第6話: 「暴走の果てに」
星川凌の魔法が教室で暴走したその日の後、私は彼の言葉が頭から離れなかった。彼が「限界だ」と言ったあの瞬間、私は彼がどれだけ孤独に苦しんでいるのかを痛感し、彼を一人にしてはいけないと強く感じていた。
次の日、私は彼がいつもいる校舎裏のベンチに向かった。いつもなら彼はここで静かに過ごしていることが多かったが、その日は彼の姿が見当たらなかった。私は不安を感じ、彼を探しに学校の中を歩き回ったが、教室や図書室にも彼はいなかった。
不安が胸の中で膨らみ、ついに私は彼の家に向かうことを決意した。何も言わずに一人で抱え込んでしまう彼のことだから、家で一人で悩んでいるに違いない、そんな気がしていた。
星川君の家に到着し、ドアの前に立った私は、少し緊張しながらインターホンを押した。しばらくして、ようやくドアが開いた。そこにいたのは星川君だったが、彼の表情はいつも以上に沈んでいた。
「桜井さん…どうしてここに?」彼は驚いた様子で私を見つめた。
「君がいないから、心配になって…星川君、大丈夫?」私は彼の顔をじっと見つめ、心配そうに声をかけた。
彼は一瞬、ため息をついてから、うつむいた。「…もう、大丈夫じゃないかもしれない。昨日のこともあって、僕は…この力をどうすることもできないんだ」
彼の言葉には、深い絶望が込められていた。彼がこんなにも自分を追い詰めていることが、痛いほど伝わってきた。
「そんなこと言わないで。君は一人で頑張りすぎてるんだよ。私がいるから、一緒に乗り越えようって言ったでしょ?」私は強い口調で言い返した。
彼は一瞬驚いたように私を見つめ、そして小さく首を振った。「君に迷惑をかけたくないんだ。昨日だって、君がいなかったらもっと酷いことになってたかもしれない。僕は…君に危害を加えてしまうかもしれないんだ」
「そんなこと、気にしてないよ!」私は彼の言葉を遮った。「君が辛い時に、そばにいて助けるのは当然じゃない。君が暴走する時は、私が止めるから」
彼はしばらく黙ったままだったが、やがて深い息をついて、私を見つめた。「…でも、どうやって?僕の魔法は僕でも抑えきれないんだ。君には、これ以上危険な目に遭わせたくない」
私は彼の手を取り、真剣な顔で言った。「星川君、私は君を信じてる。君がどれだけ強い人かも知ってるし、君が自分の力を完全にコントロールできる日が来るって信じてる。でも、もしそれまでにまた魔法が暴走しそうになったら、私が君を止めるから。だから、一人で抱え込まないで」
その言葉を聞いた彼は、驚いた表情を見せた。そして、しばらく黙っていたが、やがて小さく微笑んだ。「君は、本当に不思議な人だね…」
その微笑みに、私は少し安堵した。彼が少しでも気を許してくれるなら、それでいい。私は彼に頼られる存在でありたいと強く思った。
「ありがとう、桜井さん。君がいなかったら、きっと僕はもっと早く壊れていたかもしれない」
その言葉に、私は胸がいっぱいになった。彼を支えることができているという実感が、私にとっても救いだった。そして、彼が少しでも楽になるなら、それで十分だと思った。
その後、私たちは静かに話を続けた。彼はまだ自分の魔法を完全にコントロールできていないが、それでも私と一緒にいることで、少しだけ落ち着くことができるようになった。
「これからも、よろしくね」と、星川君は最後に小さく笑いながら言った。
「うん、もちろん。いつでも君の味方だよ」と私は笑顔で返した。
その瞬間、私たちの絆はさらに強くなったと感じた。彼の苦しみはまだ続くだろうけど、私は彼と一緒にそれを乗り越える覚悟があった。
その日から、星川君は少しずつ前向きになり始めた。魔法のコントロールにはまだ時間がかかるかもしれないが、彼はもう一人で悩むことはなくなった。私たちの絆は強く、彼を支え続けることができるという自信が、私にも生まれていた。
彼が笑顔を取り戻す日が来るまで、私は彼と一緒に歩み続ける――それが私の決意だった。




