第21話 河川敷の因縁
この河川敷は、恵瑠乃と初めて話した場所だ。
そしてルービックが彼、ポリゴォンを一度倒した。
「ポリゴォン、ここが何処だか憶えているか」
「は?」
「お前にとって因縁の場所だ」
「……ルービックと貴様が、私を負かした。そう言いたいのか」
「もう二度と復活なんてしたくならないよ――俺がお前に刻むのは、恐怖にほかならないんだから」
「お前、黄金碑郷の守護者ではないのか。さっきから虫唾が走る、嘗ての味方の隙を狙う卑怯者のやり口、貴様はそのようなものだったか?」
既に徒手空拳の格闘は幕開けていた。
ナンバーは前のめりに、ポリゴォンへ顔を近づけるとほくそ笑む。
「ただの再演では飽き足らない」「!?」
「己の全てを賭けないものは喰われる、そうだろう?」
「――、はは。私は、当て馬ではないぞ!」
ポリゴォンの口から乾いた笑いが漏れる。
初めての敵、こいつとはつくづく因縁を感じていた。
愉快なやつってわけでもないのだが、恵瑠乃ことルービックへ執拗に狙いをつけてビットマテリアール獣をけしかけていたこれまで、おかげで彼女との連携を学んで、戦闘のなかで育んだ絆だってあったはず――そう想っていたけれど。
(今のきみは向こうにいるんだな、ルービック。……相変わらず、俺じゃもの足らないってんだろう?
きみの隣にいるのはいつも、あの子たちで――)
――いまの君の周りに、いったい誰がいるというの。
――数字はどこまでも独りじゃないか!
(俺がきみたちから受け取ったものをどれだけ惜しんでも、それがきみたちの絆より上回ることなんてない。
わかっているけど、悔しいな)
拳が次に重なろうとした時、案の定、ルービックが二人の間に割って入った。
「……こうなる気はしてたよ、死にたがりが」「ナンバー、やらせないから!」
あの書き置きを見た今だからわかる、彼女の心は板挟みなのだ、今まさにそれを象徴するように――そんなの俺が許せるとでも?
きみが敵を護りたいと言うなら、俺はその逆を行く。
拳を逸らし、彼女へしなだれかかる格好になりながら、動きの勢いを殺さず、向こうで唖然としているポリゴォンの顔面を片手で鷲掴んだ。
「余剰数ごと消し飛べ――『概念数整合』ッ!」「!?」
彼の肩口から全身にかけて纏っていた異形の装甲を、数字に還元して消し飛ばす。
彼の落下した川が激しい水柱を立てていると、見ているしかなかったルービックは愕然とした。
「きみが無力なせいで、彼は二度と戦えない」
「どうして……ナンバー、あなたは!」
「数字はどこまでも独り、なんだろう。
思えばいつだって、パビリオンのきみらと男の俺とには壁があった。
それが悪いことだったとは言わないけれど――俺だってクラフトに選ばれたはずなのに、きみたちはいつまでも俺を紛い物扱いした、今でもそう想ってるんじゃないのか?」
「違う、私は――」
むろんルービックはそういうやつじゃない、俺はそれをほかの誰より知っていた自信がある。
なのにそれすら、ポリゴォンを倒す道具として利用できてしまうのが俺だ……正義ぶるには、薄情すぎるんだ。だからルービック、きみは俺のやることに納得しなくていい。
俺もいつも遠くへ行くきみを、どうせ許せないから。




