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ポンコツ魔法使いと私の・・・(仮)  作者: Anichi-Impact
第2章: 「暴走する魔法!」
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第3話: 「心の乱れが引き金に」

星川凌の魔法が再び暴走した出来事から数日が過ぎた。彼は自分を責め、無意識に魔法を使ってしまうことを恐れているように見えた。私はできる限り彼を支えようと努めてきたけれど、彼の内に秘めた感情がどれだけ重くのしかかっているか、想像するしかなかった。


その日、私たちは学校の裏庭にあるベンチに座っていた。授業が終わってから、彼と話をすることが増えていたのだが、この日は特に彼が沈んだ様子だった。彼の表情は普段通り冷静を装っているものの、私にはそれが単なる仮面であることがわかっていた。


「星川君、最近どう?魔法の方は…」私は彼が少しでも話しやすくなるように、ゆっくりと問いかけた。


彼は一瞬、私を見つめたが、すぐに視線をそらしてしまった。「…正直、あまり良くないんだ。自分でもどうすればいいのか、わからなくなってきてる」


彼の言葉には、深い苦しみが滲んでいた。私は彼の横顔を見つめながら、どうすれば彼を助けられるのかを考えていたが、何も言葉が浮かばなかった。彼が抱えているものがあまりにも大きく、私の力では到底解決できないのかもしれない、そんな気がしていた。


「そうなんだ…でも、無理しなくてもいいんだよ。私はいつでも君のそばにいるから」と、私は励ますつもりで言った。


すると彼は、突然拳を握り締め、少し感情的な声で言い返してきた。「でも、桜井さんは何もわかってないんだ!僕がどれだけこの力に悩んでいるか、どれだけ苦しんでいるか…君には理解できない!」


彼の突然の強い言葉に、私は驚いて息を呑んだ。彼がこんな風に感情を露わにすることはほとんどなかった。普段はどんなに辛くても冷静さを保っている彼が、ここまで感情を爆発させるのは初めてだった。


「星川君…」私は彼の痛みを理解しようとしたが、彼はもう言葉を続けることなく、再び黙り込んだ。肩がわずかに震えているのを見て、彼が本当に限界に近いことを感じ取った。


その時、またしても異変が起こった。


彼の感情の乱れが引き金となったのか、周囲の空気が急に変わったように感じた。風が強く吹き始め、私たちの周りの木々がざわめき始めた。そして、突然ベンチの周りに置かれていた小さな物たちが、ゆっくりと浮かび上がった。ゴミ箱の近くに転がっていた空き缶や、地面に落ちていた枯れ葉、さらには私のバッグまでが宙に浮き、ふわふわと漂い始めた。


「また…魔法が…!」私は驚いて立ち上がり、浮いている物たちを見上げた。周囲の光景が異常な状態になっていることに、すぐに気づいた。


星川君もその異変に気づき、驚いた表情を浮かべた。「僕のせいだ…!またコントロールできない…!」彼は自分を抑えようと必死だったが、その焦りがさらに魔法を暴走させているのが明らかだった。


「落ち着いて、星川君!君は一人じゃないから!」私は彼の手を握り、できる限り落ち着かせようとした。


彼は一瞬、私の手を見つめ、深く息を吸い込んだ。少しずつ、浮かんでいた物たちが静かに地面に戻り始め、やがて風も収まった。周囲は元の静けさを取り戻し、私たちだけがその異様な光景の余韻に浸っていた。


「…ごめん、桜井さん。本当に…僕はまた迷惑をかけてしまった」星川君は肩を落とし、顔を伏せた。


「大丈夫だよ、誰にも気づかれなかったから。それに、君は一人で魔法を抑えたんだから、すごいじゃない」私は彼を励まそうと、優しく声をかけた。


彼はゆっくりと顔を上げ、私に微笑みを見せた。「…ありがとう。君がいなかったら、きっともっと酷いことになっていたかもしれない」


その微笑みを見た時、私は胸が締め付けられるような気持ちになった。彼は自分の力をコントロールできないことで苦しみ、誰にも頼ることなく一人で戦ってきたのだ。そんな彼の孤独を少しでも軽くしてあげたい、そう強く思った。


「星川君、これからも私は君のそばにいるから。一緒に乗り越えていこうね」私は彼の手を握りしめ、力強くそう伝えた。


彼は少し戸惑ったように私を見つめたが、やがて再び小さな微笑みを見せてくれた。「…本当にありがとう。君がいてくれて、本当に良かった」


その言葉を聞いた瞬間、私は彼のためにもっと力になりたいという決意を新たにした。彼の魔法の力がどれほど強くても、私たち二人でならきっと乗り越えられる。そんな希望を胸に、私は彼の手をしっかりと握り続けた。

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