第83話 人間じゃない
「――、――?????」
……とんでもないことになっている。
言葉にすると、腰に虚脱感。
起き抜けは下を履いているも、どうせやらかしたんだろうなと自覚的だ。やけでカスパールさんと一夜をぶっ通してた頃の経験値が、活きてしまったらしい。
いや夜の経験値など知らん。鍋喰って?
でも精力つくようなナニが仕込まれてたとか、そういうようでもないし……すると智絵のダウジング催眠、というかなんらかトランス状態で、興奮を誘発されたんだろうか。
「よん――いや冗談にもならん、いや……認めなくても、認めても社会的に終わってるっ……!」
したのかよ、4P?
前に智絵がそんなものを使った時は、まぁ智絵だから仕方ないとなったが、
「兎宮、なぁ、起き――おまえか?」
「なははは――ほんとにそうだったら、私ただの屑では?」
「ほな違うか……いやでも、絶対におかしいだろうコレ。
仮に全員が同意してても、その――恵瑠乃なんか特に……もっとお堅いというか、目が覚めたら、怖いんだが」
「そう?」
「少なくとも昨晩鍋囲った時点で、そういう空気ではなかった」
「だよねぇ」
肝心のところ、智絵に同意が得られなかったら、ほんとうにどうしようと嘆かわしい。
「その、あぁ――下の階で、コーヒー淹れてくるよ」
「そうだね、はやく日常を取り戻そう。
朝コーヒーはルーティンなの?」
「あ……そりゃ眠気飛ばすなら、な」
言っているうち、ある雑念がよぎる。
ちょうど明け方なので、夜明けのコーヒーて、
(いい加減気色悪い、下の世話から離れろよばかッ!!?)
ダイニングにて、コーヒーメーカーから供給された淹れたてを呷る。味はそこそこ、電動だし逆に不味くできる要素がない。そう……イレギュラーなどなかった。
思考が賢者のように冴えた頃、ひとつの可能性へと行き着く。
「まさか、誰かのクラフトが?
いやそんなことする理由、なくね」
クラフトには意思があり、パビリオンたち正規のホルダーたちのものは、妖精体を持つのはこれまで経験したとおりだ。
だが経験則から言って、彼らは紛い物のアルタークラフトホルダーであるところの魅那を、存在を滅したいほどに憎悪しているはず。それが容易に覆るとも想えないし――、
「でも智絵がやってないと言ってるし。
既成事実作ってから撤回はしないよな、あいつの性格上」
「ダム」
ダイニングの棚に現れたそいつがみなまで言う前に、その首根っこを捉える。
「ウィズダムクラフト!?
てめぇか、てめぇがやったんかあれはッ!!?」
「ププッ、おいしい想いしてたくせ、口やかましぃんダムねぇ」
そいつはすっかり勝ち誇った顔で宣言してのけ、魅那は壁へ投げた。
「なにするんダムかぁぁぁああああああああぁぁぁァっ!!!!!!!???」
「お前らやっぱり人間じゃねぇぇぇぇええええええええええッ!!!!!!!!!」




