第16話 カテゴリーエラー
「黄金碑郷と帝国の目的の根本は変わらない。
世界を率先して主導権を握り、再度データライズ、あるいはフォーマットやリデザインとも言ってたが、ようはどちらが好きに支配できるかなんだ。
カスパールさん曰く『アプローチが違ってしまった』だけだ。そして黄金碑郷は、賢人の代替わりするうちに、黄金碑郷の外の世界に対する最低限の知見を喪ってしまった――今のカスパールさんたちは、だから帝国側のモノリス侵攻に際して後手に回り、失伝した過去の資料を探している。
オカルティック・クラフトが太古造られた理由、表向きの民衆らには『黄金碑郷を守護するため』と喧伝されたけど、実際には異なった。
あれは元々『データライズ世界を整合しなおすための力』だ。
最初に黄金碑郷が、旧世界をデータライズ化した――ただし、自分たちが不要だと断じたものは、黄金碑郷の外側へ『余剰数』のレッテルを押し付けて放逐した……それがやがて、今日のマテリアール帝国の勃興を招いたともいえる、自分たちで撒いた種だ」
「やはりカスパールさんは気づいていたのね。流石えっちで綺麗なおねえさんだ」
「――」
兎宮はもとから不思議ちゃんというか、変人のきらいはあったが、真面目な話でもこうなのか。
無表情キャラと見せかけて、発言がやけに下の世話ぶっこんでくる――のは、魅那とて今初めて知ったところだ。そういうゲームならよくいそうなキャラ付けだが、なんというかこう、カテゴリーエラー的な感じがしてくるのはなんでだろう?
「尊敬はもっと常識的な言葉で伝えたらどうだろう。
とにかく、黄金碑郷の外に押しやられた棄民の国家がマテリアール帝国だ。
余剰数で異形化した彼らは黄金碑郷の人材リソースをモノリスで拉致し、侵略の尖兵としてビットマテリアール獣を始めとした異形として仕立てあげ、黄金碑郷のデータ維持リソース、“サーバー”を逼迫させることにしたが――クラフトホルダー、きみたち五人が目覚めたことで、黄金碑郷の制圧は容易とは行かなくなった。
ところで兎宮、お前から見た帝国ってどう?
黄金碑郷より生活とか治安とか、その……」
「荒廃、と一言で語るのも難しいかな。
マテリアール帝は、けして善人ではないでしょうね。
ようはデータライズ化前の旧世界の慣習では、そういうのをごろつきというか、アンダーグラウンドの中を暴力で勝ち上がって、そういう秩序の下に異形化した人民を管理している、必要に迫られた統治とその器はあっても、半ば独裁と変わらないのもまた事実だから――そこにいるものは逆らえば、殺される。
実力至上もまたそうで、私たち五人が国賓となったのは、やはりパズルクラフトを持っているから――そういう連中の国で背中から撃たれない保障もない」
「だったら」
「だからルービックは決断し、みんなは支えてる」
「――、自分の意識を依り代に、ビットマテリアール獣を顕現させたのも」
「黄金碑郷へ投降を促し、帝国の自治領として吸収することで新たな秩序を創る。
とは、最初にチャトランが言い出したことだけど……ほか三人は黙々と従っているよ。
あの子たちに星は見えてない、いつだって一生懸命だから、そばにいてあげたいのだけど」
「それって……このまま帝国にいるのは、不味いってことか」
「あの子たちだけでは、何も変えられない。チャトランは頭はいいけど、また悪いクセが出て、自分の考えで無理に帰結させようとしている、だから」
「!」
兎宮は魅那に跨ったまま、接吻した。
「星の導きに従い、私はあなたに託す」




