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これって運命かも! 〜連載版〜  作者: 海鳴雫


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10/13

第10話 これって永遠かも!

春。

 都内の撮影スタジオ。

 映画『約束のカタチ』の撮影初日。


 主演:姫野沙耶。

 アクション監修:荒谷呉人。


 スタッフが慌ただしく動き回る中、

 呉人はカメラ横で動きを確認していた。


 「この蹴りの角度、もう少し高くした方が映える」

 「了解です!」


 現場の誰もが、彼を“格闘家”ではなく“映画人”として見ていた。

 そんな中、彼の視線の先――

 主演衣装に身を包んだ姫野沙耶が立っていた。


 「おはよう、くれひとくん」

 「……似合ってるな」

 「ふふ、ありがとう」


 それは撮影現場というより、

 再び“運命の舞台”に立った二人のようだった。

撮影は順調に進んでいた。

 アクションシーンでは、呉人が直接姫野に指導を行う。


 「足の軸をもう少し意識しろ。呼吸を合わせろ」

 「こう? それとも……」

 「そう、そこから――!」


 動作の流れの中で、

 二人の距離がふと近づく。


 息を合わせるたび、

 目が合うたびに、

 周囲の時間が止まるようだった。


 監督が声を上げた。

 「OK! 二人とも完璧だ!」


 姫野は照れくさそうに笑い、呉人の肩を軽く叩いた。

 「ねぇ、私、ちょっとだけ思ってた」

 「何を?」

「この映画、私たちのことみたいだなって」


 脚本のテーマは――

 “離れても支え合う恋と絆”。


 まるで、二人のこれまでの軌跡を映すようだった。

撮影中盤。

 監督が突然、二人を呼び寄せた。


 「姫野、荒谷。実は終盤の脚本を少し変えようと思ってる」

 「え?」

 「最後に、“再会の抱擁”のシーンを追加したい。

  荒谷、君が立ち会って指導してくれ」


 呉人は一瞬言葉を失った。

 “抱擁”――つまり、二人の関係性を象徴する場面だ。


 姫野が小さく笑って、呉人に囁いた。

 「ねぇ、これって運命の演出かもね」

 「……そうかもな」

照明が落ちる。

 カメラが回る。

 クライマックスの場面――

 戦いに敗れたヒロインが、

 旅立つ恋人に再び会うシーン。


 姫野は涙を浮かべながら台詞を放った。


 > 「あなたがいたから、私は強くなれた。

 > あなたが信じてくれたから、今の私がいるの。」


 そして、呉人が指導する動きの通り、

 そっと彼に駆け寄り――抱きしめる。


 照明の熱と、鼓動の音。

 たった数秒の抱擁が、

 これまでの年月すべてを語っていた。


 監督が叫ぶ。

 「カット! ……最高だ!」


 現場が拍手に包まれる中、

 姫野は呉人の胸の中で小さく呟いた。


 「ねぇ、くれひとくん。これ、演技じゃないから」

 「……ああ、知ってる」

撮影が全て終わった夜。

 都内のレストランで打ち上げが開かれた。

 スタッフの笑い声、グラスの音。


 姫野は隣の席の呉人に囁く。

 「ねぇ、くれひとくん。今までありがとう」

 「何がだよ」

 「全部。あの日、助けてくれたことも。

  空手を教えてくれたことも。

  そして……ずっと支えてくれたことも」


 呉人は少し照れながら笑った。

 「お前がいたから、ここまで来れたんだ」


 少しの沈黙。

 そして、姫野は真剣な瞳で言った。


 「ねぇ、これからも隣にいていい?」

 「……あたりまえだろ」


 乾杯の音が鳴る中、

 二人は静かにグラスを合わせた。

数ヶ月後。

 映画は大ヒットを記録した。

 「姫野沙耶、次世代女優賞受賞」

 「荒谷呉人、プロ空手界の新星として躍進」


 テレビでは、二人の活躍が同じニュース内で流れる。

 まるで――二人が並んで歩んでいるようだった。


 ある夜。

 久々に二人は公園で再会した。


 「なぁ、沙耶」

「ん?」

 「夢って、叶えても終わりじゃねぇんだな」

 「うん。終わらないからこそ、次の“約束”ができるんだよ」


 呉人はポケットから、小さな紙包みを取り出した。


 「これ、俺からの約束だ」


 中には、小さな銀のリング。

 裏には――“運命”の文字。


 「映画の打ち上げで言ってたろ、“隣にいたい”って。

  俺も、そう思ってる」


 姫野は涙をこらえながら微笑んだ。

 「……ずるいよ、くれひとくん。

  そんなの、断れるわけないじゃん」


 呉人が静かに彼女の指に指輪をはめた。

 月の光が、二人を包む。

その夜。

 姫野はそっと呟いた。


 「ねぇ、くれひとくん」

 「なんだ?」

 「これって、永遠かも」


 呉人は少し照れながら笑った。

 「“かも”じゃねぇ。永遠にするんだよ」


 手を握り合い、

 夜空を見上げる。


 あの日、不良に絡まれていた少女。

 助けに飛び出した脳筋空手バカ。


 出会いは偶然。

 でも、絆は――選んだ運命。


 風が吹き抜ける。

 空には流れ星がひとつ。


 「これって――運命かも!」

 「お前、それ、まだ言うのかよ」

 「だって、そうでしょ?」

 「……ああ。そうだな」


 二人の笑い声が、夜空に溶けていった。

運命は、待っていれば来るものじゃない。

信じて、選んで、掴み取るものだ。


拳と心で守り抜いたその愛は、

きっと永遠に続いていく。


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