1話:烈火隊
この物語は、著者の他作品を補完する部分があるので、分かりにくい部分があることをあらかじめご了承ください。
紫色の光が空を輝かせる。先ほどから、何度も、大きな音を立てあちらこちらに散るように、紫電が落ちる。まさに世界の終わりを髣髴とさせる暗雲と雷。そんな中、私は、一歩、また一歩と足を踏み出す。腰に携えた二本の剱をいつでも抜けるようにして。
敵も、一歩、また一歩とこちらへ向かってくる。名前とは反対の真っ黒な髪を持ち、身の丈を裕に超える太刀を構える少女。
――ゴロゴロォ!
そんな雷鳴を合図に、私達は、同時に剱を抜き残りの距離を駆け抜ける。
そう、これは、後に、天辰流篠之宮神と呼ばれる、武神が生まれた理由を記す物語。
時は遡ること二百十一年。私は、面白い話を聞いた。この世の中には、様々な世界が平行して存在している。そんな世界を統轄する組織を創ろうというのだ。どのような物好きなのか。確か、逆月とか言ったか。そいつが《時空間統括管理局》とやらを作るらしい。
《時空間統括管理局》。それは、様々な平行世界を統轄して、世界間の知識や技術を共有することによって、より便利にしようというのものだ。他にも、世界同士の抗争を収めさせたり世界の崩壊を止めたり、などという役割もある。逆月をリーダーに、五王家が付きさらに、創設から一年で、第一世界《飛天》、二年目で《フェニックス》を治めた。そして、三年目にして、その二つの世界に、軍事的組織を立ち上げた。飛天王国理事六華と機関『Phoenix』だ。
それから二年後。私の元に一通のメールが届く。
「飛天王国理事六華直属烈火隊創設にあたり、貴殿を第一門の地位に迎えたい所存で……」
面倒な手紙だ。この話を蹴っていいのかもしれない。だが、少し魅力的だ。様々な世界から、様々な力、能力が集まるのだから、強者が多く現れるに違いないのだ。
「……承認、っと」
私は、了承の返事をするとともに、身支度を整える。といっても、基本的に大き目のバッグ一つで放浪する私だ。いつもの如く、バッグ一つを持った。さて、これから、新しい旅の始まり、といったところかしら。(※私がわざとらしい女言葉を使うときは大抵ろくでもないわ……)
飛天王国理事六華直属烈火隊。合計十二の隊が強さ順に並ぶもので、上に行けば行くほど強くなるらしい。つまり、十二門より十一門の部下の下っ端のほうが強いのだ。ただし、一~四門のみは例外だ。一門は最も強い、その次に二門、三門、四門となる。私が手合わせを願いたいのは、二門ね。
「篠宮様、いらっしゃいませ」
「ん?ああ」
メイドと思わしき女性が、私に声を掛ける。
「遠方から遥々、大変でしたね。もう、他の方は揃われておりますよ」
それは、遅いという文句なのだろうか。集合時間の二時間も前なのに。まあいい。もう全員揃っているなら、二門もいるのだろう。
私は、大きな扉を開け放つ。すると、三人の女性がいた。いや、一人だけ、女性と称するには、幼い人もいたが。おそらく、別格とされる一~四門だけの集まりなのだろう。
「遅れたわけではないけれど、待たせて申し訳ないわね。篠宮無双よ」
篠宮無双。それが、私につけられたあだ名。
「ボクは、霧羽未来。四門だよ」
少女はそう答えた。茶髪が雑にのびている様子は、ボーイッシュとでも言えば聞こえはいいか。顔はかなり良い方だろう。胸はないが!
「オレは、天龍寺深紅。三門だ」
赤茶の長い髪は手入れが行き届いていてとても綺麗だ。胸もそこそこある。そして、何より深紅の瞳は吸い込まれるような美しさを放っている。
「私は、二門の植野春夏ですよ」
紅茶を啜りながら答えた二門は、本当に私の次に強いといわれる二門なのだろうか。肩ぐらいまである髪。顔は美人の顔。二重で目がパッチリと大きく見える。長いまつげが、その目を飾っている。唇もぷりぷりで、少し触ってみたくなる衝動が生まれるほど。腕は細い。腰も細い。足も細い。だが、胸はでかい。でるとこでたボンキュボンの体型だ。しかし、アレだけ細いのに戦闘ができるのだろうか。異能を操る類の人間なのかもしれない。私みたいな戦闘狂とは違うタイプなのだろう。
「それぞれ得意な技を言ってみない?」
私の提案。戦うには、どんな力かを知りたい。
「ボクは、闇系が主流ダネ!」
「オレは、龍の力」
「私は、風と、植物……ですわね」
三人の答え。ほとんどが異能を有するものだ。私みたいに、純粋な「力バカ」はいないのかもしれない。
「で、そういうアンタはどんな能力なんだ?」
深紅の疑問に、私は答える。
「一言で言うなら肉体、だね」
「肉体?それは、肉体強化系の魔法、という意味ですか?」
ハルカの疑問に、にこやかに笑って答える。
「私は、純粋な肉体派。己の拳を振るい、刀を振るう。銃器を使う。そんな感じよ」
唖然とした表情をする三人。
「もう、一門さんは冗談が好きみたいですね。ボクが見るに、何かすごい魔法でも……」
乾いた笑いとともに未来言おうとする言葉を私はさえぎる。
「ううん、魔法は使わない」
「じょ、ジョウダンだろ?」
流石に信じられないのか、三人とも、疑念の眼差しを向けている。
「なら、戦ってみる?」
私の言葉に、深紅は、にやりと笑った。いいわね、こういう戦闘好きな感じ。
「外に闘技場あるらしいからそこでやろうぜ」
「オーケーよ」