目覚め
何番煎じかは分かりませんが、よろしくお願いします。
目覚めると、私はカラカラと軽い音で目が覚めた。
…なにかの貝殻が糸に吊らされていて、それが窓からの風で揺れている。
それの音だったみたい。
なぜか視界はあんまり良くない。
目を擦りたくて自分の手を見ると…思っていたよりも小さかった。
まるで赤ちゃんみたいなふにふにした……
「ばあ!?」
あ、赤ちゃんになってる!?なんで?
あれ?私もうちょっと大きかったよね?
なんで赤ちゃんに…
ループしてる?夢?一体私の身になにが起きたの?
どうして……
自分のことを思い出してみよう。
私の名前は月島雪乃。
年齢は…確か18歳。住んでいたのは日本。
うん。基本的なことは思い出せた。
でもなんで赤ちゃんに?
もしかしてだけど…私って死んだの?
なんで?どうして…全然思い出せない。
思い出せないことが怖い。
どうやら精神が赤ちゃんに引っ張られてしまったみたいで、
ギャン泣きしてしまう。
すると私の泣き声に気付いたのか、両親らしき人達が近付いてきた。
「あらあら、ルーナ?どうしたの?」
「もしかしておむつかな?」
「うーん、違うみたい。何か怖い夢でも見たのかしら。よーしよし」
「そうか…大丈夫だぞ。いつもそばにパパとママがいるからな」
そばに来た両親らしき人達を見て、私は確信してしまった。
綺麗な栗色の髪、雪のように白い髪。
サファイアの瞳、若草のような瞳。
そのどれもが私の住んでいた日本では滅多に見られない色彩。
私の記憶が正しければ両親は黒髪黒目だった。
でも、私のことを別の名前で呼ぶ二人は紛れもない私の両親で。
どうやら私は外国どころか、異世界に転生したみたい。
あれから3年。
私は新しい両親のもとで、すくすくと育っていた。
私の名前は、ルーナ=ファサード。
母はマヤ、父はアレン。
この世界はどうやら異世界で間違いないみたいで、魔法が使える。
ファンタジーな世界だった。
そして、この世界にはいろんな種族が住んでいるみたいで、近所に猫耳の男の子がいる。
名前はリュートと言って、最初は素っ気なかったけど
一緒に遊んでいくうちに仲良くなった。
「そーいえばルーナは今日だよな?スキルの付与って」
「うん。そうみたい」
「俺は俊足ってスキルだったぞ!足が速いんだ!」
と、得意気に話すとリュートは軽やかに走ってみせる。
そう。リュートが言った通り今日はこれから両親と一緒に教会へ行き、
スキルの付与をして貰うのだ。
私はドキドキして全然眠れなかった。
どんなスキルを授かれるのかな?
戦闘はあんまり得意じゃないから魔法に便利なスキルとかが良いなぁ…
と、ぽやぽやと妄想に耽っていると、両親の声が聞こえてきた。
どうやら教会に行くらしい。
ああ、ドキドキしてきた!
神様、どうか素敵なスキルであります様に!
私の他に数人の子供たちが一列に並んでいる。
この世界では3歳になったらスキル…正しくはギフトと呼ばれる祝福を
神様から一つだけ貰える。
でも、父が言うにはギフトはこの儀式以外にも付与されることがあるから
複数持っている人もいるんだよ、と教えてもらった。
でも、私は戦いとか苦手だから余程変なスキルじゃなければ一つで良いや。
そんな軽い気持ちで順番を待っていると、とうとう私の番がきた。
斜め後ろでは喜ぶ声が聞こえるが、私は目の前の神父様に跪くと彼が何かを唱えた時だった。
ポーン、と言う音と共に頭の中で「歌姫」と言う文字が浮かんだ。
神父様は私に微笑むと素敵なギフトを授かりましたね、と祝福してくれた。
「うた、ひめ?」
私のスキルの名前を聞くと、両親は初めて聞いたらしく首を傾げていた。
…もしかして、変なスキルを授かっちゃったのかな?