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第3話 クラフトホルダー

 全身が火達磨になる。


「それが非正規のクラフトホルダーの限界よ!

 いい加減に落ちろ!」


 自らの戦略の価値を確信し、勝ち誇りたい虚勢。それゆえに自身の戦略から外れたイレギュラーには耐性がないに等しい女だ。ならば俺がやつの予想を超えるだけでいい。


「……っるさい」


 ナンバーがルービックの前に現れるたび、あの手この手で彼女から遠ざけたがる。

 ルービックへ同性としての友情以上な感情を抱えていることは薄々察しているのだが、だからといって此方は素直にやられるわけにもいかない。


「ダメなんだよ、それじゃ」「は?」

「チャトラン、お前たちが、守ろうとしたはずの人たちへ恐怖を刻むなんて、そんなやり方を――以前のお前たちなら、けして認めなかった!」

「!?」


 光線が収まると、煙のなかに彼がまだ立っている。

(あれだけやって、死んでいない?)


「バケモノめ」

「――」


 苦痛を克服した先で、倦怠と消耗を自覚する。

(バケモノ……ね)

 正規のクラフトホルダー、あの五人の少女たちの変身とは異なり、ナンプレの変身にはその行程に煩雑な要素が関わる。

 肉体そのものを概念数字のエネルギーへと変換し、それをナンプレクラフト内で無限に自律生成、循環し続けるのだ。すると原理的にはあらゆる致命傷を無視して肉体が数字情報で欠損を埋め合わせ再生し、永遠に活動を続けられる。

 ただし彼が任意でしないかぎり変身は解除されず、クラフトとの過度な同調が起き、自我を呑まれるリスクがあった。

 かたや正規のホルダーたる、ルービックら五名とメビウスは、一定の攻撃加害や衝撃を受けた場合、クラフト側からプロテクトがかかり、五体満足で変身が解除される。


「バケモノだと言うなら、チャトラン……今の俺が正気か、教えてくれよ」

「!」


 数字の渦が彼の砕けた肉体の内側でとぐろを巻いて、やがてチャトランへ向いて拡散し、数字の束が彼女を弾き変身を解除させた。


「チャトラン!」


 ……俺が傷ついていることなどより、チャトランが無力化されることに声をあげるルービックに、苛立ちを覚える。ほかの三人はというと――俺の背後に、各々のアンビバレントステッキを構えて襲ってくる。

 触手のように執拗に蠢く概念数字たちを、枝でも刈り取るようにステッキで払っていた。

(三人がかりで足止めだと?

 帝国の幹部たちも、ルービックは?)


「セット『アンビバレントステッキ』、『ルービックリスタル』」


 起伏を感じさせない平坦な声で、逃げ惑う市民の背中へ杖を向け、技を放った。

(そんな、まさか――そんなはずが)


「やめろッ!」「「「!?」」」


 彼女がそうすることを、俺だけは認められるはずがない。

 ナンバーは飛び出して、ほかの三人を振り払うと変身解除へと持ち込む。

 だが彼の頭にあるのは、


「ルービックっ!!!!!」


 一歩、出遅れた。

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