第72話 引導
「夢の続きを追うのはやめにしたの、ナンバー?」
「……ルービック、もう大丈夫なのか。
その姿は――ふたりとも、ナイトメアドレスじゃない」
パビリオンたちは、どうやら原点へ立ち返ったらしい。
ルービックは碑郷にいた頃の純白に身を包んで、頷く。
「擬似クラフトだ。キャンセルラーは、碑郷から横流しされたデジタライズクラフトを持っている、おそらくは『ゴルフクラフト』――空間そのものを操作する特性を持った、デジタライズトランプ」
「心配しないで、ナンバー。チャトランたちが彼の潜む林へ向かった」
「全員、目を覚ましたようだな。
で、どうする。一度はきみたち手を組んだ相手だろう、俺は殺すつもりでいる」
「2対1が2対6へ覆り、個別では1対3か。
参考までに――お嬢さんがた、キャンセルラーの術からどうやって逃れた?」
ジグソーは首を横に振る。
「さぁ、私らだってそんなに深く理解しちゃいないよ。
で、うちはさ――男同士の1体1の戦いに、割って入るような野暮はしたくないんだよね。場は整えてあげたから、あとはおふたり、勝手に争ってろというか」
「ジグソー?」
ジグソーは戸惑うルービックの肩へ手を置く。
「私はぐずついた調和より、物語のケジメを願ってるね。
ナンバー、セィルロイド……そういうわけだから、私たちはこれ以上干渉しないことで義理とするよ」
「ジグソーどのは、そのあたりよく弁えていらっしゃるな。
結局私は戦士なんだとよ――ナンバー、貴様はどうだ?」
「言うまでもない。
もう始まっているぞ」
踏み込むパラソリテールの前を粉塵の爆発が阻むが、ふたたび顕現したデジタライズトランプの列が、それを正面から押し出していく。
「ッ!」「決めたよ。あんたはここで潰す」
「おいおい……」「後腐れなくていいだろう?あんた独身じゃん」
そもそもキャンセルラーが妨害しなければ、パラソリテールは彼に押し勝っていた。
やつのクラフトさえ排除できるなら、こちらが負ける理由など――せいぜい、デジタライズクラフトの代償、生命力の損耗に伴うことぐらいだろう。
「お前は強いな、ナンバー」
「――、あんたと戦うのは、わりかし楽しかった」
それが少年から戦士への手向けだった。
すっかり剥がれた装甲服の隙を穿ち、掌底は鳩尾を捉える。
「……戦士になれて、良かったよ。
誰かの道具や兵器でなく、俺たちは自分の意志で――互いへ引導を渡すんだ」
「散り際は潔く、か。
ありがとう、お陰で愉しい日々だったよ」
セィルロイドは満足げに笑い、パラソリテールが繰り出すトランプの餌食になった。




