インド洋波高し!! 前編
一足先にインド洋に展開するひ弱な空母部隊が一つだけ居た、
『第一航空支援輸送隊』である、
貨物船、輸送船、油槽船、
これらの大船団を護衛しながらイギリスの待つインドへ
ひ弱な商船改造空母は果たして何処まで戦えるのか!!?
8月7日、
アンダマン海を、
総数およそ六十の輸送船団が、急ぎ西進していた、
訳は分かると思うが、
インド方面の戦いでどうもイギリス軍が押され気味なのである、
おまけに、
ただの輸送任務なら届けてお仕舞いで簡単だが、
最近はベンガル湾にアメリカの潜水艦、護衛空母が通商破壊活動を行っているために、
海路、ようするにシーレーンがボロボロの状態であり、
現地のイギリス兵は慢性的な資材不足に悩まされていた、
そして今回、その輸送任務に白羽の矢が立ったのが、
『第一航空支援輸送隊』である、
護衛空母七隻、小型護衛艦三十五隻、大型護衛艦十四隻の大船団である、
しかし、護衛空母七隻と、聞こえはいいが、実態は、
最近機関と推進器を改装したばかりの『知床型給油艦』に支柱を立て、
そのまま、何の改装もせずに飛行甲板と、甲板の上には格納庫を設けた簡易式の護衛空母である、
機関は大好評の師走機関を搭載し、推進器は出来るだけ速度を上げる為一軸二重反転プロペラ、
艦上機は流石に最新のでしょと期待してはいけない、
艦上機も九六式艦上戦闘機と九六式艦上攻撃機のたった二種類、
飛行甲板の端っこに見えるのは艦橋ではなく、
簡易式の戦闘指揮所、しかも二階建てでもたったの四mしかないという小ささ、
中は六畳程の部屋と縄梯子、最上階は戦闘指揮所、露天だったが、後から屋根が追加された、
ちなみに屋根は鉄パイプ布張りの簡易式、そして一階は通信室、
更に艦首にも箱型の仮設ブリッジ、流石に操船は船の中程にある元からある艦橋で行う、
しかし、この艦橋のおかげで格納庫は全部で二段あるのに全通ではないのだ、
前後で格納庫が分かれており、その為にエレベーターは全部で四つ、
流石に真ん中に設置すると発艦に支障をきたすので全て舷側に二機載るか載らないかギリギリのが設置されている、
流石にこれでは船のバランスも悪いので、反対側には格納庫から直接舷側にせり出した床があり、
その真上に特別仕様の五トンデリックが設置されている、
このデリックも使い、格納庫の艦上機の出し入れをする、
このデリックは各格納庫、つまり、前部下段格納庫、上段格納庫、後部下段格納庫、上段格納庫にそれぞれ一基ずつ設置されている、
ちなみにこれらの追加設備による喫水線沈下のため、
舷側に新たにバルジが追加された、
しかし、油槽はそのまま残っているので輸送艦としても使用可能である、
航空機格納数は下段格納庫前後合計九機、上段格納庫前後合計十五機、補用機合計六機の総計三十機のみ、
攻撃機九機、攻撃機の補用機は五機、戦闘機十五機、補用機一機、
これが合わせて七隻で二一〇機を運用するのだ、
ここに、護衛艦の水上機も合わさるわけである、
水上機は史実よりも一年早く、今年採用された『瑞雲』だ、
そしてこの船団を纏め上げる司令官は元『知床』艦長のショーフクこと奇跡の男『木村 昌福』中将である、
木村は、この空母護衛部隊が出来たときにも色々と奇跡をやらかしており、
例えば、日本近海で演習訓練中に直接護衛艦に乗り込み爆雷訓練を行っていたが、
途中で、水兵の間違いにより本物の爆雷を投下、
漁船数隻を転覆させそうに成ったが、結果が凄かった、
何とたまたま魚群のど真ん中で爆雷が炸裂、
その日の晩飯が鯛一色に染まるほどの大漁だった、
その場に居た漁師の急げ急げの大混乱、その日の市場は鯛の大安売りが実施されるほどである、
そして現在、『木村・知床航空部艦隊』こと『第一航空支援輸送隊』はアンダマン海を突き進んでいた
「ふ~む、羨ましいね、彼ら、」
そう言って木村が艦首の九六艦攻を見つめる、
「仕方ないですよ、危険なことなんですし、探索を怠ったらやられますし、」
そう言うのは旗艦『知床』艦長『溝畠定一』中佐である、
「はぁ、俺も欲しいぜ、ポン六手当て」
そう、
この艦には最新の空気カタパルト、『二式1号10型』が一基、飛行甲板に埋め込まれており
操作は全て前方の仮設ブリッジが行う、
そのカタパルトで一回打ち出されるたびに発生する手当てのことを『ポン六手当て』というのだ、
元々はカタパルトで打ち出される水上機乗りの特権であり、体にかかる負担が半端ではないや、
火薬式カタパルトの危険性の為に付いた手当てである、
一回、つまり一ポンに付き六円支払われる
間もなくして、ポンと言う音と共に九六艦攻が打ち出された
「今頃苦しそうな顔をしてるんだろうな」
と苦笑いをする木村であった
この船団には途中、
対潜水艦戦闘を得意とする『特別掃討隊』も加わっている、
編成は護衛艦四隻、小型工作船一隻、特設砲艦一隻で構成されている、
砲艦の名前はあの『でりい丸』、
そう、日本版Qシップなのだ、
工作船は主に戦闘で損傷したでりい丸の傷を癒すために特別に建造されたが、
今は量産され、南太平洋で飛行場建設、水上機基地建設などなど、色々と使われている、
ちなみに名前は『高島』、
「最近あの船武装と装甲強化されたと聞いたが、艦長?」
でりい丸を物珍しそうに木村が見つめる、
「ええ、何しろ舷側に長門型戦艦にもある、『五十口径三年式十四サンチ砲』四基の合計八基が設置されてますから、水密区画も色々と改装しましたし、内部の装甲版も二重に張られていますよ」
そう、艦長が説明しているさなかに、
一本の無線が入る、
『此方鶴見五号機、潜望鏡と思わしきもの見ゆ、全艦警戒せよ』
この無線が入ったと同時に、
護衛艦が盛んにソナーを打ち出す、
でりい丸は舷側に設置されている防雷網を下ろし始め、
船団の後方に回り込み、煙突からわざと機関故障の黒煙を出す、
でりい丸の装備は敵の魚雷の磁気信管を誤作動させるための磁力発生装置、
爆雷や水中聴音機に水中探信儀、
短二十糎砲や短十二糎砲多数、全て上甲板、そして、追加された五十口径三年式十四サンチ砲八基、
外見はただの商船だがこう見えても、歴戦の強者である、
血祭りにあげた潜水艦はおよそ三十以上、
最初はぎこちなかった乗組員たちも現在では立派な対潜野郎である
でりい丸船室、
「おい、また潜水艦だぞ、いい加減起きろ」
艦長の『小岐須 駿』が呆れかえって部屋を覗く
「おい、デリー!、仕事だぞ!!」
一見布団の塊に叫んでいるようにしか見えないが、
実は、
「すいませーん、もうちょっとだけお願いします...」
布団の隙間から手がみえ、
此方に合図を送ってくる
「もう十分寝ただろ、はい、起きる」
そう言って布団から飛び出た手を引っ張る、
「う~、提督のケチ~」
布団から引っ張り出された彼女はこの船の船魂、『でりい丸』である、
そして、何故か小岐須はでりい丸からは提督と呼ばれて慕われている、
「ケチケチ言うな!この」
そう言うと、
背負い投げの要領ででりい丸を背負いあげる
構図で言えば親子みたいな雰囲気である
ちなみにでりい丸では名前が呼びにくいので縮めて『デリー』と呼ばれている
「聴音員!!方角を報告!!機関員!!機関速力落せ、囮だ!!総員対潜戦闘用意!!」
船橋に入った途端号令をかける小岐須、
甲板では各砲員がそれぞれの持ち場の砲につく、
十四サンチ砲は舷側の装甲版に守られているが、
撃つ時はこの装甲版をガレージのシャッターみたいに持ち上げるのだ
「方角!!七時方向に複数!!艦隊を組んでいます!!」
『各班配置に付きました』
「魚雷発射管注水音!!」
船橋には伝声管などで報告が逐一入ってくる
「さて、これが終わったら俺たちは第一航空支援輸送隊に編入される、穏やかな日々とはおさらばかもしれんからな、皆、この一瞬を噛み締めておけよ?」
船橋を見渡しながら聞く
「大丈夫ですよ、俺たち、何の為にここまで来たか、あんたが良く分かる筈だ」
操船員が肩を叩く
すると、
その場の全員がうなずいた、
「分かった、あとで宴会だ」
この瞬間、
船内が一気に盛り上がる
潜水艦内、
「1隻脱落しています、艦長、どういたしますか?」
潜望鏡を艦長に譲る水兵
「...よし、先ずはこの1隻を仕留める雷撃用意!!」
艦内をサイレンが鳴り響く
「このソードフィッシュの恐ろしさ、見せてやる」
そう、意気込んだ艦長の名前は、『カール・G・ハンセル』少佐である、
ここに、因縁の対決が始まろうとしていた
でりい丸船橋、
「.........!!、魚雷音!!!!!」
「今だ!!全速力!!取り舵一杯!!」
でりい丸の二重反転プロペラが勢いよく回り、
舵が利き始める、
ソードフィッシュ、
「な!!魚雷と垂直に交わるぞ!!」
潜望鏡を覗く水兵が叫ぶ
「命中だ!!」
そして、
カールは心の中でこの船を称えた
自分1隻を犠牲にしてまで船団を守るその勇気、その勇気は賞賛に値する、
しかし実態はそうではなく、
魚雷の殆どが信管が誤作動を起こし、爆発、
潜望鏡から見れば1隻の商船に数本もの魚雷が命中したかに見える、
「輸送船団は遥か先に行ってしまったか、まぁいい、追いかければ済む話だ」
すると、
カールは速力を出すために、
全艦浮上を命令した、
2隻の潜水艦は間もなくして海面に現れる、
そこで彼らが目にした光景は、
作ほど複数の魚雷が命中した筈の商船が、未だ浮いているのだ、
「くそ!、砲撃を加える!!砲撃戦用意!!」
狭い艦内から弾薬が甲板に運び出される、
初弾が甲板の3インチ砲の装填される
「よし、ファ...」
発射命令を言いかけた途端、
相手の商船の舷側が開き、上甲板の装甲版が内側に倒され、砲門が此方を向いていた
「ヤバイ!!退艦!!総員退艦!!」
慌てて甲板の水兵が砲弾を投げ捨て海に飛び込む
「奴等Qシップだったのか!!」
唇をカールは悔しそうに噛み締めた
でりい丸、
「よし!!先ほどの水浴びのお駄賃受け取っていけ!!」
先ほど魚雷の炸裂による水柱が容赦なく降り注いだでりい丸
甲板の砲員は甲板に降り注いだ濁流に飲み込まれ数名が甲板を転がってしまうという事態が船橋から見えた、
「撃ち方始!!」
圧倒的な砲声により、
まるで宮崎アニメのように大量の砲弾が潜水艦に降り注ぐ、
(※参考:アニメの名探偵ホームズで検索)
その圧倒的砲力により、
あっと言う間に二隻の潜水艦は海の藻屑と消えた
「最近命中率上がったなぁ、ボート下ろせ、人命救助用意!!」
ベルの音が船内を駆け巡る、
間もなくして、
でりい丸は沈没地点に到着、
およそ百名あまりの米兵を拾い上げ、
急ぎ全速力で船団に向かった、
追いついたのはおよそ五時間後、
丁度、船団がアンダマン海を抜けようとしていた時であった、
インド、アンベッカードック到着まであと四日、
作者:ヤッホヨーイ!!
遠龍:絶対無理矢理思いついただろ!?
作者:すみません、第二機動部隊到着までしばしの御我慢を...
遠龍:仕方ねぇな、では、
作者:また今度!!




