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第17話 やった?

 いつもぼんやりしてるとばかり想ってた不思議ちゃんなあの子が、想像以上に肉食系だった模様。

 彼女の持つダウジング振り子には、非変身時でも催眠効果が付与されており、その気になれば俺の持つ情報や所持品など――それこそ持っていたスパイダークラフトやナンバープレイスだって奪えたはずなのに、そういうものには一切手を付けず、また我に返ると、太腿というか腰というかに疲弊感を感じ、下着は戻されているのにジーンズのチャックが開いていて、なんだか股間が妙にスースーするし頭は興奮冷めやまぬみたいになってるわけで……これ完全にやってんな?


「やったの、俺。

 兎宮と――」

「恵瑠乃っちにはあとで実食レポ入れとくから、ごちになりました」

「やめろよ!?

 どうしてこんなことするんだよ……これじゃ俺、すっかりだらしないやつに」


 閉経済みの誰かさんだけならとかく、恵瑠乃の友だちとやったとかバラされたらあいつに合わす顔がないんだがっ!!!


「天都戸くん、いつも一生懸命だもんね。

 ずっと恵瑠乃だけ見てたかもしれないけどさ」

「え」


 兎宮が一瞬哀しげな顔をして目を伏せ、なぜか笑った。


「あの子とやるときは誘ってよ」

「混ざるなッ!?」


 彼女は先に出て行ったが、魅那は床からすぐに立ち上がることをしなかった。

 行為の余韻に耽ってたというより、この先なにをすべきかを考えなくてはならなくて。

 *

 ロゼッタ・テラスの埃を被ったテーブルクロス裏には、書き置きが残されていた。

 彼女らが出奔する前からあったものらしい。


『ナンバーくんへ』


(わざわざ俺に宛てて書いたのか、律儀なのがいたものだけど)


「これ、やっぱり恵瑠乃の筆跡か」


『ルービックです。次に現れたとき、私たちはきみの敵になっていると想う。

 時間がなくてなにを伝えればいいか、書き終えてからも正しいことがわからない。

 チャトランは宮仕えなあなたを動かすことはできないって、はなから割り切っていたけれど、私は私たちがなにをしたいか、きみにだけは伝えるべきだと想ったから。この書き置きを読み終えたなら、焼き捨ててください、見つかればあなたに不利な証拠にされる』


 そうまでして伝えたかったこととはなにか。


『私たちは帝国の力を借りて、黄金碑郷の行政府、そして賢人会の議場を奪取する。

 モノリスにより市民を制圧したうえで、現状黄金碑郷の勢力圏を、チャトランは自治領として差し出させる密約を結んだ』


(どうしよう、しれっと内乱だとか実質的売国クーデター始めようとしている……)


 いくらチャトランがいるからって正義の味方が反権力拗らせて売国行ったらただのテロリストだろ?

 助言通りこの紙片は処分させてもらうことにする。


『結果あなたを殺すことさえも、チャトランは視野に入れている。私は彼女に求められたらそれを裏切れない、私たち五人の絆をあの子が一番大事にしてくれているのはわかっているもの。

 私が間違っていると想ったなら、躊躇わず私を殺してくれても構わない……ただ。

 私は私が死ぬことで、結果としてあの子たちを追い詰めて、後を追わせるようなことは絶対にさせたくない、本当は誰にも傷ついてほしくない。今の黄金碑郷はきっとチャトランの言う通り間違っている、でもそこに住んでる人たちがモノリスで奪われるくらいなら、モノリスごと私たちがそれを管理して保護すれば、少なくともそこにいる人たちは護ることができる』


 それが彼女が帝国へ寝返った理由か。帝国側のカテドラルモノリス本来の仕様を、どこかのタイミングで理解してしまったのだろう。人を拉致する板は、それまでの彼女らには破壊する対象でしかなかったはずだから。

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