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ポンコツ魔法使いと私の・・・(仮)  作者: Anichi-Impact
第2章: 「暴走する魔法!」
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第1話: 「またしても暴走」

星川凌が魔法を使えることを知ってから、私はますます彼のことが気になるようになった。彼がどれだけ自分の力に悩んでいるのか、少しでも理解しようとしてきたけれど、それでも彼の魔法がどれほど危険なものかを完全に把握していたわけではない。だからこそ、彼が再び魔法を暴走させるのではないかという不安が、私の心に常にあった。


そしてその不安は、私の予感通りに現実のものとなった。


その日、授業はいつも通りに進んでいた。私はいつも通りノートを取っていたし、先生の話にも集中していた。けれど、星川君のことが気になって、時折視線を彼の方に向けてしまう。彼は黙って座っていたが、どこか緊張しているように見えた。


そして、授業が終わる数分前、突然教室内で異変が起こった。


「バタン!」という音が響き、教室の窓が突然開いた。何の前触れもなく、一瞬のうちに教室全体が強風にさらされたかのようにカーテンが激しく揺れ、机の上のノートやプリントが飛び散った。クラスメイトたちは驚きの声を上げ、教師も「何だ?」と慌てた様子だった。


私の心臓は一瞬で高鳴り、星川君の方を見ると、彼の表情が固まっていた。彼が動揺しているのが一目でわかる。


「星川君…まさか…」私はすぐに彼が魔法を無意識に暴走させたのだと気づいた。彼の感情が乱れると、こうしたことが起きる。それはすでに何度か目撃していたことだった。


「どうしたの?なんでこんなことが…?」クラスメイトたちがざわざわと話し合い、誰も原因がわからないまま混乱している。


私は立ち上がり、星川君の方へ向かおうとした。その時、彼が静かに立ち上がり、机の上に置いていた教科書を片付け始めた。彼の顔には明らかに後悔の色が見えていて、彼が何とかこの状況を隠そうとしていることがわかった。


私は彼のそばに近づき、小さな声で話しかけた。「大丈夫、星川君。誰にも気づかれてないよ」


彼は一瞬だけ私を見て、また視線をそらした。「…ごめん、またやってしまった」


その謝罪の言葉に、私は胸が痛んだ。彼が魔法をコントロールできないことで、どれだけ自分を責めているのかがわかる。私には、彼がこの力を抱えて生きる辛さを完全に理解できるわけではないけれど、それでも彼を支えたいという気持ちは揺るがなかった。


「気にしないで。今はみんな驚いているけど、誰も君が原因だとは思ってないから」と、私は優しく微笑んで言った。


彼は再び小さくため息をつき、教室の外に向かって歩き出した。私も彼の後を追い、教室の外に出たところで、ようやく二人きりになった。


「星川君、本当に大丈夫?最近、調子悪いみたいだけど…」


彼はしばらく黙っていたが、やがてポツリと口を開いた。「…感情をコントロールするのが難しいんだ。最近、どうしても抑えきれなくて…」


その言葉に、私は彼がどれだけ苦しんでいるのかを再認識した。彼は自分の力を隠しながら生きるために、常に自分自身と戦っているのだ。


「そんなに無理しなくていいよ。私がそばにいるから、困った時は言って」と、私は再び彼を励まそうとした。


「ありがとう。でも、僕が君に頼りすぎるわけにはいかない。僕の魔法は、もっと自分でコントロールしないといけないんだ」彼は真剣な顔でそう言った。


それでも、私は彼を放っておけなかった。彼が一人でその重荷を背負っていることが、私には辛かったからだ。私は彼にもっと手を差し伸べたいと思ったが、彼の意思も尊重したいという葛藤があった。


「わかった。でも、無理しすぎないでね。君が一人で抱え込まなくてもいいんだよ」と、私は最後に言い残し、彼を見送った。


彼が去った後、私は教室に戻った。クラスメイトたちはまだ窓が勝手に開いたことを話題にしていたが、幸いにも誰も星川君のことを疑っている様子はなかった。それが私にとって唯一の救いだった。


だけど、これからも彼の魔法が暴走するかもしれないという不安が、私の胸の中で消えることはなかった。

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