はいつも、人の心を苦しみや、恐怖、辛さで満たします


なのに、とても美しい


だからこそ、私の心は苦しみを覚えるのです


白は良い


一点の穢れもなく、何を感じることもない


見ているだけで、最高の形が、保たれますから






ねえ、神様


貴方は僕に膝枕をして、僕の髪に触れた


僕のブロンドの髪が、とても好きだと言って


僕も、貴方の白い髪が好きだと言った


貴方の髪はとても長いから、寝ている僕の顔にかかる


その髪に指を通しても、するすると通り抜けるんだ


時々、それはとても僕を怖い気持ちにさせた


何度掴もうとしても、いつも僕の手におさまってくれないから


そのまま、遠く離れて、どこかへ行ってしまう気がしたんだ


だから、無理やり貴方の髪を握って、僕の胸にしまいこんだ


貴方はその度に、少し怪訝そうな顔をして、痛いですよって言った






ねえ、神様


初めて外に出た日、周りを行き交うモノが、皆僕を見てた


何故見られているのか、僕にはすぐ分かった


皆には翼が二枚あるのに、僕には一枚しかなかったから


貴方にも翼は二枚あった


でも、決して奇妙な目で見なかったから、僕は気づかなかったんだ


自分は違う、ということに


でも、僕は何も悪いことはしてないから、自分が片翼であることを


たいして気にしなかったんだ


きっと、少し珍しいだけだって






ねえ、神様


貴方は僕に、どこに行きたいのかときいた


僕は質問の意味がよく分からなかった


しばらく黙っていると、貴方は僕の髪を撫でて言った


自分の居場所は、自分で作りだすものです


私は君を、ここに連れてきました


でも、もし、他に自分のいるべき場所があると思うなら、


そこに行ってもいい


しかし、代償もある、ということを、知っておきなさい


僕は頷いたけど、貴方の言葉の意味がよく分からなかったんだ


その時は


ただ今は、貴方といられるこの場所が好きだったから






ねえ、神様


その日、僕はまた外に出た


見上げると、キラキラした小さな石が沢山浮かんでいるんだ


僕はその景色が気に入っていた


同時に悲しくもなった


手をのばしても、決して触れることができなくて


憎たらしくもなった


その先にある石たちは、一つ一つ、離れた場所にあるのに、


皆違う形をしているのに、決して違わなくて


この頃から僕は、自分の違いを少し気にし始めていたのかもしれない






ねえ、神様


僕たちの家の戸が、トントン、と叩かれた


扉を開けた貴方を押しのけて、同じ格好をしたモノが


沢山入り込んできた


そのモノたちは僕を捕まえると、貴方のいない所に、僕を連れて行こうとした


嫌だった


僕は貴方に手をのばした


貴方も僕に手をのばした


一度は触れたんだ


だけど、まるで貴方の髪のように、掴むこともできずに離れてしまった


ここで貴方を掴めなかったら、二度と会えない、そんな気がした


白い何かに、僕の目は覆われて、何も見えなくなった






ねえ、神様


ようやく、僕の目に見えた色は、赤、だった


僕を連れ出したモノが皆、赤に染まって倒れていたんだ


何も考えられなかった


何故、モノたちは倒れているのか、何故、誰も僕を捕まえないのか


何故    赤に染まっているのか


僕は不安でいっぱいになった


耳元で囁く声がきこえた


あの世界に、もう君の居場所はない


こちらへおいで、と


なぜ居場所がないのか、と聞き返した


声は、僕があちらの世界では、存在してはならないのだと


だから僕は連れて行かれたのだと言った


どうすればいいのかと、僕は言った


声は、完全にあちらの世界と縁を絶てばいい


そうすれば、こちらの世界に、君の居場所はできる


そう、言ったんだ






ねえ、神様


どれくらいの時間がたったか分からないよ


やっと僕は薔薇園にたどり着いた


ちょうど、壁にかかった時計の短針が、3を指していた


真ん中の机には、小さなケーキが二つあった


片方には赤いモノがひとつ


もう片方には何ものっていなかった


一輪の赤い薔薇の前に、誰かがいた


とても長い、白い髪が、周りの白い薔薇と同化しているようだった


そのモノの後ろに立つと、モノはゆっくりこちらを向いて、


少し悲しそうに笑ったんだ






赤が、薔薇を染めた


赤が、白い髪を染めた


赤が、僕を染めた


僕はモノの心臓を掴んでいた


モノは、少し震えながら僕の額にそっとキスをすると、


そのまま仰向けになって倒れた


僕は、無意識に、流れるようなその髪を掴もうとした


でも、掴めるわけなかったんだ






ねえ、神様


今、目の前にいるモノが、貴方にそっくりなんだ


まるで、貴方本人みたいなんだ


この薔薇園も、ケーキも、この時間も、


僕にとって、何の意味があったのか思い出せないけど


とても懐かしい気がするんだ


白い薔薇は、ほとんど赤に染められて、一輪の赤い薔薇は、


全くめだたなくなっていた


だけど、一輪だけ綺麗な白い薔薇が残っていたんだ


僕はその瞬間、言葉で言い表すことのできない、


大きな何かに襲われた


何かが僕の胸を締め付けた


僕は吐きそうになって、手で口を覆った


同時に、僕は知ったんだ


居場所を手に入れたと


でもそれは、貴方の腕の中から、引き離されてしまったようで


僕の中から、貴方がいなくなってしまったようで


白い薔薇は、僕を責めるわけでもなく、


僕をまっすぐ見つめていた


僕はその視線に耐えられなかった


僕はただ、その薔薇が怖くて、恐ろしくて、苦しくて


右手に持った心臓をギュッと抱きしめるのだった

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

初めてこんな感じの短編書いたんで・・・というか

短編初です。

至らない所も多いと思いますが、自分は満足している作品です^^

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