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ポンコツ魔法使いと私の・・・(仮)  作者: Anichi-Impact
第1章: 「彼との出会いは突然に」
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第5話: 「彼の秘密に迫る」

星川凌が魔法を使える――その事実を知った私は、まだ完全には現実として受け入れきれていなかった。それでも、彼の告白を聞いたことで、私は今まで感じていた違和感が少しずつ解消されていくのを感じた。あの不可解な出来事の数々、剥がれ落ちたポスター、突然感じた彼の孤独感――すべてが一つに繋がった。


放課後の公園で、私は星川凌と並んで座り、しばらく静かな時間を過ごした。彼が少しだけ心を開いてくれたことで、私も何かを守るべきだと感じていた。彼がどれだけ苦労してきたのか、その孤独に寄り添いたいと思う気持ちが強くなっていく。


「それで、魔法って…一体どういう風に使うの?」私はふと、素朴な疑問を口にした。魔法使いという言葉を現実のものとして考えられるようになってきた今、その力がどういうものか気になって仕方がなかった。


彼は一瞬、戸惑ったように眉をひそめたが、少し考えた後、静かに口を開いた。


「魔法は…言葉で説明するのは難しいんだ。使い方によって、色々なことができるけど、その反面、すごく不安定でもある。僕はその力を完全に制御できていないから、時々問題が起こるんだ」


「問題って…例えば、昨日のポスターが剥がれたみたいなこと?」


「そう。それも一つの例だ。僕は、何か感情が高まったり、集中力を欠いたりすると、魔法が勝手に暴走してしまうことがあるんだ。だから、できるだけ人と距離を置いているんだよ」


彼の言葉に、私は胸が痛んだ。彼がずっと一人でこの力を抱えて、他人と関わることを避けてきた理由がわかった。魔法の力を持つことは、一見すごいことのように思えるけれど、それを制御できないということは、彼にとっては大きな負担だったのだ。


「でも、どうしてそんな力を持ってるの?生まれつき…なの?」私は、さらに踏み込んだ質問を投げかけた。


彼は少しだけ微笑んで、頭を軽く振った。「いや、僕が魔法の力を得たのは、ある理由があってのことなんだ。でも、その理由については、今は話せないんだ。いつか、君が本当に知る必要がある時に話すよ」


その言葉に、私は少し戸惑いを覚えたが、それ以上問い詰めることはできなかった。彼にはまだ、私に話せない何かがあるということを理解した。でも、それでも今は十分だった。彼が魔法使いであることを知り、その力に苦しんでいることもわかったのだから。


「わかった。無理に聞いたりはしないよ。でも…困った時は、私に頼ってくれていいんだよ。私は君を助けたいから」


「君は本当に不思議な人だね、桜井さん。普通の人なら、僕から距離を置こうとするだろうに…」彼は少し驚いた表情を見せながら、私を見つめた。


「そんなことないよ。だって、君は一人でこんなに頑張ってきたんだから。それに、私はただの普通の女子高生かもしれないけど、誰かを助けることくらいはできると思うから」


彼はしばらく私の顔を見つめ、そして静かに笑った。「ありがとう。君にそう言ってもらえると、少しだけ気が楽になるよ」


その笑顔を見て、私は胸の奥が少し温かくなった。彼が少しでも自分を開いてくれたことが、私には嬉しかった。それでも、彼の魔法が引き起こす問題はまだ解決していないし、これからも私たちの前に立ちはだかるだろう。でも、今なら一緒に乗り越えていける気がした。


その後、私たちはしばらくの間、日が沈むまで何も言わずに並んで座っていた。心地よい静寂が流れ、言葉は必要なかった。ただ、お互いの存在を感じながら、ゆっくりとした時間を共有していた。


それから数日が経ち、私は星川凌と少しずつ距離を縮めるようになった。彼はまだ多くを語らないし、学校では相変わらずクールな態度を保っているが、私たちの間には秘密の共有という特別な絆が生まれ始めていた。


ある日、学校が終わった後、私はふと思い立って彼に声をかけた。「星川君、ちょっと魔法を見せてくれない?」


彼は驚いた表情を見せたが、すぐに苦笑した。「あまり見せるようなものじゃないけど…本当に見たいのか?」


「うん、見たい。君がどうやって魔法を使うのか知りたいんだ」私は真剣な目で彼に答えた。


彼は少しだけ考えた後、静かに頷いた。「わかった。じゃあ、ちょっとだけ」


そう言うと、彼は手を軽く広げて、何かをつぶやいた。その瞬間、彼の手のひらの上に小さな光の玉が浮かび上がった。淡い青い光が、私たちの周りを優しく照らしている。


「これが…魔法…?」私は驚きながら、その光を見つめた。


「そうだよ。簡単なものだけどね。でも、これですらコントロールが難しい時があるんだ」彼は静かに言った。


その光は、彼の感情や集中力に左右されるように、少し揺らぎながら輝いていた。私はその美しさに見とれながらも、彼がどれだけ大変な力を持っているのかを改めて感じた。


「すごいね、星川君。君ならきっと、もっとすごいこともできるんだろうけど…無理しないでね」


「ありがとう、桜井さん」彼は再び笑顔を見せ、その光の玉をそっと消した。


その瞬間、私たちの間に流れる空気が少し変わった気がした。彼の魔法を目の当たりにしたことで、私たちの絆はさらに強くなり、彼を支える決意が私の中で一層固まった。

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