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第33話 ヒーローごっこ

「そうかもしれない、だけど!」


 アナグラムがふたたび動く。


「私は――ルービックを見てる時の楽しそうなあの子を、知ってるもの。

 五人でパビリオンをしている時間が好きだから、あなたがそれを壊すなら!」


 またしても概念語と数字がぶつかり合うと思いきや、


「!?」


(数字――じゃ、ない?)


 概念語に対応した文字列が、互いの攻撃の威力を相殺している。


(数字を暗号単位に圧縮し、文字へと変換できるものをデジタライズ再入力――変換の手間はかかるが、一度ストックパターンを構築すれば、同じものは二度通用することはない!)


 ナンバーの戦術・戦略眼はクラフトを抜きにしても、王成の舌を巻くだけの力があるのだ。当人に自覚が薄いから、なおのこと傍からは苛立たしいことこの上ない。


「やって、くれる……ほんと芸細ゲイコマか!」

「俺はもう、二人のクラフトを持っていない」

「!?」

「返したんだ」

「そんな嘘」

「嘘じゃない。クラフトの正体を知っているか――姿を隠すことはない、出て来いよ、アナグラムクラフト。お前なら、ほかのクラフトとの感応でわかるんじゃないのか、こんなことをしている場合じゃないんだって」

『おまえムカつくのアナ』

「!!?」


 彼女がたじろぐうち、オリジナルクラフトの精が顕現する。


「その男、紛い物の言っているのは事実アナ」

「きみは――クラフトの妖精さん?」

「クラフトそのものアナ、ずっと一緒にいたのにアナ」

「あぁ、ごめんびっくりして……これまで出てこなかったのは、どうしてなの」


 毒気を抜かれた顔をするアナグラム。ナンバーは胸を撫でおろす、戦闘の心配は薄れたようだ。


「碑郷で見つかると三賢人に解析されかねなかったのアナ。

 ごめんなさいアナ、契約者のみんな、秘密守ってくれる確信がなかったのアナ」

「そっか……今はどう?」

「ナンプレ野郎よりはずっとマシねアナ!」


 やつは嬉々としてそう言った。


「手厳しいな」


 ナンバーはぼやく。まぁアナグラムクラフトに限っては、直接的な複製元と言っても過言ではない、自分のパチモンを纏っているやつを前にして気分のいいはずはなかろう。


「ナンバーくん、二人のところへ戻ったら――このままポリゴォンを殺させる気?」

「……他人事だろう、昔は敵だったし、ルービックと俺で、あいつは一度倒してる、忘れたわけじゃあるまい」

「だから見殺しにするの?」

「あいつはそんなに弱くない――帝国の名に恥じぬ、戦士だろうよ」

「味方のアーミーより、あいつを信じてるの」

「由良さんを知ってるんだ、おおよそ王成が立てた予測なら正解だ」

「あなたがなにをしたいかわからない。

 ふたりの殺し合いを楽しんでいるの?」

「擬似クラフトは、変身者の生命力を喰らう。

 オリジナルのクラフトは、おそらく神秘力アルカオルゴンを妖精が媒介している。

 どこから運ばれるエネルギーだかは知らないが、からくりがあるのは間違いない」

「小賢しい理屈なんて要らないでしょ!?」

「なんで俺があのふたりを助けるんだ?」

「え」

「どちらも俺を背中から撃つことばかり考えている輩だぞ。

 なのにしょっぱい管理責任は擦り付けられる――無責任にヒーローごっこやってた君らにはわからないだろうけどな!」

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