第63話 追想3 六分儀ユキノ
美継恵瑠乃とほかふたりは、ライブ終わりに私たちの所へやってくると、パビリオンとして一緒に戦って欲しいと私たちへ切り出した。
平和はあっさりそれを承諾しかけるが、私は待ったをかけてしまう。
「さっきはどうしたの、ユッキー?
仲間がいれば、きっと心強いよ」
「平和はそうかもしれない。でも私は、あの三人と組むのはいや」
「――、珍しいね。バンドメンバーならこれまで拒まずなのに」
「パビリオンの実際がどうかは知らないけど、あの子たちは絶対に、平和の足を引っ張るとおもう。確かにクラフトへ選ばれたのかもしれない、だけどあの子たちから私は本気を感じない、仲良しサークルをゆるゆるやりたいだけにしか見えない。
平和、いま一度よく考えて?
パビリオンの戦いって、バンドとはまた意味が異なるんだよ、私たちは二足の草鞋を履いてるの、向こうはうちらのスケジュールなんて待っちゃくれない!
あの子たちにはうちらのバンドなんて、きっと大した意味を持たないんだよ、特にあのチャトランの王成って子は信用できない、こっちの都合より、パビリオンの都合で私たちを駒としか想ってない!」
「なるほど……根は悪い子たちじゃないと想うけどなぁ」
「お人好しは程々にしようね。私は平和がかっこよく歌ってる姿が好きなの、それを邪魔するならマテリアール獣だとか、パビリオンだとか関係なく、私の力でねじ伏せる。
あなたの歌を私が邪魔させない」
当事クラフトへ選ばれたばかりのユキノは、後から思えば文字を置き換えればわりかしなんでも叶う、アナグラムクラフトの万能感に溺れていた。この力さえあれば、私はもう平和の陰で黒子に徹するだけでない、彼女に肩を並べて戦えると。
その望みは間違ってはいないし、根本は今でも変わらない。ただ、はにかんだ笑いを浮かべる平和の意図は、また少し別のところにあったことを、私は失念した。
「あの子たちと私らはバラバラにクラフトに選ばれた。
でもねユッキー、私想うの――あの子たちの存在は、私のプロデュースを求めてる!」
「は?」
「磨けば光るダイヤの原石なんだよ、私たちが最初はそうだったように、今はすすけて凸凹に見えるかもしれない!」
「……食い気味かよ、ちょっと離れて?」
平和が本気なのは、それなりの付き合いだからわかってる。
だけどこのときの私たちには温度差があった。
「ねぇユッキー、私の歌を守ってくれる、そう言ってくれるのは本当にうれしいんだ。
私が勝手に巻き込んで始めた活動で、ユッキーがそれを大切にしてくれる。
ただね、ユッキー」
「?」
「私はユッキーと一緒に音を奏でてるの、私一人の力じゃない。
だからパビリオンとしての活動も頑張りたい」
「――」
そんなことを言われては、私はどうすればいいんだろう?




