第91話 変身者たち
ステッキの折れると、自分の確たるなにかが、またひとつ損なわれた気分になった。
「ナンバーは、あんなに強くなってるのに――私は、なにができた?」
私が最初に変身したとき……なぜ変身したのか、瓦礫に埋もれながら、そんなことをぼんやり考える。
――絢爛たる虹の面様、パビリオン=ルービック!
……いや待って、なんで私ポーズまで決めちゃってんの!?
そういうお約束、なるものが通の世界にはあるそうで。
クラフトは私たちを、バラバラの時期に選んだ。
詳しく確認する期には恵まれていないが、私が初変身するのとほぼ同時期、三幹部はそれぞれにマテリアール獣を連れて碑郷へ襲来し、私が対峙したのはポリゴォン、残るセィルロイド兄妹と、ジグソーとアナグラムが同時変身で対応していた。
そう……私だって、最初は独りだったんだ。
クラフトは何も答えてくれず、敵に立ち向かう力のみがその手に在った。でも私には、それを補う仲間たちができて――、
――私は叡智、あなたに囁く星は何? パビリオン=ウィズダム!
――勝利の盤面は我が前にこそ拓かれる、パビリオン=チャトラン!
ポリゴォンとの二戦目、智絵と王成にマテリアール獣との戦いを見られ、直後ふたりはクラフトたちに択ばれた。
ふたりとももとから私の親友だが、一見オカルト方面で奔放に見える智絵と合理を要求する現実主義者の王成では、噛み合わないことも今なお多く……大体王成の忍耐が足らなくてアレ、なのだが。
――要のピースはこの私、パビリオン=ジグソー!
――共に言の葉の海へ溺れましょう、パビリオン=アナグラム!
初戦以降、方針を変更した三幹部、例の兄妹は前線の貧乏くじをポリゴォンにすっかり押し付けた。
すると単独で出動した際の彼は、その後にほぼ毎度、ルービック→ウィズダム→ジグソー→アナグラム→チャトランと並び順を入れ替えた、あの口上を目の前で読み上げられており、
『少女絢爛、オカルティック・パビリオン!』
『いい加減に諄いわ貴様らァ!!?』
段々と彼のツッコミのキレが増していったりした。
ちなみに敵が積極的に攻勢をかけると、この口上はキャンセルされる場合もあるが、初期などすっかりこれがほぼ固定だった。
――ビットマテリアール獣とモノリス、あなたたちはどうして人々を捕らえてこんな酷いことを!!
――黄金碑郷が外の世界にしてきたことを考えれば、手ぬるいにもほどがある!
まるで碑郷の人々が悪いかのような、責任の擦り付けに聞こえた。もっともユキノや王成が調べていくうち、三賢人を軸とする言論統制や失伝、きな臭い材料が徐々にでてきたのも確かであって。
それらの整理も付かぬうち、現れたのがナンバーそしてメビウス、すなわちパビリオン以外のクラフトホルダーたちだ。




