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第59話 塵

 ……妙なことになった。

 裏切り者五人と、俺に従わないカスみたいな部下を守って、己の命を削ろうとしている。

(ナンバープレイス、紛い物の俺たちは――何処へ辿り着けばいい?

 あの子らと逃げて、碑郷の人々にも背を向けているに等しい、いま)


「もう一度お前と、一緒に戦いたかったけど――あぁ、くそ」


 彼は消耗をいよいよ自覚していた。走り続けて、彼自身は一睡もしていないのだ。


「俺は……お前や恵瑠乃たちに、相応しい俺だったかな?

 違うよな、であればこんな簡単に、自分を見失わない、あぁ――紛い物なり、なんてないんだな、貫くべき芯、というか、核というか」

「貴様、なにをブツブツ言っている!」


 正直なところ、セィルロイドなどいま彼の眼中にはない。

(セィルロイドは火の粉による中近接戦闘に特化している、が、格闘技術はポリゴォンのほうが上――あいつは特筆する異能がないけど、力量は抜きん出ていたからな)

 セィルロイドが生成する火の粉を、デジタライズトランプで編んだ半球ドームでセィルロイドごと収束させることで封じ込め、結果すぐ奴自身の自爆。

 大したダメージではないが、やつ最大の持ち味は封じた。


「いつぞやのルービックと同じか!」「芸がないんだよ、あんた」


『ルービックリスタル』あるいはラミネートを同様に収束させ、過去に対処されていたわけで、彼の戦術基礎はそこに則ったものだ。


「芸がないといったか――ならこれはどうか」「!?」


 ドームのなかからセィルロイドが消えた。

(動きは完全に封じていたはず――いや)


「火の粉で編んだ分身っ!」「そういうことだ」


 回り込まれた背中側から蹴られ、飛ばされた衝撃をトランプの積層エフェクトで分散、彼もすぐ体勢を立て直す。

 が、遅れて背中を侵蝕される不快感に戦慄した。

(爪先に纏った火の粉を置いて、後から発動して侵蝕させる――)


「ぐっ……パビリオンたち相手にそれ、使ってなかったよな?」

「お前のために用意した新技だ、どうだよ堪能してくれたか」

「そういうの要らねぇんだわ、《《塵に還れ》》やカスが」


 戦闘装束の背中がはだけるも、服の裏にトランプのエフェクトを滑り込ませることで、体表への侵蝕を食い止める。致命傷を普段と異なる戦術で凌いでのける彼を見て、セィルロイドの顔は上気する、急にケタケタと笑い始めた。


「やはりやはりやはり――パビリオンのお行儀のいい嬢ちゃんらとは違うな、貴様という男はっ、本当に私をたぎらせてくれる!!!」

「こちとらお前を相手してる余力はないんだよ、失せろ、マジで」


 ナンバー、魅那がもっとも嫌うのは『敵の巧妙化』だ。ビットマテリアール獣やこの前のポリゴォン相手にもさっさと確殺仕掛けるのは、それを可能な限り迅速に処理して帰って寝たいからにほかならない。


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