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第50話 逃走中

 ――あなたたちが戻った頃、向こうの時間は大して経過していないはずだよ。

 ――それがメビウスクラフトの生む、時空のひずみか……でもすげぇ、助かる。


 そこにご都合主義があるのなら、安易に乗っかっていくのが天都戸魅那という少年だ。

 時空の歪みでこっちでは四十分弱話しても、向こうでは二分くらいしか経たないらしいよ、便利便利ぃ~……けどそれは、おそらく恵瑠乃が挫折から立ち直るには程遠い二分でもまたあって。寧ろ二分でもインスタントに立ち直れる鋼の精神とかそんなんもはやいたら人間じゃないだろ、いくら体力があろうとそんな都合よく行かないよ。

 というわけで俺にできる最善手は、パビリオンと由良を連れて、一目散に皇帝の追撃が及ばない地へと逃れることだった。


「ルービック、変身できるか!?」「え……」

「まいいや、アナ!

 概念語彙創出アナグラシア・オノマトペで周囲の空間を暗号化して俺たち全員とその痕跡を隠蔽してくれ!」

「しゃーないわね、『概念語彙創出アナグラシア・オノマトペ』!」

「チャトラン!

『カレイドローン』出せるならありったけ出せよッ、暗号化の隠蔽とデコイ群を可能な限り並走させる、追跡を撒くんだ!」

「そんな……悪いんだけど、いま出せても一度に五体がやまよ?」

「なんで戦略家がパフォーマンス無視したゴリ押しばっかやってんだよいつも!?

 俺を殺したいときばっかり生き生きしやがって、つぎは鼻で笑うぞ!

 くそ、なにか手は――これだ、チャトラン!」

「!?」


 彼はデジタライズトランプの半分の束を彼女の手元へ放った。


「なんなの!」

「カレイドローンをカード上に召喚しろ!

 カードを触媒に、必要なデコイ分を捻出!

 今より効率は上げられるはずだ!」

「あ……わかったわ、一か八か、やったる!」


 全員脱兎のごとくに走っているわけだが、変身体のとそうでない勢ではフィジカルの差がすぐ露呈する。

 ナンバーはすでに智絵を抱えているのに、加えてもう片腕にただいま息の上がった恵瑠乃がのっかって、いよいよ両腕が塞がった。アーミーの由良はもうしばらく自力でいけよう、で残る三人もナイトメアドレスでしっちゃかめっちゃか併走中。


「まずは皇都を離れる、しばらく街道に沿って走るのは前提として、追跡はカレイドローンの物量で可能な限り撒く!」


 やがてアナグラムが毒づいた。


「待ってこんなん厳しいって、みんなすぐ息上がっちゃう!」

「お前らインテリジェンス・ドレスあるだろうが、由良さんを見習えッ!!!」

「あんたこそ好き放題言って、ドレスのバフで誤魔化してるじゃない」

「こちとら二人抱えてるんですが?」

「いーじゃないのあんたは両手に花だから!」

「――、あはい」


 走ってる全員、アドレナリンの分泌で正直頭がおかしくなりそうだ。

 ナンバーも、普段に較べてもより一段、やたら饒舌で頭の回転まで早くなっている。

 それだけ今という機会を逃せない自覚が強いのでもあった。

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