第46話 狂気のとどめ
「『ルービックリスタルラミネート』!」「なっ――」
彼女が変身と同時に発動した技が、そのままナンバーを圧倒する。
ステッキの尖端にキューブ状のエフェクトが収束すると、光の槍を形成した。
そのまま先の技で捉えた彼へ特攻をかけ、彼の胸を穿って、上段へ切り上げる。
あまりの速さに、その場にいた一堂は愕然となった。
「ルービック、どうして――」
「あなたを止められるのは私だけだから」
「ぁ――ぐッ」
喉笛にかけてを裂かれ、この形態ではナンバープレイスによる修復も効かない。
エフェクトから解放された彼は虫の息で石畳を後退する。
「ルー、ビック」
「チャトラン、さぁ一緒に――ほら、ナンバーにとどめを刺すんでしょう?」
ルービック、彼女の目にはもはや一点の曇りもない――紛い物を排斥するだけの正義の人形として、確立されてしまった。
「とどめって、あなたは……」「力を貸して、向こうは立ってるのも楽じゃないだろうに、存外しぶといな」
先程までナンバーへの殺意に満ちていた彼女ですら、たじろいでしまう。
「ルービック、彼は」「チャトランがしようとしていたのは、こういうことじゃないの?」
「私は――」「煮え切らないんだね、仕方ない『ルービックチャフ』」
次なる技はナンバーの周囲へ現れたエフェクトが、煙とも靄ともつかぬ散り方をするや、認識に撹乱をかけている。
(ダメだ、このままでは押し負ける、視界に頼るな、気配を――)
『その姿では概念数整合も使えないのか』「――、――!」
九時方向から首を狙った切っ先を、また召喚したマテリアール獣を囮に回避するも、
『その手は二度と使わせないよ』「!!?」
トランプの正体を見切ったルービックは、彼の両腕を槍で穿き、それを鞭のようにしならせて、ねじきってのける。
激痛によろめくナンバーは、どうやら自分はここまでだと見切りをつけ、膝をついた。
(トランプを制御する指を潰されれば、細かな操作は追いつかない、即応される前に)
「これで終わらせる!」
突如視界が明るくなる。
「『ウィズダム ダウジングペンデュラム』!」
発動された魔方陣領域が、ルービックのチャフを消し飛ばし、ルービックの放った槍の先は、庇って飛び込むウィズダムの胸へと吸われ――、ナンバーは見ていることしかできなかった。
「ウィ――」
ルービックはなにが起きたかわかった途端、たじろいだ。
ウィズダムの胸のクラフトに亀裂が入って、背後にいたナンバーもろとも吹き飛ばされた。ルービックは叫ぶ。
「ウィズ!!?」
ナンバー……魅那は自身の重症の自分さえ顧みず、変身を解くと、彼女へナンバークラフトを用いる。
(頼む、動いてくれナンバークラフト――『概念数整合』!)
本格的に出血する寸前で、数字の束が彼女の胸の傷を強引に抑え込んだ。
声も出ないのに、ナンバープレイス、紛い物のクラフトは、それでも俺の望みに応えてくれる。
彼女が落ち着いたなら、魅那自身の喉を補修する。
「なんでそいつを庇うの、ウィズ。
ナンバー、魅那くんが――どうして!?」
「やったな、ルービック――きみが最も傷つけてはいけない、仲間をッ!」
「――」
ルービックは絶句し、さらにナンバーたちの周囲を直後、謎の粉塵が覆った。
皇帝は広場の惨状に眉を顰める。
「なるほどな、当然にしてあの女が出張ってくるわけか……」




