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第60話 夢

 智絵はメビウスの異空間内でのことを思い出す。


 ――クラフトと所持者は対になる、その性格も含めてね。

 私はこの空間から観測するだけしかできないけれど、たとえば王成という子と魅那くんは理知的だけれど、彼女と契約したチャトランは五体のクラフトのなかでもっとも精神性を『幼く』設計されてる、あるいは過程の多様性、盤面では行き着く結論がひとつでないように、ナンバープレイスは正解はひとつだとしても空欄を埋める間に間違いの入力を許容されるでしょう。

 かたや、残る正規のクラフトホルダー、あなたや恵瑠乃、平和ピースにユキノ。

 ルービック、ウィズダム《知恵の輪》、ジグソーパズル、アナグラム。

 最初から『答えが決まっている』『わかっていれば、間違えようがない』クラフトたちに、あなたたちのような……いい意味でゆるいのが、性格噛み合っているわけでしょ。


(明らかに含んでた言い回しだけど、今更とやかく言っても仕方ない。問題は恵瑠乃のパフォーマンスを整えることだけど、記憶を失ってからも、ようやっとまた一度変身できたのが広場でのアレだったしなぁ――私自身が、この子のトラウマになってる。

 クラフトの変身能力をさておき、能力だけでも抽出できるなら……こういうのは魅那くんとアナグラムの専売特許だったな)


 すでに追っ手が来ている、時間がない。


「お願いルービッククラフト、応えて!」

「――」


 焦らせてはいけないのだが、


(術者の精神の乱高下や興奮、そうしたものが変身への間接的な引き金になる。

 アンビバレントステッキの利用もその延長。

 変身できる程度の神秘力アルカオルゴンがなければ、四人の昏睡を解くのは難しい)


「ルービック」「!」「私はあなたに賭けるよ、いつだって」


 *

 トレーニングジムを経営していた父が、フロアの壁に飾ったジグソーパズルの額縁。

 すると私の名前はそこからとったものだという。

 平和と名付けたわり、穏やかな子に育って欲しいとかでもなく、なんか語感がいいからで短くなければDQNネームもすれすれなのだけれど、私は両親のそういう程々浮ついたところはべつに嫌いじゃない。小学校あがりたてくらいの頃はからかわれたりもしたけれど、今ではすっかり、ピースって呼びやすくて悪くないなと、しっくりきている。


「で……これはなんの茶番だろう」


 自分が夢の中にいるという自覚は彼女にあったが、目覚めかたがわからない。

 意識と肉体との間をつなぐべきものを、なにか見失ったような心もとなさ、とでもいうか。

 自分の頬をつねったりしてみるけど、普通に痛い。


「痛いじゃん、でも夢なんだよなこれ。

 夢の中のことに、マジレスしててもなぁ……疲れて寝たことは憶えてる。父さんのやってたジムか――懐かしがってる場合じゃないな、智絵の催眠術を受けたときは記憶飛んだし、どうやら違うっぽい?

 でもこれ、どうせクラフトかマテリアール獣あたりの仕業でしょ……目が覚めないと、外に伝えようもないし――せめて、気を強く持ちますか」


 昔たまに着ていたエアロビ衣装で、それまで座っていたバランスボールから腰を起こす。

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