テーマ「仕事」で、例えばこんなお話、などなど~別題『異世界潜行、百有余年、それから』
☆巻頭言、ミソネタ州立大学学長レオタード・ナロウ(仮名)
何もかもがガラガラと音を立てて崩れ始めている。破滅を押し止める術はない。私たちの破局は、もう間もなくだ。今その序曲は流れ終わり、既に第一楽章の中盤に差し掛かっているといったところだろうか。重爆撃機が今、飛び立つ。やがて、すべてが消え去り舞台の幕が下りる。まさに! まさに野村義男のザ・グッバイよ。愛すべき読者の諸姉諸兄よ、アデュー。
待て、その前に本書の紹介を書き終えねばならないのだった。
まずは著者の紹介から。
世界の終焉を告げる角笛の響きに魂を犯された哀れな人間どもが右往左往いや、狂気の円舞を踊り続ける様相を見て、本書の著者ウロナニカツセウショ(仮名)は一体、どう思うであろう? 別に何とも思わないかもしれない。文明の崩壊を本書の執筆時には予想していたわけで、さも当然だと感じて、それで終わりだ。自分の予言が当たったことを喜ぶような小物ではなかった。断じて。
そうは言っても本書は予言書ではない。三十年以上ニートだったウロナニカツセウショが親の死後アパートを追い出された末に、孤独と絶望を抱えながら異世界を旅した記録である。正体を隠して異世界を潜行すること、百有余年……その長きにわたる歳月の物語だ。
(中略)
無職の長大な叙事詩を訳するにあたり、編集グループは年代順だけでなくテーマごとにまとめた別巻を用意した。例えば「仕事」と題された巻には、こんなお話が収載されている。
・憧れの職業に就いてみたら……?
・異世界で働くお話
・職場の怖い先輩の意外な一面を知ってしまった!
・「転職をご希望ですか?」
その内容を簡単にご紹介しよう。憧れの職業とは、売春宿の受付である。好みの相手をあてがってもらうために、客たちは応接係に気前よくチップをくれるはず! とウロナニカツセウショは考えたのだ。その結末が、どうなったのかは、本書を読んでみれば分かる。異世界で働くお話は、その苦い幕切れで強い印象が残るはずだ。砂漠の砂の中に消えた幻影の美女は、今夜あなたの夢に現れるであろう。職場の怖い先輩の意外な一面に関する笑い話は、ロシアの小話に似ていて面白い。シベリアに似た極寒の凍土を二人で橇に乗って疾走するエピソードは必見。「転職をご希望ですか?」は、アイドルとして活動していた当時の思い出を綴ったもの。フリルの目立つ黒と赤の裾が短いドレスを着て、胸の谷間を見せつけながら踊るウロナニカツセウショを、誰もが女性だと勘違いしたらしい。どうかしている。
以上、簡単ではあるが本書の紹介を終える。プルースト『失われた時を求めて』に比すべき二十一世紀のエポックメーキングな問題作を、どうぞお楽しみあれ――五月、疎開先の、虹の谷にて。




