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第42話 並列起動

「クラフトの並列起動?」

「気づいたらそうなっていた、代わりにナンプレクラフトで変身できない。

 ふたつのデジタライズクラフトが融合した結果、原型を留めていないわけ。

 由良さんもこれが同一のものだと気づかなかったくらいだ」

「もとはふたつの擬似クラフト、か……また面倒なことになったわね。

 碑郷は、バルタザールってひとはそれを作ってなにをしたいの?」

「動機か――憶測でしかないけれど、本来のクラフトではできないことをしようとしているんだと想う」

「本物にできないこと?」


 彼はジグソーの言葉に頷く。


「碑郷の禁書庫で調べたんだ。クラフトには碑郷ないし、データライズ世界を護るためのそういうプロトコルが、クラフトには人格単位で埋め込まれてる――そいつらにも聞こえてるはずだ」

「「――」」


 ウィズダムとジグソーのクラフトは沈黙している。


「一介の学生じゃ手に入らない情報、どうやって?

 いや野暮だったね、カスパールのおばさんに頼めば一発かよ熟女好きが」

「肯定も否定もしにくいところを刺さないでくれる?」

「あんたが気が多いから、恵瑠乃の情緒がぐちゃぐちゃだよこの女たらし」

「それより、残り三人と合流したらどうかな。王成が揉めるなら、俺はもう外すよ――帝国の連中に、潜入していることを悟られたくない」

「あーはぐらかすんだ、ウィズもいる前で」

「私は何番目の女でも構わないからね」

「友人が想像してたより重い女だった」

「――、マジで脱線してる場合じゃないんだが」


 下半身事情はいい加減離れたい彼だが、完全に身から出た錆であった。

 *

 王成の手には、チャトランのクラフトが戻っている。


「本当に、平和ピースの言う通りだ……私はずっと、恵瑠乃のことしか見てなくて。

 クラフトがあっても、自分ができなかったことの、言い訳ばっかり。

 ナンバーさえいなければ、ルービックは、恵瑠乃は、私を、私だけ見てくれたはずなのに」


 それだって言い訳じみた口上だ。

 嫌いな男子がいた。それと私の性的嗜好はあまり関係ないのだけど、恵瑠乃が好きなくせ、無力な自分をわかっていても、なお諦めきらずに彼女へ付きまとっている――天都戸魅那とかいう、あのもやし。ナンバーの変身者はきっと彼だろう、ウィズは知っていて黙っている、あの子のそういう愉快犯的なところ、私はすごく苦手だ。もっとも、あれはあれで彼女なりの配慮が裏に見え隠れるだけ、可愛げもあるのだが。

 天都戸とナンバー、あれらの恵瑠乃を見てまっすぐに焦がれる、あの目が鬱陶しく……そう感じたら、穢らわしささえ覚えるようになった。


「イレギュラーなんて要らないのよ、全部」


 恵瑠乃が私を拒むなら、私が力で、あの子にわからせればいい――私より強い女はいないのだと、ナンバーを斃して。


「『パビリオン=チャトラン ナイトメアドレス』

 そう、私は――私があの紛い物を、消す」

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