第23話 天都戸宅
ジグソーこと糸鋸平和は現役(休業中)アイドルである。
名前にある平和要素が微塵も感じられないヘビメタだのロックだの――なんだか地下に潜ってやってそうな趣向のが大好物な女だが、黄金碑郷ではそれが大衆にカルト的な人気を博しており、クラフトに選ばれた際も「影のヒーローってかっこいいじゃん」なんて軽いノリでパビリオン結成へ乗っかって、五人組の顔と呼べる存在でもある。どうやら一部決めポーズなんか演出や振り付けにも口出してパビリオンをポストアイドル的なナニかとしてみずからプロデュースしているらしい。
あいつさえ戻ってくる気になれば、これまでのパビリオンの離反自体も実は演出でしたとか強引に理屈を詰めれそうな気もしなくもない。
彼女は王成とは別の意味で折り合いがつかない女の子だ。
彼女曰く、性別は気にしていないがナンバーである自分とは『芸風が違う』『五人プラスアルファでやるには画的に映える振り付けというかバランスが考えにくい』などと以前にばっさり切られたことのあった。
……ぶっちゃけそんなしょうもない理由で必要なとき共同戦線を結べなかったり、どこぞの振り子オーナーに並んで性格があまのじゃくそのものなので、ナンバーとして顔を合わすときの彼女にはチャトランについで苦手意識がついてしまっている。
思い返してみると敵に回ってからのあいつには結構酷いこと言われてる気がしたけど、あれは案外彼女が彼女自身へ言っていた言葉なんじゃないかとも想う。
彼女にもアイドルとしてのファン層はいたはずであり、なればファンたちに背を向け黄金碑郷をあとにした彼女の現状は、ほかならぬ彼女自身の夢を裏切ってしまっているのではないか。
「数字はどこまでいっても独り、本物のクラフトホルダーじゃない、自分は違う、だって選ばれたから――それが今のあいつのアイデンティティを大きく占めてるってことか」
「根に持つよね、そりゃ……かわいそうな魅那くん、慰めてあげよう、よしよし」
「――で、何度目の星の導きだい」
また黄金碑郷への潜入――智絵のやつはそれを感じさせない呑気さである。
今回は魅那の自宅、彼の部屋へ現れた。ダウジングの効果で突き止めたらしい、なにそれ怖い。
結局メルキオは病死ということで捜査は打ち切られ、現在庁舎は彼の葬儀日程に追われて慌ただしく、するとカスパールとの逢瀬というわけにもいかず、戦闘の経過報告を終えれば直帰するのが自然だった。
「ふたりのクラフト、取り返しに来たか?」
「ううん、今日は暇つぶし」
「暇、つぶし――人んちに侵入しといて?
鍵はかかってたのに、どうやったんだよ」
今どきらしい物理&電子錠だったはずだが、
「クラフトがあればね」
「擬態――いや、電子錠をウィズダムでハッキングしたのか。
迂闊なもの置いとけねぇな、ホルダー相手には」
「エロ本とか?」「間に合ってんだよ」
少なくともこれまではカスパールさんとやってたので……学校と戦闘が終われば空いた時間しけ込んでる……もうただの依存症じゃんそれ?
深く考えるのはやめにした。
「ジグソーのこと、話にきたんだろう。
時間はどれくらいある?」
「ひとふた晩泊まるくらいは」「泊まるな、泊まろうとすな」




