myuzの三題噺「タオル」「人参」「鉛筆削り」
昔書いた三題噺をひっぱってきました。
――ソレは、タオルに包まれていた。何か大事なモノなのだろうか。
「んーっ。おはよー!お母さん。」
「あら美佐。休みの日は早起きするのね。」
いつも通りの日曜日。最近は早起きしてまた寝るのが癖になっている。
リビングを見渡せば、テレビの前でお父さんが頬杖をついていた。深夜勤だったのかな。
3人でテレビを見ながら朝ごはんを食べる。特に面白いニュースはなかったけれど。
部屋に戻る前に、部屋の前にあった包みについて聞いてみる。
昨日まではなかったし、ちょっとおっきいから邪魔なんだ。
「あ、そうだお母さん。部屋の前にあったアレ、何?」
「あぁ、昔の美佐の部屋を片付けてたら出てきたのよ。処分していい物か見てくれない?」
「うん、わかった。」
階段を駆け上がり自分の部屋に戻る。
さっそく、タオルの結び目をほどいてみた。
「え゛・・・」
タオルの中からは、さらにタオルに包まれた何かが入っていた。
「なんなのよ・・・」
さらにタオルをあけてみる。
そのなかからはまたタオルに入った何かが。
そしてそれをあけるとさらに・・・
数十分の格闘の末、中からはとても細い人参と、一つのメモが出てきた。
メモには、こう書いてあった。
【削れ】
「・・・腐ってないのかな、これ。」
匂いをかいでみても、人参だ。ってか削れってなによ。
腐ってはいないと思うし・・・とりあえず削ってみよう。
「母さーん。・・・あれ、いない。買い物かな?」
台所で人参を軽く洗い、包丁をあてがう。
ささがき・・・だっけ?削るってこれで合ってるよね?
・・・。
削れない。硬すぎて、包丁が通りません。
なにこれ。人参じゃ無いよ。人参の匂いした木とかプラスチックみたいな硬さ。
こんなに細いのに、何でこんなに固いんだろう。
「・・・無理か。」
「あ。」
断念して、部屋に戻って来た時、ある物が目に入った。
私の愛用している鉛筆削りだ。ハンドルを回すタイプで、
消しゴムをくっつけている金属部分も楽々で削れる優れもの。
「いける・・・かな?」
人参を差し込んでみる。驚いたことにサイズはぴったりだ。
問題なのはここから。刃こぼれしないようにと、ハンドルにゆっくりと力を込めていく。
ガリッ・・・
「削れた!」
力を殆ど入れていなかったのだが、角度がよかったのか削ることができた。
ハンドルをそのまま回してみるが、ほとんど抵抗もなく削れていく。
ガッ・・・・
「はっ!!!」
気がついたら、人参一本を全部削りきっていた。
削りかすを中からだしてみると、驚いたことに全てつながっていて、文字が刻まれていた。
「何これ・・・?えっと、デル・イルス・プソー・タータ?」
ぽわぁ~ん。という音と共に、部屋に煙が充満していった。
「けほっ、けほっ。なんなのもー!」
窓を手探りで開けて煙を追い出す。視界が開けると、部屋の中にマッチョがいた。
「やぁ。僕を呼び出したのは君だね?」
「へ、変態ッ!?」
「ちょっ、君が呪文となえたんでしょうが!」
「じゅ・・・もん?」
どうやら、このマッチョは人参の精霊らしく、私の読んだ呪文で召喚されちゃったらしい。
夢でもみてるのかな・・・と思ってほっぺをつねったら痛かった。
「あ、もう時間だ。じゃあね。」
と言葉を残して精霊は消えた。なんなのあれ。
でも、魔法とかいってたなぁ・・・
うん、決めた。
厄介ごとには関わらないほうがいいよね!
「ただいまー。」
「お母さんおかえりー。あの包み要らない物だったから、捨てといてー。じゃおやすみー。」
「美佐はまた昼寝?それじゃ捨てとくわね。」
――ソレは、タオルに包まれていた。けれど、私には昼寝の方が大事だった。
(´・ω・`)感想お待ちしてます。短いし微妙な感じですが。