第48話 クラフトとホルダー
もったいぶるのはやめたようで、メビウスは語り始める。
「私のメビウスクラフトは、表もなければ裏もない――。
クラフトホルダーが“誤った選択”をした場合、それもデータライズ世界のご都合にはなるけれど、たとえば今回、『ルービッククラフトの所持者がウィズダムクラフトの所持者へ致命傷を与え、クラフトが欠損した』なんてのは、実にそういう場合へ当てはまってくるわけよ」
「所持者に危害が及んだから?
クラフトに傷がついたから?」
「その両方だね、クラフトと所持者とは、いつでも世界には等価なの。
だけどクラフトは――ホルダーを本能的に唆す。
力を求め、変身させる、戦わせること自体がクラフトの存在意義である以上、ホルダーに対して残酷な選択すら容易に突き付けていく。
それはクラフトの製造経緯を考えれば、構造上ある程度は仕方ないんだけれど」
「問題はクラフトが選ぶ、みぎもひだりもわからない思春期前後の女の子たちとか――クラフトという存在へ、大した猜疑心を抱かずに懐柔されてしまうわけか。
すると場合によっては、力に溺れる――戦う目的と手段が入れ違い、前者は見失われる」
「性差というより、ホルダーに求められるのは純真さ、あるいは磨き上げられた信念。ある種、“巫女”としての適性とも言える」
「へぇ……するとやつらが紛い物へ厳しいのも、似たようなことか。
するとメビウス、きみは――あなたはいつから、ここで戦っているんだ。
いったいいつ、クラフトと契約した?」
「もうナンプレ少年、女の子に年を聞いちゃダメなんだぞ」
「なにも答えないなら、カスパールさんと同い年って判定になるけど」
「――」
「え、まじです?」
「あたらずとも遠からず――流石にあのババアと一緒されるのは腹立つ!」
「おーけー、この話題やめよう」
ウィズダムクラフトの補修、概念数字による仮止めが終わった。
「……今回は、あなたがイレギュラーであったことを喜びなさい」
「といいますと」
「肉体やオブジェクトの欠損を補うのに最適なのは、アナグラシア・オノマトペ、つまりアナグラムのクラフトの特性なのだけれど、ナンプレクラフトはそれを数字で代用することができた。
ここへメビウスのクラフトで私が干渉すると、欠損部位の情報が更新――というか、概念文字や数字を、肉体情報と誤認させることで、本来起こった受傷をなかったものとして、対象を復帰する」
「それって智絵の記憶とかは?」
「軽くトラウマにはなってしまうかもしれないけど、細かな調整はきかなくない。
大丈夫、これまで通りを保証しましょう。
この私――幻のホルダーと謳われた、メビウスがね!」




