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裏切ったのはみんなだろ、まるで俺が悪役みたいに! ―少女絢爛オカルティック・パビリオン side:Number―  作者: 琉璃宿命


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第94話 複製体:チャトラン

 苦戦を強いられるのは、ルービックだけではない。


「ウィズもジグソーもアナも、このままじゃ前に出れない――物量で圧倒されたままか」


(『これが私らのはじめる自作自演である以上、誰の犠牲も出さないことが私たちの責任』……恵瑠乃はたしかにそう言った)


 ナンバーが念話らしきもので訴えてくる。


『チャトラン、そっちにやってたデジタライズトランプを解除した、複製体のカレイドローンも解除しろ!』

「もうやってるけど、今んとこほぼ効果が見受けないな。一度象った器を、神秘力アルカオルゴンの自律した循環が動かし続けてるみたい。

 あとはこちらがやられるのが先か、向こうが時間切れで消滅するのが先か……問題は複製体そのものより、複製体が時間を稼いでビットリンたちとマテリアアール獣らによる人的ないし物的被害の拡大。

 ところであんたの術とのバイパスかしら、思考が繋がってるの、ぞっとしないわね」

『使えるものはなんでも使うしかないだろう!?』

「わぁってるわよ……」


 当初の自作自演マッチポンプ策は完全に裏目に出ている。皇帝たちが市街地を蹂躙する時間を、私たち自ら稼いでしまったに等しい。

(なのにあいつはまだ、私たちパビリオンが返り咲けることを、微塵も疑ってないのよね)

 智絵の占いでも、……現実主義者リベラリストな王成はあてにしないが、玉虫色な結果しか聞けなかったし、結局は自らの決断が私たちを未来へ進めるってことなんだろうか。

(まだ諦めていいときじゃない!)


「「『カレイドローン』」っぅそでしょッ!!?」


 複製体がチャトランとほぼ同時に技を発動し、人形の群れが地表でぶつかり合う。


「人形如きがオリジナルと同等の威力を発揮するなよっ!!」


 向こうが飛びいってくるや、こちらは防御、アンビバレントステッキ同士が交錯した。


「あなたは人を愛していないのよ」

「――、違う私は、ルービックを、愛してッ!」

「虫唾が走る、反吐が出る。

 その劣情を献身と呼び替えるその卑屈が、欺瞞が、あの子を壊したッ」

「あっ……ぐ!?」


 脇腹に蹴りが刺さり、雑居ビルを背景に、半身が砕ける――変身していなければそうだったろう衝撃が、彼女の痩身を震わせた。


「ルービックが見ていたのはナンバーではないかもしれない。でもあなたに、仲間として女として愛される資格なんて本当にあると想っていたの?

 あなたはただ特別なものに『あてられた』だけ、焦がれたのがあの子でなくとも、あなたは無様に依存したのでしょうよ、なまじあてられた対象が人であったのが可哀想よね。

 あの子は完全にあなたの被害者よ。

 チャトラン、遊戯盤でのオママゴトにせいぜい収めていたならば、あなたのために傷つく誰かなどいなかったのにッ!」

「――、――」


 言い返せる余地がない。私は自分の都合を、賢人たちや碑郷への懐疑を、それが恵瑠乃たちのためになるなどと嘯いて、自分の思惑が正当たるなにかだったのだと、パビリオンたちを通じて証明したかっただけ。そのためなら、ほかの誰が犠牲になろうとどうでもよかった……だからナンバー、恵瑠乃の心を乱す天都戸魅那の存在が今なお許し難い。

 あいつがあの子を傷つけた、穢しただなんてのは結局のところ口実で、帝国へ寝返ってからの自分の不始末すべて、あいつへ押し付けたかっただけなのだ。


 責任という看板は、あとからの方が思いのほか、堪える。私は人の心がわからない、空気が読めない、なんてのは周りからよく言われていたけど、人並みの挨拶はするし、表面的な社交ならうまくこなしてきたつもりだった――その上っ面な対応こそが、私が不誠実な女であることにほかならないのだけれど。

 それにようやく気づいたのは、あの広場でルービックがウィズダムを殺しかけたあの時になってから……私は、なにもかもが遅すぎた。


「だからって、もう他人事じゃいられないの。

 私の愛が押しつけでも、欺瞞でも!

 神様が初めてくれた大好きが、あの子で、私は本当に嬉しかった!」

「身勝手な女ッ」


 私の声でそいつは吐き捨てる。あれは私の自己批判精神そのものといってよい。無論、皇帝に恣意的なものじゃあろうが、おかげで久々に……鏡を見たようだ。

 鏡の中の自分の影に、怯えてやる必要はない。


「そうね。……ところであなた、その身勝手な女の半身だよ?」


 一時期、自らの心すべてを象っていた、疑心と苛立ち――人としては当たり前だが、目の当たりにするにはあまりに醜い、感情の暴性が、そこへ凝固して顕現している。

 なんと浅ましく、幼いんだろう。

 そして私はそのまま『育ってしまった』んだ。

 そんな醜い私の在り方でさえ、恵瑠乃なら許してしまう……許さないできたのは、私自身だ。できない理想ばかりは気高く、そのくせ人を見ないから、現実との歪みが悪化していくそのときまで、まるで気づくことのできないでいた。

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