第43話 皇帝との対峙
アナグラムは倉庫へ戻る途中、変身したチャトランを見つけるが、
「チャトラン――?」
様子がおかしい、ナイトメアドレスは帝国へ入ってから自身もそうなのだが、現地の雰囲気に合わせた気風ということで、平和と王成が示し合わせたことだ。
今の彼女が纏うのは、排他的な闇。
彼女は近づこうとしたが、立ち尽くす。
「アナ、なんだ戻ってきたの、まぁいいけど」
「――」
「私また、変身できるようになったよ。
クラフトが戻ってきてくれたの」
「恵瑠乃と、なにかあった?」
「ナンバーが皇都にいるでしょ?」
「!」
チャトランはたじろいだ。
「やっぱりいるんだあいつ、そりゃ恵瑠乃がおかしくなるわけだね」
「なにを言って」
「クーデター勢力を利用して、あいつを潰す。
私たちならそれができる、協力して」
「そう……」
今の彼女の言葉は、アナグラムの耳にひどく空虚にしか聞こえなかった。
*
広場へ出ると、ひどく開けた空間に、恵瑠乃が呆然と膝を崩している。
彼女の正面には、
(あれがカテドラルモノリスのオリジナルか!)
「「恵瑠乃っ!」」
ジグソーとウィズダムが同時に叫んで駆け寄った。
「いったい何があったの!?」
「ごめん、平和、私――もう変身、できないかも」
「「――」」
ウィズダムは何も語らず、彼女の背中をさすっている。
周辺の索敵をしながら、ナンバーも彼女らへ近づくも――
「ほぅ、見ない顔だな。
碑郷が造った紛い物の戦士……やはり皇都へ紛れ込んでいたか」
「!?」
三人との間へ割って入られ、彼も急いで後退した。
「広場、モノリス、周囲の敵が不自然なほどにいないってことは、まさか!」
「そのまさかだよ、ナンバーとやら……私が皇帝だ。
もっとも反抗分子の殆どは、きみが抑え込んでしまったようだが。
その姿は報告書のそれと異なるな、どういうことだ?
反逆者どもを、どこへやった」
「――、ルービックになにをした」
「そこの女は勝手に挫折しただけだ」
「とてもそうは見えないが?」
「ならばなぜ、彼女を守護するはずのルービッククラフトはいない」
「あんたが奪ったとも考えられる」
「クラフトホルダーの確たる意思さえあれば、クラフトは場所を問わずに現れる。
君ならそれをわかっているんじゃないのかね、紛い物とはいえ、クラフトへ選ばれた者ならば」
「あぁ、そうかよ。口の上手いことだ」
「もう一度問う、逆賊どもをどこへやった?」
「全てこの中だ」
デジタライズトランプの束ふたつを、皇帝の前にひけらかす。
「引き渡してもらおう」
「罪人だろう、あんたをその地位から引きずり下ろそう輩の、なにを心配している」
「貴様がやろうとしているのは、我が領民の拉致にほかならない」
「モノリスと獣を使役して、碑郷を蝕む輩がよく云う」
「それは反抗すると看做していいのか?」
「――、わりに愉しそうだなぁオイ」
俺が反抗することをさも望んでいるかのようだ。




