3話:医療隊
話が飛びまくります
飛天王国理事六華直属烈火隊の主な役割は、世界間紛争の介入と世界防衛だ。しかし、そんなものが頻繁に起こるわけもなく、だらだらとした日々が続いた。
「無双さん。だらけていてはだめですよ」
入隊から四年。時空間暦で言う九年。時空間暦は、時空間統轄管理局が出来てから
何年というのを現している。つまり、世界をいくつか統治してから四年もたったのだ。それなのに世界では小波一つ生じない。それが人々の順応性というやつなのだろうか。
私が入隊してから、烈火隊特殊医療隊とやらが出来た。そこに、凄腕の治癒術士が来たそうだ。少し気になったので見に行くことにした。
その凄腕の治癒術士は、見た目は幼く、朱色の長髪が特徴的な少女だった。
「ん?あら、貴方は?」
「ああ、私?私は、篠宮無双」
「無双さんですね」
にっこりとした笑顔。どうやら私が一門であることは知らないらしい。まあ、知っていようがいまいが関係はないんだが。
「わたしは、緋葉です」
アカハと名乗る、その少女こそ、触れただけで傷を治す、最強の治癒術士。《朱色治癒天使》と称されることもある人物である。
「あ、すみません。今向こうに患者がいるので」
そういって、アカハは、患者の元に行く。患者は、大きな切り傷があり、致命傷だろう。彼女がいかに天才であろうとも、治しえない。そう思った。
「《キルシュ》」
そう呟くと、患者の傷が見る見るふさがっていく。キルシュ?私が知っている限り、ドイツ語では、さくらんぼという意味を持っていた気がする。さくらんぼが治癒と関係あるのだろうか。そんな疑問を考えているうちに、患者は、一命を取り留めていた。
私は、休憩に入ったアカハに、《キルシュ》の意味を聞いてみた。
「《キルシュ》って?」
「え?聞こえてたんですか?」
「確か、意味はさくらんぼ、よね?」
「はい。これに関しては、私の勘違いでして」
勘違い?
「昔、キルヒェとキルシュを間違えて覚えていたんですよ。神聖なイメージの単語を治癒の発動キーに設定したんですけど……。教会ではなく、さんくらんぼを設定してしまい。以降、《キルシュ》が治癒のために使う単語になっているんです」
なるほど。良くあることだが、そういう理由だったのか。
「それにしても、よく分かりましたね。私の勘が正しければ、貴方は《日本人》だと思うんですが……」
日本人という響きに懐かしさを感じた。今、統治している世界の中に、日本という国が存在する世界は存在しない。だから、彼女は、統治していない世界の出身に違いないのだ。
「私は、昔、日本人に大変お世話になったので……。あっと、でも、同じ日本人かは分かりませんけどね?日本という国がある世界が複数ある可能性も否定は出来ないですから」
「まあ、日本人なのは否定しないわ。私の世界で言うドイツ語に当たるわね。キルヒェとかキルシュっていうのは」
「ドイツ、ですか?私たちの世界では、アルタリア語って言ったんですが……やはり世界の差でしょうか」
そうなのだろう。
「あっ、会議の時間。アカハ、また会いましょう」
「はい、また」